遅咲きの素材型右腕・江柄子裕樹/東京六大学春季リーグ戦

1999.01.01
遅咲きの素材型右腕・江柄子裕樹/東京六大学春季リーグ戦
 現在プロで活躍する久米(平20農卒・現福岡ソフトバンクホークス)ら、昨年の中心メンバーが抜け、大きな不安材料だった明治投手陣。そんな中オープン戦で結果を残し、岩田(営4)に続く先発の座を勝ち取ったのは江柄子(文4)だ。

 140km中盤の速球と、シュートやカットボールで打者の内角を突くピッチングが持ち味の江柄子。これまでは層の厚い投手陣の陰に隠れて目立たなかったが、最上級生になった今季、そのポテンシャルが開花し一気に日の目を浴びた。神宮初登板初先発となった東大2回戦では「思っていたより緊張した」せいか2点を失い、リードされたままマウンドを譲った。しかし次に先発した慶応3回戦では、7回4安打5四死球も要所を締め零封し、リーグ戦初勝利をものにした。

 空き週の使い方は、リーグ戦後半に大きく影響する。初めてメンバーとして空き週を迎えた江柄子は、ランニングと投げ込みで体を張らせて調整した。それまで走者をためてしまうことが多かったが、女房役の中野(政経4)も「技術じゃなくて気持ちの問題。次からは落ち着いてやってくれる」と言ったように、立教2回戦では空き週の調整も奏功し、テンポよく相手打線を打ち取る好投を見せる。その結果、6回を投げ被安打1の無失点で2勝目を挙げた。経験が少ないゆえに、1回の登板でたくさんのことを吸収でき、好結果につながっているのだろう。

 一躍表舞台に飛び出した江柄子に、思わぬ朗報も届いた。「あのシュートの軌道は向こう(米国)でも通用する」と、好投が米大リーグ・ドジャースのスカウトの目に留まったのだ。経験の浅い江柄子には、まだまだ伸びしろが残っている。これから天王山を迎える春季リーグ戦で明治が戦い抜くためには、2番手投手のさらなる奮起が必須だ。急成長を見せる素材型右腕の快投が、天皇杯奪回のカギを握っている。

◆江柄子裕樹 えがらしゆうき 文4 つくば秀英高出 183cm・76kg 右/右

各試合の成績
東大2回戦 先発 回5 安3 振5 四死球2 責2
慶応3回戦 先発 回7 安4 振8 四死球5 責0
立教2回戦 先発 回6 安1 振4 四死球3 責0

今季成績(5月13日現在) 回18 安8 振17 四死球10 責2 防御率1.00