長江147球完投勝利 昨季新人戦王者・法大を下す/東京六大学春季フレッシュリーグ

2017.05.30
 念願の初白星だ! 先発の長江理貴投手(文2=帯広緑陽)はランナーを出しつつも要所を締める投球で1失点完投。打線は法大投手陣に抑えられながらも、1回に喜多真吾内野手(法2=広陵)、8回に内山竣外野手(商2=静岡)がそれぞれ適時打を放ち2―0で勝負あり。昨季新人戦を制した法大を見事下した。

 ラストバッターの中飛を見送ると、長江は小さなガッツポーズを見せた。最後の球は142キロ。「投げるスタミナに不安はほとんどない」と、勢いを落とすことなく147球を投げ切った。ほとんどの回で出塁を許すも、その度に球のキレは増す。要所を抑え積み上げた残塁は10と、まさに“粘投”だった。先日の東大戦では、抑えで登板したが2点を奪われ敗戦投手に。雪辱を果たすべく臨んだマウンドで、高校2年次の夏以来の完投を成し遂げた。「(これからは)リーグ戦の方でも頑張りたい」(長江)。今回の好投は自信に変わった。これを糧に、森下暢仁投手(政経2=大分商)ら同期が活躍する舞台を目指す。

 安打は5つ。しかし、その数少ない好機を生かした。1回、前打者・内山の二塁打に応える形で喜多が中前適時打。「初球から振っていこうと決めていた」(喜多)と、甘く入ったツーシーム系の球を打ち取り、貴重な先制点を挙げた。さらに終盤8回、今度は内山が適時打でダメ押しの1点を追加。打撃強化のため、毎日納得いくまで延々とスイングを続けた内山。努力の結晶とも言える一打に「いい結果につながった」と顔をほころばせた。

 これまでの嫌な流れを払拭(ふっしょく)する1勝に、チームはひとまず喜んだ。しかし「低めの変化球を振ってしまう」(喜多)という欠点から8三振を奪われるなど、課題は未だ多い。次なる相手はリーグ戦覇者の立大。先輩たちのリベンジのためにも、今回の試合を見直し連勝をつかみにいく。

★公家響内野手(政経1=横浜)が初出場 同級生・石川(法大)から二塁打放つ★
 かつての同胞から、記念すべき一打を放った。7回、左対策として公家が代打で出場を果たした。相手投手は、くしくも横浜高校で肩を並べ戦った石川。観衆が見守る夢のマッチアップは、5球目で勝負がついた。直球を狙い打ち、左翼手のちょうど前に落とすと足を走らせ二塁へと滑りこみ。「どっちかというと得意ではないタイプ」と評する戦友から初安打を奪った。リーグ戦ではベンチ入りならず。「ようやくスタートラインに立てた」と初打席をしっかりとかみ締めた。高校時代の通算29本塁打は、紛れもない強打者の証し。神宮の舞台でも、その才能が光り始めた。

[三ツ橋和希]

打順 守備 名 前
(三) 北本(二松学舎大付) 中飛 三振 左飛    左安   
(遊) 清水頌(春日部共栄) 投ゴ    三振    左安 三ギ   
(中) 内山(静岡) 左二    遊失 投ギ 左安
(一) 喜多(広陵) 中安    三邪飛   三振    右飛   
(捕) 橋本(佼成学園) 一直 四球    右飛    投ゴ   
(右) 和田(常総学院) 三振 三振         
公家(横浜)    左二   
走右 渡邉涼(広陵)         
(左) 今村健(鹿児島中央)    三振 遊ゴ    投ギ   
(投) 長江(帯広緑陽)    三振    一ゴ 三振      
(二) 森井(佐久長聖)    中飛 右飛    遊ゴ      
27                           

名 前 球数
○長江(帯広緑陽) 147
市岡(情コミ1=龍谷大平安) 喜多(法2=広陵) 梶原(情コミ2=祇園北)
17 長江(文2=帯広緑陽) 森(政経2=明大中野) 内山(商2=静岡)
18 前山(商2=県立大島) 北本(文2=二松学舎大付) 今村健(政経2=鹿児島中央)
19 古谷(営2=明大明治) 清水頌(政経2=春日部共栄) 27 大内(商2=明大中野)
23 髙野(商2=春日部共栄) 13 森井(農2=佐久長聖) 28 松永(営2=大分上野丘)
31 大竹(営1=明大中野) 15 公家(政経1=横浜) 37 和田(商2=常総学院)
赤木(文2=育英) 16 前田(法2=明大明治) 39 渡邉涼(商1=広陵)
22 今井(国際2=豊川) 26 藤原(文1=遊学館)
32 橋本(総合2=佼成学園) 33 北村(営2=鎌倉学園)
試合 勝利 敗戦 引分 勝率
早大 1.000
立大 .667
明大 .500
慶大 .333
法大 .250
東大 .250

試合後のコメント
2点目を導く左前を打った北本一樹内野手(文2=二松学舎大付)

「(今日の試合を振り返って)9回まで勝負の行方も分からなかったんですけど、勝ててほっとしているという感じです。(チームの雰囲気)ここまでの2試合で勝てずに気持ち的のも落ちていたんですけど、ピッチャーの長江が頑張ってくれて、みんなもそれに乗れたので良かったと思います。(打者としての意識)普段はセンターから逆方向への打球を意識しているんですけど、今日はインコースを攻められて。それでも体が開かないように意識しました。最後は一本出てよかったです。(ゲームキャプテン)自分は声をかけたり、チームが落ちている時に上げていくのが役割だと思っています。そういう面ではみんなが協力してくれているおかげで、やれていると思います。(最終打席)最初はセーフティでもフォアボールでも何でもいいから塁に出ようと思っていて、カウント1-2とボールが続いていたので、次は甘い球が来ると思って振り抜きました。(長江に求めるもの)良いものを持っているので、あとはメンタルだと思います。息詰まった試合でどうやって活躍するかということは今日の試合でも得るものがあったと思うので、今日の試合を生かして一点差の試合を勝てるピッチャーになっていってほしいです。(公家について)実力もあるので本当はスタメンでも出られる選手なんですけど、1年生なのでベンチに回ってもらっています。今日も1打席だけのチャンスで結果を残すというのはさすがだなと思います。(立大戦)勝ててチームは乗ってきているので、この勢いで明日も絶対勝ちたいです」

8回、ダメ押しの適時打を放った内山
「(第1打席の二塁打、打ったのは)外のまっすぐです。後ろに良いバッターがいるので、後ろにつなごうという意識で打席に立ちました。(第4打席目で追加点)できれば、自分がランナーを返したいという気持ちで打席に立ったので、ああいう打てて良かったです。(この春やってきたこと)スイングを強くしたいと思い、毎日スイングを欠かさずやってきました。それが良い結果につながったと思います。自分が納得するまで、ひたすらやっていました。(フレッシュリーグ初白星)3連戦でいいスタートができたので、これを明日につなげていきたいと思います。(明日からの意気込み)チームの勝利に貢献できる一本が打てればいいかなと思います」

初回の適時打で先制に成功した喜多
「前の内山がいい形でつないでくれて、チームが点を欲しい場面だったので、初球から振っていこうと決めて少し甘く入ってきた球を思い切り振っていきました。(打ったのは)ツーシーム系だと思います。真っ直ぐではなかったです。(打撃の手本は)逢澤選手(崚介外野手・文3=関西)です。体格も違いますしタイプも違うと思うんですけど、いつも一緒に練習してくださるので、逢澤さんには負けないように頑張ろうと思っています。(長江に言葉は)接戦だったのでとにかく頑張れと励ましていました。自分は何よりもバッティングなんで、バッティングでアピールしてチームを引っ張っていこうと決めています。(課題は)今日もそうだったんですけど、低めの変化球を振ってしまうことが多いので、ゾーンを上げて振らないようにすることが課題です」

9回完投で勝利投手となった長江
「(9回でも145キロ)投げるスタミナに関しては、不安はほとんどないです。最初からとばしていってはいましたが、最後まで投げ切るつもりでいました。9回を投げ切れたことは自信になりました。高校3年の時も途中で変えられていたので、完投は高校2年生の夏以来だと思います。(球種は)ストレート、カーブ、スライダー、フォークを投げました。(法大は)ほんとうに良い打者が並んでいて、自分が今まで野球をやってきた中でも一番いい打線だと思います。同世代では一番良い打者がそろっているので、試合前は緊張していたんですけど、キャッチャーやコーチ、ベンチ、周りの人に盛り立ててもらって投げ切ることができました。(これからは)リーグ戦の方でも頑張りたいので、投げるチャンスをつかみたいと思います」

リーグ初打席で二塁打を放った公家
「(石川との対戦)『左投手が来たら行くぞ』と言われて準備をしていたら、本当に石川がマウンドに向かっていたので『来たな』と思いました。シートバッティングで何度か対戦したことがあったんですけど打ちやすいというイメージはなかったです。どっちかっていうと得意ではないタイプです。(打ったのは)ストレートです。ストレートが来そうだなと思っていたんですけど、ちょっと詰まってしまいました。ポテンと落ちたので、二塁は積極的に狙っていきました。石川や村田とはよく連絡を取り合ったりしています。いろいろな学校に元チームメイトがいるので切磋琢磨(せっさたくま)してやっていきたいです。(大学での公式戦初出場)リーグ戦とかをずっと見ていて、ベンチには入れなかったので、今日は出場する機会があったら楽しもうと思っていました。今まで練習してきたので、代打の機会を頂けてやっと打席に入れたっていうのが気持ちとしては大きいです。(他の1年生)高校の時から知っているメンバーが数多く試合に出ていて、それに負けたくないっていう気持ちをずっと持ってやってきました。代打ですけど、1回試合に出られてようやくスタートラインに立てたのかなと思います。(残りの試合)試合に出していただけたからには結果にこだわって、声でもチームを盛り上げていきたいと思います」