辛くも逃げ切り初戦突破 関大下し準決勝へ進出/明治神宮大会

2016.11.14
 覇道の最終章が幕を開けた。全国各地から大学野球リーグの代表が集い、トーナメントで優勝が競われる明治神宮大会。2回戦から出場の明大は、関西5連盟第1代表の関大と対戦した。初回に牛島将太捕手(営4=門司学園)の左越え適時二塁打、3回には佐野恵太内野手(商4=広陵)の右越え2点本塁打と川口貴都外野手(法4=国学院久我山)の右越え適時三塁打で計4点を奪い主導権を握った。投手陣は柳裕也主将(政経4=横浜)、齊藤大将投手(政経3=桐蔭学園)、星知弥投手(政経4=宇都宮工)の3人が登板。得点圏に走者を背負う場面が何度もあったが、1点に抑えて白星を手に入れた。
 

 3点リードで迎えた最終回、2死満塁の場面。3番古川(関大)に6球目を投じると、打球は二塁手のもとへ。勝利が決まると星は右手でグラブを叩き、締まった表情でホームへと歩いて行った。
 粘りの投球で2度の危機を脱し、リードを最後まで守り抜いた。7回に齊藤が2本の二塁打で1点を失うと星は後を受けてマウンドへと上がった。「全力でいけば打ち取れる」(星)と150km近い自慢の豪速球を投じて相手打者をねじ伏せ、2死二塁のピンチを脱した。最終回には安打と四死球で2死満塁とされるも、持ち味の力のこもった投球で相手打者を封じ込め、二ゴロに打ち取ると一発逆転のピンチを切り抜けた。

 先発の柳が試合を作った。負ければ引退となる大事な初戦で、立ち上がりは「慎重に行き過ぎた」と持ち前の制球力と直球の伸びは影を潜めた。しかし、ここで崩れないのが百戦錬磨のエース。変化球主体の投球へとすぐさま切り替えると5回を投げ抜き4安打無失点。先発としての最低限の役割を全うした。勝敗が全てのトーナメント戦で柳、星のフル稼働は必至だ。準決勝、決勝とこれから先の戦いではこの2人の投球がチームの命運を大きく左右する。秋季リーグ戦同様、六大学王者の2枚看板として堂々たる投球をし、頂点へとチームを引っ張りたい。

 左の大砲が力強いスイングでチームを勝利へと導いた。1点をリードして迎えた3回、先頭の渡辺佳明内野手(政経2=横浜)が中前安打で出塁。犠打、進塁打で2死三塁と好機を広げ3番佐野恵に打順は巡った。フルカウントからの9球目。「来ると思っていた」(佐野恵)と狙い通りのシンカーを捉え、打球は右翼席中段へ。本塁打と確信した瞬間に右手を上げて喜びをあらわにすると、ゆっくりとダイヤモンドを一周した。続く牛島も遊失で出塁すると、5番川口が右越え適時三塁打を放ちさらに1点追加。序盤だけで4点を奪い、相手先発の吉川(関大)をマウンドから引きずり下ろした。学生生活最後となる今大会に「笑って終わりたい」(佐野恵)。大学球界随一のパワーで次戦以降も集大成を見せ、有終の美を飾る。

 悲願の全国制覇まで、あと2勝と迫った。「日本一を取るために夏もやってきたのでしっかり優勝して終わりたい」(牛島)。春はまさかの1回戦敗退で頓挫した全国の頂点。最後の全国大会だけに思いはひとしおだ。上武大との準決勝でも春からの成長を見せつけ、優勝に王手をかける。

[曽布川昌也]

打順 守備 名 前
(遊) 吉田大(佼成学園) .000 三振    投ギ    一直    三振      
(二) 竹村(浦和学院) .333 投ゴ    一ゴ    左安       死球   
(一) 佐野恵(広陵) .500 中二    右本    遊ゴ       右飛   
(捕) 牛島(門司学園) .500 左二    遊失       右二   三振   
(左) 川口(国学院久我山) .333 三振    右二       二ゴ       四球
(右) 萩原(九州学院) .000    遊ゴ 三振       三振         
  齊藤(桐蔭学園) .—                           
  星(宇都宮工) .—                         投ギ
(中) 逢澤(関西) .000    投ゴ    三振    遊飛       二飛
(投) 柳(横浜) .000    三振    二直               
  東原(天理) .000                   三振      
  加勢(札幌一) 1.000                         左安
(三) 渡辺(横浜) .250       中安 左飛       左飛    投ゴ
   32 .250                           
名 前 球数
○柳(横浜) 76 0.00
齊藤(桐蔭学園) 12/3 31 5.40
星(宇都宮工) 21/3 37 0.00

11 星(政経4=宇都宮工) 10 柳(政経4=横浜) 齊藤(政経3=桐蔭学園)
29 伊勢(営1=九州学院) 19 森下暢(政経1=大分商) 牛島(営4=門司学園)
22 西野(政経1=浦和学院) 32 橋本(総合1=佼成学園) 25 川口(法4=国学院久我山)
佐野恵(商4=広陵) 竹村(政経3=浦和学院) 14 宮﨑(文3=履正社)
35 中澤(国際3=高崎) 15 渡辺(政経2=横浜) 吉田大(国際4=佼成学園)
24 河野(文3=鳴門) 16 吉田有(商2=履正社) 26 添田(法1=作新学院)
内海(政経4=明大中野) 加勢(理工4=札幌一) 20 萩原(営4=九州学院)
28 東原(商3=天理) 逢澤(文2=関西)
38 奥村(政経2=明大中野八王子) 37 越智(営2=丹原)
試合後のコメント
頂点を目指し指揮を執る善波監督

「早めに4点取れたので、齊藤がもう少しきちっと放ってくれるイメージで柳の球数を減らしておきたいなと。継投は4人くらいまでいきたかったですけど、齊藤の出来がよくなかったのでそれはできなかったです。一戦一戦というのを意識しないといけないです。実践が空くのが気になるところでした。バッターは幸運なヒットから牛島がタイムリーを打ってくれて、佐野がホームラン打ってくれて、いい形で前半はできたんですけど、代わったピッチャーからまたっていうところをやらないとトーナメントは勝ち上がれないと思います。今日はそれができなかった。吉川くんも他にもいいピッチャーがいるのも知っていたので、誰がきても対応していこうということでした。シンカーが本当にいいと分かっていました。ゾーンを上げてという感じにしたんですけど、佐野の(本塁打)はそういうボールでした。高めを一発で仕留めたというか、彼の投げ損じみたいな球じゃないかと思うんですけど、それを仕留められたのはナイスバッティングだと思います。(最終回のマウンドでは)ちょっと星の投げるフォームのリズムが早め早めになっていたので『ゆっくりいこうか』と声かけて。彼の持っている一定の力は出していると思います。なんとか抑えて勝ちにつながって良かったです。柳は立ち上がりが、特に真っ直ぐが高めに浮いて不安定でした」

5回無失点で勝利を挙げた柳
「今日は序盤から少し慎重にいきすぎました。もう少しテンポよく投げられたと思います。結果的に0に抑えられたのは良かったが、まだまだです。(今日のテーマは)トーナメントは1回負けたら終わりなのでとにかく点数を与えないように心がけていました。(先制点)序盤に点数を取ってもらって気楽に投げられました。ただチームとしてはもっと点数を取らなきゃいけない試合だったので、反省するところは反省したいなと思います。(調子は)悪かったです。初回からです。回を追うごとに良くなってきました。ストレートが高く、力もなかったので変化球でかわすピッチングになりました。ストレートがよくないと変化球が生きてこないので、次は修正したいです。(もっと投げたかった?)そういったことはないです。日程も詰まっていますし、他にもいい投手がいるから自分がしっかり投げられるので、今日は星、齊藤と投げられて良かったんじゃないかなと思います。(後半ピンチが続いた)二人とも感じた部分はあると思うので、次に生かしてほしいです。(リーグ戦後は)チームが浮かれないように、厳しく練習してきました。4年生もそれは分かってくれているので、自分がというわけではなく、チーム全体でやっています。(抱負)ここまで明治に育ててもらったので、明治に何かを残したい。最後日本一になって卒業したいと思います」

本塁打で試合を決定づけた佐野恵
「ツースリーだったんですけど、前の打席での反省もふまえてシンカーが来るなと思っていました。失投だとは思うんですけど、1球で捉えられました。打った瞬間入るなと思いました。リーグ戦では1本も打てていなかったんですけど、ヒットの延長がホームランと思っていて、出せて良かったです。リーグ戦は納得いく成績が残せていなかったので、チームが勝ちに近づく打撃ができて良かったです。リーグ戦では振りにいけなかったので、もう一回自分のいいところを見つめ直して、振っていこうという意識で練習してきました。見ながら見ながらになると良くないというのは自分でも分かっていたので、振っていく中で合わせられるようにという感じです。心の問題というか、振れる準備をしてきました。(プロ入り)やっぱり身が引き締まる。上のレベルの世界になるので、向上心というかモチベーションになります。上原さんや高山さん、坂本さんからは入ってからが勝負ということを言われています。春は六大学代表として、他の5大学に申し訳なかった。トーナメントは一発勝負なので、リーグ戦でやってきた泥臭いことをやろうと話していました。あと3日で明治のユニフォーム着れるのも終わってしまうので、最後は笑って終わりたいです」

無失点で試合を締めた星
「4、5回くらいから体動かして、終盤あるかなと思ってそこに向けて準備していました。チームの悪い流れを変えられずズルズルと不甲斐ないピッチングをしてしまったので、反省点すべき点かなと思います。点を与えなかったところだけはよかったです。最低限の仕事とは言いますけど、内容が悪すぎました。修正していかないといけないなと思います。(7回は相手の反撃があった中で登板)バッター一人だけだったので、そのバッターに全力でいけば打ち取れるというかな気持ちでした。このバッターでこの回を締めるぞという気持ちでいきました。調子自体はそこまでよくなかったですけど、ゲームに入って修正すべきところを修正できなかったのは反省点です。力んで真っすぐが抜けてしまったり、真っすぐが良くない中でもう少し変化球を使ったピッチングができたんじゃないかなと思います。変化球は比較的良かったです。最終回に2死二塁から四死球でクリーンアップに回してしまったのは良くなかったです。悪い雰囲気をどう変えるかということばかりを考えてしまったので、悪い空気の中でも、それを変えようとピッチングをしようとして力んでしまいました。相手は意識せず、しっかり投げることだけを意識していました。関大はいやらしいチームだなという印象でした。一人一人のバッターが簡単に終わってくれなくてそこは厄介な点かなと思います。(最後の大会を前に)試合前日本一になれていないので必ず日本一取ろうと話し合いました。それを目標にして戦っていきたいと思います。継投でいくという風には言われていないですけど、ブルペンのピッチャー一人一人がいつでもいけるようにという準備は日頃から心がけています。今日は変化球が良くて、真っすぐもそれなりにきてはいたんですけど最終回になって少し力みが入ってしまったときにシュート回転してしまって、自分も投げていてそう感じたんですけど、それを最終回に出してしまったのが良くなかったことかなと思います。(自己採点するとしたら)今日は30点くらいです。次はどちらでいけと言われてもしっかりとしたピッチングをしようと思います」

リードと先制打で勝利に貢献した牛島
「(柳選手は指先で調整していたか)投げ方もいろいろ工夫していたので、指先だけとは言えないんですけど、フォームであったり体の調子もあるので、その中で無失点で投げてくれたのでそこはすごいと思います。球は絞られないので、調子は良くないんですけど、長打が出ると失点につながるので単打で抑えました。(日本一への思いは強いか)明治でやれる最後の試合で、日本一を取るために夏もやってきたので、しっかり優勝して終わりたいですね。春も負けて弱いって言われた代なので、日本一取りたいです。(星選手は)星はいつもこんなもんです。こんなもんって言うのは言い方悪いですけど。変化球も腕が振れていましたし、後半自分たちが流れをつかめなかった分、相手のバッターもいけいけできていたので。(大学日本代表の経験は)経験は積めました。レベルの高い選手がたくさんいて、明治もレベル高いんですけど、短期間でチームを作っていく中、やっぱり柳が意識が高くて一生懸命頑張ってチームができたと思います。(柳選手以外にすごいと思った代表投手は)佐々木(桜美林大)はストレートが良くて右も左も打ち取れるピッチャーなので、すごくいいピッチャーだなという印象がありました」