ルーキー特集(3)

1999.01.01
ルーキー特集(3)
 今回紹介する3人は、ズバリ元浪人生だ。確かに読売ジャイアンツの上原浩治投手や千葉ロッテマリーンズの小宮山悟投手も浪人を経て、現在プロ野球で活躍している。しかし、伝統ある東京六大学野球として、毎年全国から優秀な選手が集まる本学硬式野球部。そんな名門野球部に、一般入試を突破して入部した選手がいるというから驚きだ。そこで3人の野球にかける思いを紹介したい。

飯田貴則(商1)

野球はもちろん見聞広く―飯田―

 「やる前から無理と思わず、やってみるんだ!」。高校時代の監督に言われた言葉を胸に、日々の練習に勤しむ飯田貴則(商1)21歳。東京六大学野球に憧れて、明治進学を決意した。

 小学校1年生の時ソフトボールをやったことがきっかけで野球を始め、高校までは野球漬けの日々を送ってきた。そして迎えた2年間の浪人生活。この期間を経て、彼が得たものは計り知れない。野球一筋だったころに比べて、自分の将来、周囲の環境、人間関係を落ち着いて見渡すことができた。決して野球をないがしろに思うのではない。野球以外の視点で周囲を見聞することの重要性と面白さを知ったのだ。大学生になった今、「大学では友人のつながりを大事にして、野球だけでなく世界を視野に入れて物事を見て、感じていきたい」という学生ならではの世界観の確立にも前向きな姿勢を見せる。

 入部して約4か月。「プレーの感覚は完ぺきには戻ってきていない」と、まだ体力面には心配なことも多い。今は「無理をしてケガだけはしないように、焦らず着実に練習を積んでいく」ことが第一だ。大学4年間での目標は?という質問には「入部したからには神宮で活躍したい。そして何よりその姿を自分で見てみたい」と答えた。飯田の野球に対するどん欲な姿勢は、部内でもひと際強いものだ。和気あいあいとした寮生活を送っていく中で、飯田自身さらに強く感じていることだろう。

 そんな飯田の好きな寮食メニューは豚しょうが焼き。愉快な友人に囲まれた規則正しい寮生活を送り、そして大好きなしょうが焼きを食べて日々の練習に精を出してくれることを期待したい。

◆飯田貴則 いいだたかのり 商 本庄東高出 177㎝・77㎏ 外野手

加藤新太郎(農1)

野球に対する真剣な姿勢―加藤―

 東京六大学春季リーグ戦ではデータ班に抜擢され、バックネット裏で毎試合のデータ収集と管理を任された。この担当に就いたことで、「大学野球のレベルの高さを知ることができたし、投手の制球を見ていくうちに普段の練習中、自分のバッティングにも生かせる」と語った加藤新太郎(農1)。小中高で野球部主将を務めあげたと聞き、なるほど野球に対するまじめな姿勢を頼もしく思うと同時に、加藤には野球が似合う!という根っからの野球少年の印象を受けた。

 しかし、そんな頼もしい姿の半面「親父にはめられたんですよ(笑)」と野球を始めた意外なきっかけを暴露した。小学生の時、サッカーの体験練習に参加するつもりが、気付けば野球の体験練習に参加していたという。もともと野球好きな家族だった。「土日のほとんどが野球でも応援によく来てくれていたし、両親はもちろん妹3人にも結構迷惑をかけたと思う」という。一番下の妹は小学校4年生。「自分が親父になった気分」でかわいくて仕方がないそうだ。

 そんな家族の支えの下、野球中心の生活を送っていた加藤にとって、浪人生活は精神的にとてもつらいものがあった。「あの1年間は本当につらかった」。振り返っても、鳥肌が立つようだった。その理由は、やはりやりたいことを制限せねばならないつらさと、受験のプレッシャーだったのだろう。

 そんな厳しい1年を経て大学入学を果たし、野球部の門を叩いた加藤。普段の練習は大変でないか?と聞くと「去年のつらさからすれば、つらいなんて考えられない。1、2年生であっても十分練習できる環境にあるので、むしろ楽しんでやっている」と自主性が要求される大学野球のスタイルは彼にマッチしているようだ。確かに体力は完全には戻ってきていない。しかしつらかった去年と違って、好きなだけ野球に没頭できる今、加藤は浪人時代に増えてしまった約14kgの体重を絞り込むことにも熱心だ。もちろん他にも、走り込みや室内打撃練習にも励んでいる。学生コーチの愛情ノックもたくさん受けて、野球漬けの毎日を謳歌してもらいたい。
 
◆加藤新太郎 かとうしんたろう 農 佼成学園高出 178㎝・82㎏  右/左 内野手

田村光平(農1)

環境を上手に使う―田村―

生田キャンパス(農学部と理工学部)に通う部員は府中にある野球部寮から自転車通学だということを知っているだろうか。入学早々の通学中、新しい自転車のよく効くブレーキを力いっぱい掛けて自転車ごと大回転したのが田村光平(農1)だ。天然なのか?とツッコミたくなる憎めない人間性を持っている。

 そんな田村に大学で野球を続けようと思った理由は?と問うと「野球を止めている自分が想像できなかったから」、また明治を選んだ理由は?という問いには「明治の野球部の印象が良く、自分に合っていると思ったから」と自分にとっての野球の位置づけを的確にとらえている姿があった。焦りはもちろんある。1年のブランクは考えていたよりも大きく、入部してから何度か肉離れをした。ブランクを埋めるためにも、ケガをしないためにもストレッチに今まで以上に時間をかけたりと、自己管理の重要性を強く感じているようだ。

 また投手として同期である野村(商1)、柴田(文1)といった実力ある選手が周りにたくさんいることで「恵まれた環境にいる」と自分を取り巻くものを前に、技を盗むではないが野球に対する謙虚かつどん欲な姿勢を見せている。

 これからチャレンジしてみたいことは?という質問には「バク転」と答えた田村。理由は友達がやるのを見て負けてられない!と思ったから。負けず嫌いなところも随所に見られる。そんな彼の投球練習や走り込みに励む姿は人を魅了するものがある。ブランクを乗り越え、マウンドに立つ姿が待ち遠しい。

◆田村光平 たむらこうへい 農 土佐高出 174㎝・65㎏ 右/右 投手

 紹介した3人に共通するのは、受験勉強で自分の納得いくまで練習が出来なかったこと。そしてその結果、ブランクを強く感じていることだ。その穴埋めのためにも、既定の練習メニュー以外にも練習をして、現役時代にまで体力を持っていきたいという気持ちはある。しかし、ケガをしては元も子もない。焦らず体を作ること、そして大好きな野球が思う存分できる環境に身を置いたことを噛み締めて、4年間を有意義に過ごしてもらいたい。

 次回のルーキー特集は8/6(水)、島内宏明(法1)の特集です。