【コラム】観客よ戻って来い

1999.01.01
【コラム】観客よ戻って来い
 「東京六大学野球は、憧れの地」(川上憲伸氏・平10商卒・現中日ドラゴンズ)。このような想いを抱く野球人がどれだけいることだろう。大正14年から始まった東京六大学リーグ戦は大学野球界で最も長い歴史を持つ。その球史はプロ野球さえしのぎ、日本球界の原点と言っても過言ではない。今昔問わず、神宮には数多くの優秀な選手達の顔が揃う。そして発足から81年目を迎えた今も、歴史と伝統がリーグを支えている。

 六大学リーグは入替戦がない。戦う相手は毎シーズン一緒だがその分「各大学の対抗意識が強い」(週刊ベースボール記者・岡本朋祐氏)。母校の誇りを懸けて激しく競い合う各大学。そして観客も「あの大学には負けたくない!」という思いで選手を応援する。そこに選手と観客を隔てる壁はない。個性溢れる応援とそれに応えようとする選手達の懸命なプレーが織り成す一体感。それこそが六大学野球の何よりの魅力だ。

 全盛期には6万人を超える観客が神宮のスタンドで熱狂した。しかし当時と比べ、外野席まで観客で埋まるのは早慶戦のみ。他の試合では観客数の減少が目につく現状は寂しい限りだ。応援があってこそ選手達もさらに輝き、大学としての一体感も強くなる。再び神宮が超満員の観客で埋まる日が来ることを心から願う。

~明大スポーツ第352号より~