
奥村がサヨナラ本塁打で決着! 4季ぶり新人戦優勝/東京六大学春季新人戦

ついに終止符を打った。連盟規定により、日没時点で勝敗が決まらなかった場合には優勝預かりとなっていたこの試合。延長13回裏、先頭打者の6番奥村が打席に立つ。太田(慶大)の投じた3球目、高めに浮いた変化球に食らい付くと打球はライトスタンドへ一直線。まばたきすら惜しかった弾道にも「無心だったので、正直打った打球も見ていなかった」。ベンチから走り出してきたメンバーを見て、ようやく飛び出したガッツポーズ。前日にスタメン落ちした悔しさを糧に迎えた決勝戦、この日は8回にも無死満塁から一時勝ち越しとなる適時打を放っていた。凡打が続いても起用し続けてくれた首脳陣に、感謝の意を寄せながらダイヤモンドを一周する。歓喜の輪ができるホームベースに一拍おいて飛び込むと、チーム全員が「ナンバーワン」を意味する人差し指を突き上げた。
我慢の連続だった。先発した森下暢仁投手(政経1=大分商)が3回途中に突然のアクシデントに見舞われ降板。その裏、5番山本恵汰外野手(文2=愛工大名電)が先制の左前適時打を放つも直後の4回に2番手の金子大地投手(商2=春日部共栄)が走者一掃の適時三塁打などを浴び逆転を許してしまう。しかし、ここから「粘りの明治」が本領を発揮した。1-5で迎えた6回に3本連続の適時打で5-5の同点に追い付くと、7回からマウンドに上がったのは4番手の髙橋裕也投手(総合2=向上)。2点リードで迎えた9回は守備のエラーも絡み同点に追い付かれるが、5回5安打2失点の粘投。力強い速球を軸に、制度の高い変化球で延長10、11回を三者凡退で切り抜けた。前日に先発で5回無失点の好投を見せていた伊勢大夢投手(営1=九州学院)も延長12回から5番手として登板。この日は最速147kmを計測し、無安打無失点の投球で相手打線を圧倒した。根気強く投げぬいた両右腕、優勝への大きな立役者となった。
「最後まで諦めていなかったので、絶対勝てると思っていた」(吉田有輝内野手・商2=履正社)。長く、苦しく、息の詰まるような試合展開。明大14安打、慶大13安打でともに残塁は14と互角の戦いを制したからこそ喜びもひとしおだった。優勝の胴上げには町田治輝新人監督(商4=明治)、竹下諒太郎学生コーチ(営4=明大中野)、主将を務めた吉田有、ヒーローとなった奥村がチームメイトの下でそれぞれ3回ずつ宙を舞った。試合後には「下級生が少しでも多く試合に出られるようにしたい」と語気を強めた吉田有。3試合連続のマルチ安打を放った稲見優樹外野手(法2=日大三)、3試合連続猛打賞で計5打点を挙げた高瀬雄大内野手(営2=長崎西)ら2年生の活躍はもちろん、ルーキーも初めての神宮の舞台で躍動した。秋からのリーグ戦出場を目標に、期待のホープたちはこれからも白球を追い続けていく。
[土屋あいり]
打順 | 守備 | 名前 | 打 | 安 | 点 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | (中) | 稲見(日大三) | 5 | 3 | 1 | 左二 | 中安 | 中飛 | 一安 | 死球 | 一直 | 死球 | |||||||
2 | (遊) | 吉田有(履正社) | 3 | 0 | 0 | 三振 | 一失 | 遊ゴ | 妨出 | ||||||||||
打三 | 村上貴(松山東) | 3 | 0 | 0 | 三振 | 右邪飛 | 三振 | ||||||||||||
3 | (二) | 高瀬(長崎西) | 7 | 3 | 1 | 中安 | 一ゴ | 右飛 | 中安 | 中安 | 一飛 | 中直 | |||||||
4 | (左) | 佐野悠(広陵) | 2 | 0 | 0 | 二併 | 三振 | ||||||||||||
打左 | 和田慎(常総学院) | 3 | 0 | 0 | 遊直 | 四球 | 四球 | 捕邪飛 | 三振 | ||||||||||
5 | (右) | 山本(愛工大名電) | 7 | 2 | 1 | 遊失 | 左安 | 遊ゴ | 遊ゴ | 左安 | 中飛 | 右飛 | |||||||
6 | (一) | 奥村(明大中野八王子) | 5 | 2 | 2 | 投ギ | 二ゴ | 四球 | 投ゴ | 右安 | 三振 | 右本 | |||||||
7 | (三)遊 | 添田(作新学院) | 4 | 2 | 1 | 死球 | 二ゴ | 中安 | 死球 | 遊ゴ | 中安 | ||||||||
8 | (捕) | 氷見(豊川) | 4 | 0 | 0 | 遊ゴ | 遊ゴ | 二ゴ | 四球 | 遊飛 | 三ギ | ||||||||
9 | (投) | 森下暢(大分商) | 1 | 0 | 0 | 遊ゴ | |||||||||||||
投 | 金子(春日部共栄) | 0 | 0 | 0 | |||||||||||||||
打 | 越智(丹原) | 1 | 1 | 0 | 左二 | ||||||||||||||
投 | 外尾(佐賀西) | 0 | 0 | 0 | |||||||||||||||
打 | 平塚(春日部共栄) | 1 | 1 | 2 | 中二 | ||||||||||||||
走 | 植村(日南学園) | 0 | 0 | 0 | |||||||||||||||
投 | 高橋(向上) | 2 | 0 | 0 | 三振 | 二ゴ | |||||||||||||
打 | 内山(静岡) | 1 | 0 | 0 | 三振 | ||||||||||||||
投 | 伊勢(九州学院) | 0 | 0 | 0 | |||||||||||||||
計 | 49 | 14 | 8 |
名 前 | 試 | 勝 | 敗 | 回 | 球数 | 安 | 振 | 球 | 責 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
森下暢(大分商) | 2 | 1 | 0 | 22/3 | 66 | 2 | 3 | 2 | 0 |
金子(春日部共栄) | 3 | 0 | 0 | 11/3 | 32 | 4 | 1 | 0 | 3 |
外尾(佐賀西) | 3 | 0 | 0 | 2 | 35 | 2 | 2 | 2 | 1 |
髙橋(向上) | 2 | 0 | 0 | 5 | 73 | 5 | 4 | 1 | 0 |
○伊勢(九州学院) | 2 | 2 | 0 | 2 | 37 | 0 | 2 | 2 | 0 |
17 | 髙橋(総合2=向上) | 3 | 平塚(政経2=春日部共栄) | 16 | 高瀬(営2=長崎西) |
---|---|---|---|---|---|
18 | 外尾(文2=佐賀西) | 4 | 植村(農2=日南学園) | 26 | 村上貴(法2=松山東) |
19 | 金子(商2=春日部共栄) | 5 | 釣賀(政経2=盛岡四) | 8 | 越智(営2=丹原) |
23 | 森下暢(政経1=大分商) | 6 | 吉田有(商2=履正社) | 9 | 稲見(法2=日大三) |
29 | 伊勢(営1=九州学院) | 7 | 山本(文2=愛工大名電) | 24 | 内山(商1=静岡) |
2 | 氷見(政経2=豊川) | 13 | 平光(商2=明大明治) | 27 | 佐野悠(商2=広陵) |
22 | 小野(文2=愛工大名電) | 14 | 鶴田(政経2=甲府一) | 39 | 和田慎(商1=常総学院) |
32 | 西野(政経1=浦和学院) | 15 | 添田(法1=作新学院) | ||
37 | 下田(政経2=明大明治) | 34 | 奥村(政経2=明大中野八王子) |
試合後のコメント
サヨナラホームランを放った奥村
「無心だったので、正直打った打球も見ていなかったです。ここまでなんとか耐えて一生懸命みんなで頑張ってきたので、この打席を楽しもうと無心で臨みました。チェンジアップが少し高めに浮いた球だと思います。特に狙い球を決めていたわけではなくて、体が反応しました。来た球を素直に打ち返そうという風にいたら、たまたま反応して打てたんだと思います。昨日スタメンを外れて悔しいという気持ちがありましたが、それでも今日、町田新人監督が自分を使ってくれて、打てなくても最後まで使い続けてくれたのであの結果につながりました。監督には感謝しています。(8回にも勝ち越しの適時打)そこまで、チームに貢献するようなバッティングができていなかったので、みんながノーアウト満塁で自分に回してくれたので、食らいついていこうと思いました。(胴上げされている時の心境)ホームランを打って周ってきているときは実感がなかったんですけど、胴上げされているときに初めて『自分が打って勝ったんだな』っていう気持ちが沸いてきて、本当にうれしいと思いました」
キャプテンとしてチームをまとめた吉田有
「最後までみんな全然あきらめてなかったので、絶対勝てるとは思っていました。(どのような声かけを)とにかく集中力を切らすなというのと、負けるようなことを思うなと。とりあえず前向きに前向きにとらえるようにみんなに言っていました。(奥村選手がサヨナラホームラン)打った瞬間、いったー!と思ったんで、もう最高です。(胴上げされた感想は)今までで一番気持ち良かったです!やっぱり自分自身が全然結果が出ていなくて。それでもやっぱりみんなが声をかけてくれたりしていいチームだなと、いい学年に恵まれたなと思いました。(学生コーチの存在も大きかった)自分たちのことを第一に考えてくれて、学生コーチだけじゃなく上級生も全日本を控えているのに練習を手伝ったりしてくれていて。感謝の言葉しかないです。(下級生の底上げ)せっかくキャプテンもやらしてもらったので、どんどん自分が中心となって下級生が少しでも多く試合に出られるようにしたいです。この大会は全然結果が残せなかったので、次の全日本は入れたらもちろん結果を残すこと、次の秋のリーグ戦、新人戦でも結果を出せるように頑張ります」
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