
(13)記録保持者が語る 高田繁氏

「すごく魅力を感じる選手」。髙山のことを日大三高時代から知る高田氏が持つ印象だ。選手としては決して大きな体格ではなかった高田氏。そんな自身の学生時代のプレースタイルと比較し「髙山は僕と違って体も大きい。彼の場合は本格的な強打者」と評する。
安打記録更新は通過点に過ぎなかった。高田氏は俊足巧打を武器に1年秋からレギュラーに定着。4年秋(1967年秋)には石井藤吉郎氏(早大卒)の持っていた当時のリーグ通算114安打の記録を更新した。「プレッシャーは全然なかった。石井さんのその数字を目標にしていたわけでもなかった」。高田氏がこだわっていたのはチームの優勝のために打つこと。勝利に徹し続けた結果として記録更新、そして通算127安打という記録が残った。この数字の価値を「4年間8シーズン、コンスタントに打てたこと、ケガがなかったこと」と振り返る。
「127」は偉大な数字となった。高田氏は「記録は50年近く破られていないけれど、何でという感覚」と言い切る。近年では1997年に高橋由伸選手(慶大卒・読売ジャイアンツ)、2006年に大引啓次選手(法大卒・東京ヤクルトスワローズ)が更新に挑むもそれぞれ119安打、121安打と大台には及ばなかった。さらに選手を取り巻く環境の違いが大きな影響を与えているとも指摘。高田氏が更新した当時は「記録を抜いた時だけは騒がれたけれど、記録を作ろうとしている時はそんなに騒がれなかった」。一方、127安打が更新されない年月が長くなるにつれて、更新に挑む選手への期待、選手の感じるプレッシャーは大きなものとなっている。現状に対しては「今年もそうだけど、今の選手は初めからヒットの数を周りに騒がれるところが(更新できないことに)影響しているかもしれない」と感じている。
後輩へ48年の歴史を塗り替えることを託す。髙山も過去の名選手たちと同様に、年間36安打を放った1年次から安打記録更新への期待を懸けられ続けている。その状況下でも、数字をモチベーションに変えて突き進む髙山へは「記録が近づいてきたらそれを目標にしてやるのはいいと思う」と期待は大きい。さらに、高田氏自身は優勝を目指して安打を積み重ねたが、在学中は一度も優勝には恵まれなかった。だからこそ髙山に望むことは優勝に向け、勝利に貢献しながらの安打記録更新。「髙山がヒットを打って活躍することによってチームの成績が良くなればいい。最終的には勝つことが一番だから。優勝という大きな目標のために安打記録を意識して狙って、結果を出していくことが大事じゃないかな」。髙山が歴史に名を刻む日を、高田氏は誰よりも心待ちにしている。
次回の特集は「早大戦総括」です。
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