(4)主将の経験を原動力に 秦 裕太

1999.01.01
(4)主将の経験を原動力に 秦 裕太
 去年の夏、秦は主将として、ずっと目指していた甲子園球場の地を踏んだ。

「予選ではチームをまとめて引っ張っていくことはできたが、プレーでは結果を残せなかった」(秦・商1)。そんな言葉からは想像できないほど甲子園では秦の活躍が目立った。

 対PL学園戦。1点を先行された主将の秦率いる日大三高は4回、無死一・三塁から秦の一塁線スクイズが安打となり同点。このスクイズ成功がチームを活気付けたのか、後続がさらに2点を加え一気に逆転した。7回にも味方のソロ本塁打と秦の適時打で2点、その後も日大三高の勢いは止まらず、見事勝利を果たした。続く3回戦の対駒大苫小牧戦。2対4と負けていた8回では、一死満塁から左前適時打、そしてここでも秦のスクイズが決まり同点となり、最後は6対7の僅差で敗れてしまったものの、結果的にこの年の王者となる駒大苫小牧を一時は苦しめ、日大三高の勝利へと望みをつないだのだった。主将として挑んだ甲子園で「自分のスクイズが点につながり、チームに貢献できて良かった」と、嬉しそうに振り返る。全国から強豪校が集まる甲子園は勝負の厳しさものぞかせたが、そこから学んだものは大きかった。対戦相手が優勝校であっただけに「もう一押ししていたら自分達が優勝していたかも、と思うと悔しい」。

 秦は甲子園に二年連続で出場できたが、自分の代、そして主将としてチームをまとめあげ甲子園に出場できたこととは嬉しさが数倍違うという。だが「一つ下の学年が試合に出ることが多かったから、出れない同期の気持ちを統一したり、かける言葉を考えたり」と、苦労することもあった。主将として人一倍頑張ってきただけに甲子園への思い入れは強いはずだ。

 本学野球部には、活躍を見せる日大三高出身の選手が多く在籍している。その活躍を見て「高校時代にやってきたことは無駄じゃなかった、そう思える」。高校では捕手だったが大学入学後、投手にポジションが変わった。「投手になると周りの視線が恥ずかしい」と語るが、1年生ながらにして夏合宿メンバーにも選ばれ、日々投げ込みからはすでに投手としての貫禄も見せている。「野球がさらに楽しくなった」と語る秦の姿が、来春のリーグ戦、神宮のマウンドに現れることを期待する。

●甲子園こぼれ話 ―土の行方―●

 「球場に売っていた小ビンに入れて飾ってあるよ」。それは球児なら誰もが夢見る甲子園で戦った証。彼は厳しい練習に負けず、この証を得たのだった。

◆秦 裕太 はた ゆうた 商1 日大三高出 181cm・75kg