対早稲田戦 総括/東京六大学春季リーグ戦

1999.01.01
 立教相手に2勝1敗。開幕戦の黒星からチームにまとまりが生まれ、辛くも勝ち点を奪取した。その明治は2週目にして早くも、優勝へ立ちはだかる最大の壁・早稲田との対戦を迎えた。居並ぶ早稲田のスター選手達に、実績では敵わない。ただ、勝負は名前ではない。チームとしての真価が問われる、決戦の火蓋が切って落とされた。

第1戦
 先手を取ったのは早稲田。初戦を任された久米(農3)が連打を浴び、2失点。重いムードを振り払ったのが、4番・行田(政経3)に飛び出した神宮初アーチ。2-1と追い上げ、ドラマは4回に待っていた。満塁から松下主将(法4)が押し出し四球を選び、ピッチャー・久米のタイムリーで逆転。さらに、大久保(法4)がレフトへ劇的な満塁本塁打を放ち一挙6得点。追いすがる早稲田をリリーフした白石(商3)が付け入る隙を与えない投球で遮り、大きな一勝を手にする。

第2戦
 またもまっさらなマウンドに立ったのは連投の久米だった。 しかし、前日76球を投げた疲れが残るのか、2回に対明治戦絶好調の松本の二塁打を皮切りに、田中(幸)、大谷の適時打で早々と3点を失う。一方、早稲田先発・大谷に対し、明治打線は後一本が出ない。大久保や行田が二塁打を打っても、塁上進めることが出来ず、つながりを欠く攻撃が続く。投手陣はその後も失点を重ね、守備のミスも重なり計6失点。三塁ベースが遠い明治にとって、この点差はあまりにも重かった。時折降り注ぐ雨のようにバットも湿ったまま、結局散発4安打・無得点。成すすべもなく、完敗を喫し1勝1敗のタイとなった。

第3戦
 優勝の行方を占う大事な試合は、救援で好投を続けた白石の右腕に託された。白石は2、3回に1点ずつを失ったものの、6回2失点と先発としては及第点の成績を挙げる。宮本に手こずる明治打線に火を点けたのは、またも行田だった。「あの場面は狙って打った」打球は、ライナーでレフトスタンド中段に突き刺さり、2-1.初戦の再現が期待されるスコアとなる。一方で、リリーフした大谷の球も前日以上に走っていた。それでも、後を受けた清代(営3)の好投で点差を保ち、8回に連打と死球で2死満塁と一打逆転のチャンスをつかむ。しかし、梅田(政経2)がサードゴロに倒れ暗雲が立ち込める。 

 9回、この回が終わればゲームセット。後がない状況で、代打・矢裂(政経3)がセーフティバントの奇襲に失敗し早々と1アウト。ここから奇跡が起ころうとは、誰が予想しただろうか。上位打線が塁を埋めるも、行田に代わって守備についた中村(政経4)が三振。またも2死と絶望的な状況で、2打席目の佐々木(政経2)が意地を見せた。大谷の直球をレフト前に弾き返し、起死回生の同点打。試合は延長戦に突入し、明治は満を持してエース・水田(文3)を投入。140キロ中盤のストレートとスライダーが冴え、稲穂打線を手玉に取っていく。

 そして11回、再び1番から始まる好打順。先頭の大久保がセンター前、齊藤(陽・商3)のバントが相手のミスを誘い、田沼(文4)が送って1死2・3塁。中村は四球を選び、またも満塁の場面で佐々木に打席が回る。「期待を感じていたし、思い切って振った」打球は、またも打者の間に落ちた。2者が返り、遂に19イニングぶりの勝ち越し。さらに、送球が乱れ2点を追加。絶好調の水田に4点リードはありすぎるほど。松下主将にダイビングキャッチも飛び出し、11回の裏も三者凡退。

 両軍合わせて8失策。数字だけ見れば、荒れた試合だったようにも思える。しかし、確かに両者の意地がぶつかり合った名勝負だった。その中でも、明治は言葉では言い表せない一体感に包まれている。誰かが失敗をしても、他の誰かが取り戻す。そんな雰囲気があるからこそ、最後の最後で勝利をモノにできるのだろう。明治が早稲田から勝ち点を奪ったのは、優勝した04年春以来3季ぶり。優勝を予感させるのも、単なる偶然ではないだろう。「全員が自分達の個性を発揮してくれた」(川口監督)この3連戦の感触を忘れず、Vロードを突き進んで欲しい。