11年ぶりリーグ戦V! 総力戦でつかんだ歓喜の瞬間/東京六大学秋季リーグ戦
最終カードの早大戦で勝ち点を獲得すれば優勝の明大。1勝1敗で迎えた3回戦は、5回表に満田悠生内野手(営4=中京大中京)のスクイズで先制すると、この1点を小磯孝平投手(政経4=日大二)、森慎之介投手(商4=佼成学園)、淺田真樹投手(法2=宇部鴻城)のリレーで守り抜き、2014年秋以来となるリーグ戦優勝を達成した。
◆8・30〜10・20 東京六大学秋季リーグ戦(早大東伏見グラウンド他)
▼10・20 対早大3回戦(早大東伏見グラウンド)
◯明大1―0早大

重要な一戦の先発のマウンドには、今年度クローザーとして起用されていた小磯が上がった。投手陣が疲弊している中で白羽の矢が立ち、リーグ戦最終登板にして初先発となった。「1回戦は自分のせいで最後に押し出し(四球を与えて敗戦)で。2回戦は何とかつないで(勝利して)くれて、チームに恩返しをしたいな、みたいな。他者貢献的なニュアンスもあるのは初めてだった」とリベンジを込めての登板。初回裏こそ走者を出すも、2、3回裏は計4奪三振と、自慢の速球を武器に相手打者を寄せつけなかった。「自分ができるのはあれ以上ない。できることがたまたまうまくできた」。3回5奪三振無失点と役割を果たした。

小磯の後を受け、4回裏からは森が登板した。風邪を引いている中での3連投だったものの「試合に出ればアドレナリンで大丈夫」と疲労を感じさせない投球を披露し、5回を投げて無失点に抑えた。特に四球を一つも与えず「筋肉痛がいい感じに(作用して)リラックスできて、足を使って投げられた」と笑顔を見せ、打線の援護を待った。
その打線は5回表、先頭の鳥越駿太郎外野手(政経3=桜美林)が四球で出塁すると、1死二塁から森が二塁手と右翼手の間に落とす打球を放って1死二、三塁と好機をつくる。打席には満田が入り「タイムがかかっていたので話し合いをして、いつ(スクイズしに)いくか。(サインが)出るまでは何とかカウントを整えることしか考えていなくて、出た時は決めるしかないという感じ」。カウント2ボール1ストライクからの4球目、ついにサインが出たが、投球は満田の背を優に超える完全なボール球。満田は「もう『届けー!』という感じ。空振りしたら、それまでの流れもおじゃんになってしまうので、本当に『届けー!』だけ」と懸命に体を伸ばしてバットに当てると、打球は投手横へ。満田の超人的なプレーで鳥越が生還し、待望の先制点を奪取した。

試合は森の好投もあり1―0のまま9回裏へ。抑えれば優勝の場面、マウンドには前日に先発した淺田の姿があった。「気持ちをめちゃくちゃ入れて『今までやってきたから絶対大丈夫』と自分もバックも信じて投げた」。先頭を三振に斬って取ると、続く打者は投ゴロ。その後シフトの逆を突く内野安打こそ許したが、最後は代打を捕邪飛で抑えると、マウンドに続々と集まる選手たち。明大は2014年秋以来となる、11年、21季ぶりのリーグ戦優勝を果たした。

「去年から試合に出させてもらっているメンバーが多い中での今年の新チームだった。ある程度の経験はできている中で、自分がどうやってどこを磨いて、どうチームづくりをしていくかというのを自分の中では考えた。試合をするにつれて打撃も守備も走塁もチームワークも、というところが成長した結果、優勝につながったかなと思う」(山田聖和主将・農4=東海大菅生)。今年度は投手、守備力で接戦に持ち込む試合が多かったが、秋季リーグ戦では要所での『あと一打』が出たことで、勝ち星を多く拾ったことが優勝の要因として挙げられる。投打がかみ合った明大は3月に行われた関東地区大学選手権に続いて2冠を達成し、残すは関東地区大学・社会人王座決定戦(関東王座)のみ。「一試合一試合負けられない試合を楽しみながらやっていきたい」(満田)。過去に優勝経験のない大会で、現体制の有終の美を飾りたい。
[北原慶也]
試合後のコメント
山田聖
――優勝を決めた率直な感想を聞かせてください。
「春は早大に負けて、全日本(全日本大学選手権)も初戦、中大に負けたというところで、そこからやり直していこうというので。結構苦しい試合もあったのですが、それも負けた経験から得た勝利かなというのでつながって、それが優勝になったかなと思います」
――今日のプレーを振り返っていかがでしたか。
「打率では3割乗って集大成、いい感じで終われたかなと思うのですが、自分はバッティングではなくて守備の方が得意というか。なかなか自分のところに飛んできてもアウトにできなかったところが悔しいですが、関東王座もあるのでそこは切り替えて、主将としてまたラストの大会を引っ張ればなと思います」
小磯
――3戦目の先発はいつ頃決まっていましたか。
「(前日が)宅建の試験日で9回1アウトの時に抜けたんですよ。テストだから(携帯の)電源切る。終わって電源つけたら先発で、本当に聞いていなくて(笑)。受かっているかどうかは微妙だけど、とりあえず終わったので、それから今日の準備をしてという感じです」
――今年度の4年生の代は、この1年間通していかがでしたか。
「やりたい野球みたいな像が去年の新チームが始まってからもう決まっていて。『1点差の試合を勝つチームをつくろう』と言っていて、それを最後の最後までできた、1点差で負けることもあったのですが、そういうのがこのチームの特徴かなと思います」
島本逸平学生コーチ(商4=明大中野)
――早大2、3回戦とロースコアゲームでしたが、いかがでしたか。
「うちが勝つ時は多分こういうゲームというのは、もう春からやってきて分かっていたので、とにかく我慢して、ワンチャンスをものにしてというところで。投手陣には大分しんどい思いをさせたとは思うのですが、それも含めてうちの良さかなというところで。2戦目の試合前にも『ロースコアで我慢して勝つのがうちの野球だから持ち味出していこう』という話をして。2試合こういう形で勝つのが良さも出て、優勝にふさわしいというか、うちが勝つにふさわしいゲームだったかなと思います」
――学生コーチからの視点で、MVPを選ぶとしたら誰になりますか。
「ピッチャーは伊藤(彩斗投手・営2=土浦日大)。バッターは吉武(航世外野手・文4=岩国)じゃないですかね。(吉武は)最後4年生で、3年の初めでケガとかもあったりして、なかなかずっとベンチ入る入らないという部分で頑張りながら、3年の時がチャンスだというところで、1年ケガして棒に振った中では、今シーズンの春から帰ってきて、春もなかなかバッティングの方で結果が出せなかったのですが、秋は本当、特に中盤よく打ってくれて。他の打者もあんまり調子も上がってこなかった部分もあったのですが、そこはうまくカバーしてくれたので、最後5番も任せていましたし、そういった面では優勝のMVPとしては吉武かな」
満田
――今日はどう臨みましたか。
「ピッチャーもいない中で総力戦でやるしかないというところが、みんなも自分自身も今日勝つしかないという一つ気持ちがそろって、いい状態で試合に向かえたかなというふうに思います」
――スクイズの場面では相手の守備の乱れもあり、2塁まで走った細かい意識も見られました。
「今季初長打があれなので。いいところで長打が、そんな感じですかね。あとはそういう野球を春というか、新チームから先の塁目指すとかバントで、というのが自分自身も言ってきたことなので、一つチームに見せられたというか、結果に出せたことが良かったなというふうに思います」
森
――今カード通しての自身の投球はいかがでしたか。
「最初は気持ちが入ってなかった部分が多かったので、2戦目以降は『自分が抑えるんだ』という強い気持ちを持って。今まで4年間やってきたことを振り返って、自信持って投げるようにしたら、自然といいピッチングできたので、気持ちの面の準備がよかったのかなと思います」
――今年1年間は振り返っていかがですか。
「このチームは本当に誰かのミスを誰かがカバーできるのが強みだと思いますし、守備も1点差とかで勝つ守備の力があるチームなので、そういった1点差の緊迫した場面で抑えられたのが、自分たちの強みを存分に発揮できたチームだったと思います」
亘翔大郎捕手(理工3=大分上野丘)
――1点を争う場面でランナーの盗塁を2度刺しました。
「自分ちょっと肩がやばくて。肩がやばい中でアドレナリンが出て、最後は結果的に刺せたので、得点圏にランナーがいかなかったのがすごくチームにとっても大きかったと思うので良かったです。周りの人のおかげです」
――関東王座に向けてどういう調整をしていきたいですか。
「もちろん4年生が最後の大会になりますし、そこはせっかくリーグ戦優勝して、王座でころっと負けたら、そういう気持ちで引退させるわけにはいかないので。しっかりとピッチャー陣、ケガ人が心配なのですが、そこはもっと自分がリードする気で頑張っていきます」
淺田
――2死からランナーを許しましたが、焦りはありましたか。
「焦りはなくて、ランナーもケアしながら、バッターに集中するということだけを意識して。長打だけはなしで低めに、いつも通りに投げようと思っていました」
――来年度以降、思い描いてる像があれば教えてください。
「今シーズンも1戦目を取れて2戦目を落とすことが多かったので、そこで2タテしたら本当に完全優勝ももっと楽にできると思いますし、ピッチャーのタイトルというのも、防御率とか勝ち数とか、そういうところにもこだわってやっていきたいと思います」
関連記事
RELATED ENTRIES

