紫紺軍団を率いる熱き主将・佐藤政仁/東京六大学春季リーグ戦

1999.01.01
紫紺軍団を率いる熱き主将・佐藤政仁/東京六大学春季リーグ戦
 東大、慶応から順調に勝ち点を挙げ、ここまで負けなしと好調の善波メイジ。投手成績、打撃成績は現在岩田(営4)、千田(営3)がそれぞれ共に1位。昨年つかみかけた栄光に向けまい進するチームを率いているのが、誰よりも真面目で厳しい男、佐藤主将(政経4)だ。

 新幹部発足から5カ月。佐藤主将に対し、誰もが「真面目」「厳しい」という二つの言葉を口にする。「一つ一つ周りを見ていて、気を抜かせない」(荒木郁・営2)という緊張感ある指導でチームをけん引する厳格な主将。厳しさ以上に、彼はチームに対する強い思いも持っている。「チームのために」「チームとして」……佐藤主将の口からは誰よりもこの言葉が出てくる。現在の野球部員は入学してからずっとリーグ戦での優勝を果たしていない。最後の年となった4年生は優勝への思いが特に強く、「このまま卒業するわけにはいかない」とこれまで以上の意気込みを見せる選手は少なくない。主将としてそんなチームを優勝へ導くために、生まれてくる厳しさ。「細かいところを詰めないと、優勝はできない」(佐藤主将)。
 
 昨年藤田前主将は大幅な部内改革に取り組んだ。下級生が抑圧されていた伝統的な体質から、学年関係なく野球に集中できる練習環境へ。撤廃された理不尽な上下関係は、先日東大戦で早くもルーキーの野村(商1)がリーグ戦初勝利を飾るなど、確かにその成果が現れている。しかし佐藤主将はその改革をただ引き継ぐにはとどまらない。不必要な上下関係の撤廃は継続しながらも、練習でのメリハリや緊張感を欠くことのないように細部にまで気を配る。またこれまで自主性に任せられ、さぼる部員もいたという朝の体操・練習。4年生が寮内の見回りを行うようになり、今では誰一人さぼらずに参加しているという。朝だけではなく清掃状況も見回るなど、私生活の面も改善されている。上下関係の撤廃と上級生の見回りによる私生活の改善。一見両立が難しいように思える二つの取り組みだが、「上級生がどれだけ頑張るかでチームは変わる」とわずかの不安も見せない佐藤主将。その力強さ、厳格さは厚く信頼を得ている。
  
 「自分と藤田さんは真逆」(佐藤主将)。自らが率先してグラウンド整備などを行いその姿勢で語ってきた藤田前主将に対し、佐藤主将は必要なことは「愛情を持ってきつく言う」。また藤田前主将はきれいでクールなイメージで、自分は泥臭くがむしゃらで正反対なのだと語る。しかし目指すチーム像をたずねると、「全員で野球をやる」という言葉が返ってくる。試合に出る選手も出られない選手も、全員で野球をするチーム。それは藤田前主将も目指していたもの。同じ理想に向かってチームを率いる「真逆」の主将は、昨年までに改善され整いつつあった状況に決して満足しない。細部まで徹底し、さらなる高み、そして優勝へ。引き継がれた改革の「細かいところを詰める」という佐藤主将の、先代を追うのではなく追い越して上を目指す姿勢が、昨年届きかけた優勝へ今年こそ明治を導いてくれるだろう。

◆佐藤政仁 さとうまさひと 政経4 青森山田高出 174cm・68kg