
(4)一球を逃さない 魂の全力プレー 平島嘉之
情熱という言葉はこの男のためにあるのかもしれない。平島嘉之外野手(営2=明大中野八王子)は幾度の困難をその強靭(きょうじん)な心身で乗り越えた。持ち味の全力プレーと他を圧倒する闘争心を胸に、春リーグでは勝利の立役者となってみせる。
情熱に秘める底力
「順風満帆に野球生活を送れたことがない」。期待の強打者はそう語った。京都府出身の平島は高校進学時に上京、明大中野八王子高に進学した。上京当初は環境の変化に苦戦するも「思い通りに野球ができ始めた」。3年次は、副主将に就任。オンとオフを徹底し、固定観念にとらわれない新しいチーム運営に心血を注いだ。
転機は2年冬に訪れた。トレーニング中、頭の血管を切り、野球はドクターストップ。3カ月間プレーはおろか歩行も控えることに。どん底でも「自分がやってきた信念があった」と芯の強さで切り替えた。チームのサポートに加え積極的に意見を発信。可能な限りのトレーニングも行った。野球に対する片時も屈することのない熱意は結実し復帰を果たした。「一番の挫折でもあるし、野球人生において一番大きな時期」。ケガも多く何度も危機的状況にひんしたが、そのたび折れない心で打ち勝った。「逆境には一番強いかな」。そう笑顔で振り返られるのも、苦難も気持ちで耐え忍んできたからだろう。
闘争心の強さは平島の代名詞だ。「気持ちの土台の上に技術が乗っかる」。その信念の下、全力プレーは当たり前。中でも豪快なフルスイングは見る者を凌駕(りょうが)する。結果は別。打とうとする気持ちがなければ、打席に立つ意味はない。「思い切ってプレーしてなんぼ」。その言葉は試合での平島の姿が体現している。勝負強さに磨きをかけ、チャンスで欠かせぬ存在へ。グラウンドで放たれる情熱は、今日もめらめらと火を吹いている。
[石渡小菜美]
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