すべてをやり切り、4年間を終える/全日本大学対抗選手権

 「結果がすべてだから――」。突き刺さるようなこの言葉に、すべてが凝縮されているように感じた。多くの4年生が本来の力を出せずに終わった今大会。だが決して言い訳することなく敗北を認めた。そこには自らのふがいなさと、すべてやり切ったことからくる一種の満足感が入り混じっていたように思える。4年生最後の大会であるインカレはそんな言葉に象徴されるように幕を閉じた。

 56kgに出場した高橋。大会前、減量気味とあって調子は決して良くはなかった。だが今大会は大学最後の試合であると同時に、競技生活最後の大会。「目標は表彰台」。力強く語ったこの言葉に周りの部員たちも期待を寄せていた。

 スナッチの1回目で93kgをクリア。「1本目は軽かった。これはいけると思った」。本人がそう思ったように、誰もがそう信じていた。この時点で後に起こるアクシデントなどは想像できるわけもなかった……。

 それは直後のスナッチ2回目に起きた。減量し過ぎるとよく起こるという、足のつりがこの大事な場面で出てしまう。その場に倒れこむと、自力で立ち上がることができなかった。すかさずセコンド役の与島(法4)が駆けつけ、抱え込まれるようにその場を立ち去る。果たして戻ってこられるのか――。明大の応援席には言いようもない不安が広がった。

 そんな周囲の心配をよそに、高橋は一つの選択に迫られていた。それはもう一人のセコンド役である千原(光・政経4)から勧められた「棄権」。この状態ではベストの力を出せないとの判断であった。しかし高橋は「あきらめたくなかった」と試合続行を希望。ジャークのスタート重量を落としてまでも試技に挑んだ。何とか3回中2回成功し、総合9位という結果をマーク。ポイントをもたらすことはできなかったが、舞台の上で戦い続けた。
 
 大会2日目は武市、加藤(晴)の2年生コンビの活躍が光り、最終日に向けて沈んでいたチームを盛り上げた。特に加藤は2年生ながら69kg級でインカレ個人優勝。本人も「最高」と振り返るほど納得の試合であった。前日の高橋のアクシデントもあり、「高橋さんと4年生から頼むと言われた」とプレッシャーがかかる中ではあったが、クールなエースは気負いすることなく試技に向かった。「周りの調子も良くなかった。これは取らないと」。巡ってきたチャンスを確実にものにし、見事に同階級を制した。

 迎えた大会最終日。前日の頑張りもあり、この日は結果次第で目標であった「インカレ表彰台」も見えてくるところにきていた。そして何よりもエースの谷崎と中島主将が登場することが一層、希望の光りを与えてくれていた。

 まずは85kg級。「(スナッチは)1本でも取って来い」と送り出された千原(信)が本人も納得するような記録を残す中、谷崎はずっと出番を待っていた。スナッチ1本目の重量は135kg。同階級の出場選手中もっとも遅くに現れた谷崎は1本目を落とすものの、2回目で成功。この時点でスナッチでの1位を決めると、3回目は大学新記録となる149kgに挑戦。残念ながらこれは失敗に終わったが、個人優勝はほぼ堅いと言える状況であった。そして続くジャーク1回目も出番を待ち続け、やっとの思いで巡ってきた1回目はなんと175kg。これを挙げればその時点で優勝が事実上決まるとあって、注目が集まるも失敗。だがチャンスはあと2回ある。そこできっと決めてくれるはず。誰もがそう信じ、そう願っていた。しかしまさかの連続失敗で記録なし。つかみかけていた勝利は手のひらからするりとこぼれ落ちていった。

 初日の高橋に続き、谷崎までもが……。表彰台入りで高ポイントをもたらすと期待された2人がつまずく非常事態。中島主将への重圧の高まりはもはや必然とも言えた。だがそんなプレッシャーはまたしても悪い方向に作用する。105kg級に出場した中島主将はまずスナッチで4位と好位置につけ、ジャークを迎える。しかし4年生を襲った負の連鎖を断ち切ることはできなかった。申告した169kgを3連続で失敗。記録なしに終わった。
 
 重苦しい雰囲気の中、唯一4年生として好成績を残したのが長濵。競技生活最後となる今大会を自己新記録という最高の形で締めくくった。トータルで初めて300kgを超えるなど本人も「大満足」。7年間の競技生活を「やっててよかった」と振り返った。

 思えば今季は長濵にとって苦しいシーズンであった。自身の調子が上がらない中、チームは6月の東日本インカレで優勝。同期が素晴らしい結果を残す一方で、自分は結果を出せないでいた。そんな時「(高橋)純兵がお前駄目だぞ」と声を掛けてくれたという。「東日本インカレの分、働かなければ」(長濵)。そこからインカレへ向けて懸命に練習を取り組んだ。その成果はしっかりと表れ、インカレ前の1カ月でなんとトータルで13kgも記録を伸ばした。大会当日も安定した試合運びで見せ、初出場のインカレで緊張するなか堂々4位という成績をマーク。「先輩のインカレを見て出たいと思っていた。今回自分の姿を見て(後輩たちが)同じ思いを抱いてくれれば最高」と後輩にメッセージを送った。

 総合6位――。去年より一つ順位を上げたが目標であった「インカレ表彰台」には届かず。悔やめばいくらでも悔やむことができるが、選手たち、特に4年生の表情に後悔はなかった。すべてをやり切り、その上で出た結果。そこにはすっきりとした笑顔が広がっていた。

 今シーズンはこのインカレをもって幕を閉じる。果たして4年生が見せた最後の姿は下級生にどう映っただろうか。今大会で感じたことを無駄にせず、来年以降に生かしていってほしい。