(5)充実の春を経て 古川祐樹

1999.01.01
 今までとは全く違う男が、そこにはいた。左腕から繰り出されるキレのあるストレートが次々ときまり、打者を打ち取っていく。春のエースは間違いなく、古川(理工4)だった。

 2年前の春、古川は2年生ながら10試合に登板。2勝を挙げ、一躍エース候補として名乗りをあげる。しかしその後は低迷。同期の水田(文4)や久米(農4)が結果を残していくなか、大きく水をあけられる形となってしまった。
 まだ肌寒さが残る、今年の春先。古川は捕手と二人きりでブルペンにいた。下半身の使い方を意識しながら、次々とボールを投げ込んでいく。ブルペンに他の投手はいない。人一倍の努力を古川は重ねていた。「最後の1年、悔いは残したくない」。

 そして迎えた春のリーグ戦。古川は2戦目に登板し無失点に抑えると、次の慶応戦では先発し、7回無失点の好投。2年ぶりの勝利を上げた。その後も過去のうっぷんを晴らすかのような快投を続け、チームトップの3勝、リーグ2位の防御率1.14を記録した。さらにその活躍が認められ、日米大学野球の候補にも選ばれた。惜しくも最終メンバーには残ることはできなかったが、「レベルの高い選手の中でプレーし、自信になった」。

 結果を残した春、しかし古川に慢心はない。「優勝できなかったのが心残り」。この夏も決して努力は怠らなかった。チームの輪から一人離れて、ポール間走やシャドーピッチング。黙々と練習を続け、目標へと向かっていく姿は今季の活躍を期待させる。

 「結果を残して、プロに行きたい」。いよいよ最後のシーズンとなった今秋。春の活躍で、プロへの夢は現実を帯びてきた。あとは「優勝すること」。充実の春を経て、左腕エースはひとまわり大きくなった。自身のためにも、チームのためにも4年間の集大成を見せてくれるはずだ。

◆古川祐樹 ふるかわゆうき 理工4 春日部共栄高出 170cm・64kg 左/左 投手