
4年間の軌跡(6)髙山俊

何度も繰り返してきた言葉があった。「応援してくれる方々のために」。4年間を振り返るときつい時期が大半だったという髙山。それでも、ファンの声に応えようという思いに突き動かされ、前へと進んだ。記録更新が懸かった今季は、打席に入る前の拍手や声援が一段と大きいことをグラウンドから感じていた。
「(応援の高まりを)感じましたね。すごく。やはり自分が思っている以上に応援してくれている人はいるのだなと。そういう方たちがいるから、記録の重さだとかを感じられましたし、そういう人たちの期待に応えないといけない、という思いで打席に立つことができたと思います」
そしてついに歓喜の瞬間は訪れる。東大1回戦、通算安打記録を更新した打席。ネクストバッターズサークルから打席に向かい、一度屈伸。バットを持った右手を投手方向に伸ばし、左手で右肩に触れる。幾度となく繰り返したルーティンを終えると、初球を捉え左中間へ運んだ。全力で走り三塁へ到達すると、球場全体から沸き起こった拍手に、ヘルメットを取って一礼。歴史が塗り替えられた瞬間だった。
「球場全体から拍手をいただいてうれしかったです。野球はチームスポーツですが、自分個人の記録をファンの方やチームメイト、監督やコーチなどたくさんの方に応援してもらって、本当にそれがあってのものだと思って、感謝の気持ちが大きいです。数字を残せたことは素直にうれしいです。今の気持ちを応援してくれた人たちに伝えたいですね。やっとファンの期待に応えられたと思います」
明大での4年間、成長した部分に「人間力」を挙げた。伝統を感じ、受け継いでいくことの大切さを感じるようになったという。
「今まで見てきた先輩たちのいいところをどんどん後輩たちに伝えていかないと、やはり伝統ってそういうものだと思うので。そういうことをチームメートや後輩に伝えていく立場になれたり、そういう考え方を持つようになれたことですね。野球部ですけど、ただ野球をやっているだけじゃなくて、明治大学野球部ということを考えることができるようになったところですね」
また、生活をともにしてきた同期への思い入れも強い。最終カード、右手有鉤骨骨折により試合をベンチから見守ることになった髙山。ベンチから見たチームワークに、4年生のまとまりを強く感じた。
「このメンバーじゃなかったら自分はこうはなっていないと思います。本当に同期には一番感謝しています。4年間一緒に野球をやり続けてきたことが一番の思い出です」
これからも、ファンと共に。神宮を沸かせ続け、数々の伝説を残してきた。来年から舞台は変わっても、基本的なスタンスは変わらない。「今までと変わらないですね。ずっと自分が成長し続けて、チームのために一生懸命やっている姿を見せられるように、応援してくれる人たちを大切にしながら成長していきたいと思います」。明大での4年間を胸に、かつての聖地・甲子園で躍動する。
◆髙山俊 たかやましゅん 文4 日大三高出 外野手 181cm・84kg 右投左打
大学での主な実績 ベストナイン6度(2012春、2013秋、2014春秋、2015春秋)、大学日本代表(2015年)
次回の特集は11月30日(月)坂本誠志郎主将(文4=履正社)です。
関連記事
RELATED ENTRIES