齊藤が11K完投 接戦を制し春の覇者・立大に先勝/東京六大学秋季リーグ戦

2017.09.30
 春の王者にも勢いは止められない。先発の明大・齊藤大将投手(政経4=桐蔭学園)と立大・田中誠の好投で投手戦の様相を呈した今試合。初回に1点を取り合うがその後は0が並ぶ。均衡を破ったのは6回裏、河野祐斗内野手(文4=鳴門)の左越えソロ本塁打で勝ち越しに成功する。この1点を齊藤が守り切り2-1で試合終了。齊藤は自己最多となる11奪三振で完投。首位攻防戦の第1ラウンドを制した。

 最後のアウトを見逃し三振で奪うと、齊藤はほえた。9回2死満塁、粘る代打・江波戸(立大)に投じた10球目。勝負球に選んだのは内角への直球。橋本大征捕手(総合2=佼成学園)の構えたミットは動かず、球審の突き上げた手が試合終了を告げる。普段は感情を表に出さない左腕が投じた執念の1球だった。
 エースには2点あれば十分だった。序盤は2回までに4安打を浴びるも、しっかりと修正。3回からは立大打線をわずか4安打に封じ込めた。要因は「持っている球種全てでストライクを取れたこと」と橋本。得意のスライダーに加え、チェンジアップやシンカーといった右打者から逃げていくボールを効果的に使った。圧巻だったのは8回。1番から始まる好打順だったが二つの三振を奪い三者凡退に。「そこを抑えられたのは良かった」と本人も語る投球で上位打線を圧倒した。この試合を終え齊藤は防御率1.23を記録。この日も「(調子は)良くも悪くもなかった」と謙遜しながら1失点完投で3勝目を挙げた。抜群の安定感でチームをけん引している。

 戦友と打った本塁打だ。同点で迎えた6回、無得点が続き試合は膠着(こうちゃく)状態の中、先頭打者の2番・河野が打席に入る。「チームを勢いづけられたら」。そう意識して臨むと、追い込まれてからの5球目を強振。打球は美しい放物線を描き左翼席で大きく弾んだ。ガッツポーズと共にダイヤモンドを一周。リーグ戦通算3本目となる本塁打は試合を決める一打となった。活躍の裏には小林壱成学生コーチ(理工4・飯山北)の存在がある。毎日夜遅くまで行う打撃練習。常に打撃投手を務め、河野を支え続けた。「二人三脚と言ってもおかしくないくらい2人で頑張ってきた」(河野)。今試合は3試合ぶりのスタメン出場。すぐさま結果を残し、取材では「練習の成果を出せた」と一番に小林への感謝を口にした。

 次戦につながる勝利となった。9回、一打逆転のピンチをしのぎ切った分「相手にとっては大ダメージ」(中野速人主将・法4=桐光学園)。優勝の行方を左右する今カード、初戦を制した価値は大きい。光るのは最上級生の存在感だ。投打のヒーロー・齊藤、河野はもちろん、守備では竹村春樹内野手(政経4=浦和学院)が好守備で齊藤を助け、ベンチでも4年生がチームを鼓舞する。これには「4年生を中心とした普段の取り組みから詰めてきた成果が、こうして試合で表れている」と中野も手応え。明大の掲げる“人間力野球”をしっかりと体現している。春の立大戦は同様に先勝したがそこから2連敗。気の抜けない戦いはまだ続く。「また明日が1戦目という気持ちで」(竹村)。一戦必勝で勝ち点を奪いにいく。

[楠大輝]

打順 守備 名 前
(遊) 竹村(浦和学院) .438 四球    中安    三ゴ    遊直      
(二) 河野(鳴門) .294 三ゴ    捕ギ       左本 三振   
(三) 渡辺佳(横浜) .296 一ゴ    中飛       二ゴ    二ゴ   
(中) 逢澤(関西) .286 中安    捕邪飛       右安    中飛   
(右) 越智(丹原) .333 右安       一ゴ    右飛         
(左) 村上(松山東) .273 左飛       遊ゴ    遊ゴ         
  渡邉涼(広陵)                        
(一) 高瀬(長崎西) .538    遊ゴ    三振       左飛      
(捕) 橋本(佼成学園) .286    二飛       三振    中飛      
(投) 齊藤(桐蔭学園) .182    三振       左飛    右中三   
     29 .309                           

名 前 球数
○齊藤(桐蔭学園) 136 11
10 中野(法4=桐光学園) 20 水野(農4=静岡) 竹村(政経4=浦和学院)
石毛(文1=高崎健康福祉大高崎) 河野(文4=鳴門) 越智(営3=丹原)
11 齊藤(政経4=桐蔭学園) 渡辺佳(政経3=横浜) 逢澤(文3=関西)
18 髙橋(総合3=向上) 13 北本(文2=二松学舎大付) 稲見(法3=日大三)
21 中村(商3=仙台三) 14 宮﨑(文4=履正社) 27 添田(法2=作新学院)
28 入江(政経1=作新学院) 15 荒井海(商4=前橋育英) 39 渡邉涼(商1=広陵)
氷見(政経3=豊川) 16 高瀬(営3=長崎西) 48 村上(法3=松山東)
12 清水風(商1=常総学院) 26 吉田(商3=履正社)
22 橋本(総合2=佼成学園) 32 坪井(営3=明大中野八王子)
試合 勝利 敗戦 引分 勝ち点 勝率
明大    ○○ ○●○      .833
立大 ●    ○○   ○○   .800
慶大   ●△○●      ●○○   .500
法大 ●●   ○△●○         .400
早大 ●○● ●●        ○   .333
東大    ●●   ○●●      ●   .167

試合後のコメント
最上級生の活躍に手応えを感じた中野
「齊藤が130球近く投げて、粘りのピッチングをしてくれたので今日は齊藤の活躍に尽きます。(9回表、2死満塁の場面)緊迫した場面でしたね。もちろん裏の攻撃も覚悟してましたし、次のピッチャーの準備だったり、代打の準備はしていました。どんな展開にもなっていいようにベンチは動いていました。(最上級生の活躍)齊藤だけじゃなくて、竹村がダイビングキャッチをしたり、河野だって1ー1の場面で一発打って試合を決めてくれたし、そういう意味では4年生の勝負所で結果を残す力、粘りのプレーができているからこその勝利だと思います。4年生の力が大きいですね。(初回に)逢澤がきっちり1点返してくれて、さすが4番って感じでした。あそこで一本出てなかったらもっと苦しい展開だったと思うので、そこは逢澤のおかげでもありますね。(河野を対左投手で起用)もちろん相性はいいですし、他にも左の宮﨑だったりいい選手はたくさんいるので、調子のいい方だったり右左の相性で場面によって使い分けていますね。(田中誠の対策)それはもうたくさんしました。ここでは言えないですけど(笑)。(この勝利の意味)相手が最後追い上げて来たところをひっくり返されないで断ち切れたというのは、相手にとっては大ダメージですし、こっちにとってはとてもプラスになることだと思います。春はこの一球、この一振りというところで相手に有利な方向に進んでしまいました。でも今季は今日のように相手に2回も満塁の場面をつくられてしまったけど、齊藤がこの一球というところで抑えたし、河野や逢澤がここで一打欲しいっていうところで打ってくれたので手応えを感じています。4年生を中心とした普段の取り組みから詰めてきた成果がこうして試合で表れているのではないかと思います。(明日の試合)優勝はもちろんそうですけど、春に負けている相手なのでリベンジします。春は1勝してから連敗して勝ち点を落としてしまったので、次は気を緩めることなく、チャレンジャーとして絶対に倒したいと思います」

決勝本塁打を放った河野
「(第3打席はどういう意気込みで)何とか自分が塁に出てチームに勢い付けれたらいいなと思って入りました。ホームランとかは狙わず、何でもいいのでとりあえず塁に出ようと思ってました。(感触は)打った瞬間でした。いい角度で上がってくれたし、いい感じで捉えられたので、入ったかなと思いました。ストレートにタイミングを合わせてたので、いい感じで打てました。(ベンチでは)みんなから声かけはされました。でももう一回行くぞという感じでした。(練習)練習通りというか。学生コーチの小林が毎日夜遅くまでバッティングピッチャーで投げてくれてて、二人三脚って言ってもおかしくないぐらい2人で頑張ってきました。そのおかげで練習の成果を出せたと思うので、小林には感謝してます。(田中誠選手対策は)コントロールが良いピッチャーで、追い込まれたら際どいコースに来るので、積極的にどんどん振っていこうと。そんな大した対策はしてなかったです。(2回戦への意気込み)今日は今日、で気持ちを切り替えて、明日は明日、で活躍できるように頑張っていきたいです」

11奪三振で今季3勝目を挙げた齊藤
「(9回は)疲れは多少ありましたけど、投げられないとかそこまでではなかったです。(8回は大きい)上位打線から始まる場面だったので、絶対にランナーを出してはいけないなと思って投げました。先発で投げているので最後まで抑えないといけないと思っていたので、そこを抑えられたのは良かったです。(制球含め、調子は)そんなに良かったわけではなくていつもと変わらない感じで投げていました。良くも悪くもなかったですけど、いつも通り投げられればいいと思ってやっています。(2週間の調整は)調整という感じではなくて、しっかりやるべきことをやって立教戦に向いていました。まだまだこれからもやらないといけないこととか、できていないことがたくさんあると思います。しっかり明日で立教戦を終わらせて、次の慶應戦までに今できていないことをつぶしていってまたレベルアップするのが明治のリーグ戦期間だと思います。そういう意味では全員がレベルアップして少しずつ前に進んでいるのかなと思います」

攻守にわたる活躍を見せた竹村
「1点に抑えた齊藤の力が大きかったです。あんなに頑張って投げていたので、どんな打球でも捕って守ろうという気持ちでした。(9回2死満塁)守備体勢は細かいのが色々あったんですけど、やっぱり一番は守ってやるという気持ちですね。内野陣では満塁で埋まっていたので、広く守るのと捕ったら近いところでアウトを取ろうという声掛けをしていました。(齊藤さん)ピンチの時もよく外野に声を掛けてくれていますし、周りが見えているなと思います。(5回が三者凡退)チーム全体でも守備で流れを作って、打撃に生かすスタイルがしっかりできていたのでそういうところで何とか勝ち切れたと思います。(投手戦か、打撃戦かの予想は)立教は打撃も思い切りのいいチームですし打撃戦になっても打ち負けないように、そこはまた明日に備えていきたいですね。(田中誠投手)コントロールのいいピッチャーなのでどんどん積極的に振っていこうと思いました。左バッターは外角を攻められていたので、踏み込んでいこうと試合中は徹底していました。(1安打)その後の打席でチャンスをつぶして簡単にアウトになってしまったので、修正する点は多くあります。空き週は簡単にフライを打ってしまうことが多かったので、柔らかいバッティングを心掛けて、ライナー性を増やしていけるようにとやっていました。(今日のセンター前が理想形か)そうですね。まだまだ足りないですが、徐々に近づいているなと思います。(明日に向けて)また投手戦になってヒットが出なくても、何かしらの形でチームに貢献できるようにやっていきたいと思います。ここからの準備が大切になってくるので、ここで1勝して気を抜かないで、また明日が1戦目という気持ちでやります」

初回に同点打を放った逢澤崚介外野手(文3=関西)
「勝ち点2同士で首位争いだったわけですけど、春は立教に負けているのでとりあえず先勝しようと思って試合に挑みました。(最後ピンチをしのいだ)粘り強さが出てきているのかなと思います。(初回に同点打)インコースのストレートです。狙った球とは逆だったんですけど、いいところに飛んでくれたと思います。(2打席目は凡退で右手を気にしてたが)右手をトップの位置に残すということを練習からずっと意識していたので、それを修正しようと思いました。(今季初の2安打)バッティング練習の中では良い打球が増えているので、これからもチームに貢献できる一本を打っていきたいと思います。(チームは今季初の一桁安打)打撃陣に関してはまだまだなので、これから帰って明日に向かって修正したいと思います。(守りの固さが光った)守備はセンターラインを中心に自信を持ってやっているので、それに関しては明日も変わらずやっていきたいと思います。(田中誠の対策)対策は特にしていないですけど、左ピッチャーの対策をしてました。(試合の中でのチームとしての意識)高めを振らないというのは毎回やっています。今日の田中誠也は高めに抜ける球があったので、それを手を出さずに我慢できたというのは良かったことだと思います。(空き週の過ごし方)相手を意識するのではなくて、しっかりと自分たちの野球をしようと話してやっていました。(意気込み)春も1戦目を取って、2、3戦目で負けて勝ち点を落としているので、絶対に明日勝って2連勝で勝ち点を取れるように頑張りたいと思います」

打率3割を維持している越智達矢外野手(営3=丹原)
「(立大戦に臨むにあたって)リーグ戦が始まってからバットの出し方などフォームを調整してそれを空き週に良くなるように意識しながらやってきました。チームとしても学校が始まって自分たちの時間が増える中で、自分たちができることをやらないといけないことは分かっていると思うので、そこは個々がしっかりと取り組んでこれたと思います。(今日の第一打席)エンドランではなかったです。サインは出ていなかったのですが右方向を狙って右打ちしました。(田中投手との対戦について)コントロールがいいピッチャーでインコースもアウトコースも投げ分けてくるので、どっちに来てもうまく打てるように準備することを意識していました。一打席目にヒットを打てたというのは大きかったです。もう一本出したかったですけど(笑)。(早大2回戦から毎試合ヒット)調子はいいですね。いい感じで打てていると思います。(明日に向けて)もう2連勝するだけなので、自分たちの野球を信じてやっていきたいです。(優勝への手応え)感じているものはあります。春の日本一のチームに2連勝できたらチームもグッと勢いに乗っていけるのではないかと思います」

攻めの配球で齊藤をリードした橋本
「(最後の球)内角のストレートでそれまで変化球で粘られていたのでバッターの嫌がる球だと思って要求しました。(それは要求通りか)構えたところにきたので結果的に見逃し三振という結果になりました。(9回2アウトで満塁のピンチ)いつかは終わるかなと思ってそんなきれいなヒットがつながっているとは思ってなくてラッキーなヒットが続いただけだと思っていたので正直満塁になるとは思っていなかったので焦りはなかったです。(9回に入る前の意識は)先頭が4番だったのでまずは先頭を絶対に抑えていこうという思いでした。(4番の笠松さんを含め中軸を3人で抑えたこと)意識的に色んなボールを使うということを意識しました。(序盤で連打を浴びてしまった要因)連打を浴びたのは外のスライダーで打たれ続いたので次の回からは他の球種や他のコースを織り交ぜてリードするようにしました。(終盤は変化球が多い)そうですね。予定というよりかはピッチャーの調子次第というのもあるんですけどチェンジアップが良かったのでそこを中心に要求しました。(今日良かった球種)チェンジアップとシンカーが上手く使えていたと思います。(立大戦でマークしていた打者は)上位3人は特に警戒していて1、2番の熊谷さんも足が速いので盗塁など気を付けようと思っていたのですが初回でエンドランを決められたのでまだまだ注意不足だった点だと思います。(齊藤さんの調子)全体的に前の試合と比べるよりもちょっと悪いのかなと思いました。(この2週間というのはどんな調整を)あまり球数を投げず、立教を意識した投球練習やシートバッティングなどを取り組みました。(齊藤さんは具体的に)疲労を回復することを第一にしていたと思います。(この試合の始まる前にバッテリー間で話していたこと)長打を打たれないように意識しようということを話していました。(9回にタイムを取った時に齊藤さんへの声かけ)ワンバンは絶対に止めるので思い切ってランナー気にせず投げてほしいということを伝えました。(捕手の目線から立大打線を抑えられた要因)齊藤さんの持ってる球種すべてでストライクを取れたことが大きいと思います。(今日も含めプレッシャーのかかる試合を多く経験していることについて)神宮の緊張というのはまだ慣れなくてやはりああいう雰囲気になるといっぱい、いっぱいになる部分があるんですけど、その中でもプレーはできているので良かったと思います。(明日への意気込み)明日はすごく重要な試合となると思うので初回から相手を圧倒できるような試合展開にしたいと思います」