
(2)チームに貢献したい 野手編

今年のチームを象徴する言葉を選ぶとすれば、間違いなく「全員野球」だ。だが、それは試合に出ている9人の選手でつなぐ、という意味ではない。試合に出ている選手も出ていない選手も、全員がまとまり一つの目標を目指す、という意味だ。それを象徴する場面として、試合出場機会にあまり恵まれることのなかった4年生野手が率先して声出しをしている場面が見受けられた。上宇都(法4)、松井(文4)、矢川(営4)は神宮でプレーすることはあまりなかったが、それでも下級生が彼らから学ばなければならないことは多いはずだ。今回は3人に話を伺った。
――上宇都さん、松井さん、矢川さんは練習で率先して声を出していたと思うのですが、いつもどのような心境で行っていたのですか?
松井「おれは入部したころから下手くそだったし、それなら声出すしかないって思ってやってきたよ」
矢川「試合に出られない4年生が何もしてなかったら、3年生以下がその姿を見て、どんどんうつっていくと思う。でも、後輩にはそうなってほしくないし、そういう姿を見せたら、自分のためにもチームのためにもならない。だから、試合に出られなくても、やることをやろうって常に思ってた」
――試合に出られる人数は限られており、その中で出場することは非常に難しいことだったと思うのですが。それぞれの4年間を振り返ってください。
矢川「入部当初はまったく練習できない環境で、試合に出るとかは考えられなかった。でも、3年になって同期が試合に出るようになると、自然と自分も出たいって気持ちになって……。そこからは毎日必死で練習したな」
松井「いつも遅くまで素振りしていたもんな」
矢川「努力したものは必ず自分の力になるし、最後までやりきろう、後悔だけはしたくないってずっと思っていた。結果的におれは最後まで試合に出られなかったけど、それでも得るものはたくさんあったよ」
松井「おれは特に実績も実力なく入部して、そのころからの目標は「神宮でヒットを打つこと」だったな。でもなかなかうまくいかなくて、罪悪感を抱いちゃって、毎晩夢に出てくるまでになった。それで夜起きたりして……。でも、それを親に話したら、「それが何やねん」って言われて、吹っ切れたというか……。3年の春には神宮デビューしてヒットを打てたし、よかったかな。4年になってからは、副主将として周りを見るようになって、成長できたと思うしね」
上宇都「下級生時代、練習ができなくて正直辞めようって考えてた。けど、やっぱり自分が野球できるのも支えてくれる人たちがいたからだし、簡単に辞めるわけにはいかないって思った。3年の秋に初めて神宮デビューしたんだけど、その時、『もう1年しかないんだな』って実感して……。最後の1年くらい、本気でレギュラーを狙おうって決意した。結果的にはそれはかなわなかったけど、最後は慶応戦で加藤からホームランも打てたし、続けてよかったなって思うよ」
――下級生に何かメッセージはありますか。
松井「自分たちが下級生のころは、球拾いとか上級生の練習手伝いしかやらせてもらえなかった。けれど、今は下級生も自由に練習ができるようになったはず。でも、その自由っていうのをとらえ間違えないでほしいかな。決まりをなくして自由になったから、練習しなくていいわけじゃない。その時間を自分のために一生懸命使ってほしい」
矢川「それが自分のためにも、チームのためにもなるよね」
上宇都「自分が活躍することも大事だけど、やっぱりチームのために何かしようって気持ちを持ってほしいかな。それで、来年こそは優勝してほしいな」
◆上宇都泰平 かみうとたいへい 法4 桐光学園高出 175㎝・77kg 右/左 野手
◆松井尊嗣 まついたけし 文4 大宮東高出 193㎝・90kg 右/右 野手
◆矢川大輔 やがわだいすけ 営4 佐野日大高出 174㎝・76kg 右/左 野手
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