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(2)意外と知らない!? 競泳のあれこれ

水泳(競泳) 2023.07.10

 7月14日から31日にわたって開催される世界選手権(以下、世界水泳)。明大からも競泳、OWSにて計3人の選手が出場する。今回は、世界水泳をより深く楽しむために、競泳の知識を紹介する。

 

――“自由形”と“クロール”

 競泳の花形種目ともいえる自由形。日本人選手のきれいな泳ぎはもちろん、海外選手の豪快で力強い泳ぎも見られる種目だ。タイムも最も速く、見る人を興奮させる。しかし、競泳を見ていて「なぜ泳いでいるのは“クロール”なのに種目名が“自由形”なのか」と疑問に思ったことはないだろうか。

 

 “クロール”と“自由形”この二単語の間には違いがある。それぞれ泳法と種目であるという点だ。

 

 クロールとは、基本のストリームラインを保ったまま、両手両足をそれぞれ交互に動かす泳法の名前である。初心者でも泳ぎやすく本格的な競泳を経験したことがなくとも、泳いだことはあるという人も多いのではないか。

 

 一方で自由形とは、文字通り自由に泳いで構わない種目の名前である。泳ぎ方に制限は無い。ただし15m以上水没して泳ぐことや、コースロープをつかむことなどは違反となってしまうが、泳法に関して言えば、何を泳いでも自由である。実際、自由形の種目でバタフライを泳いだ選手がいた事例もある。

 

 この二つの単語の差があまり認識されてない理由として、クロールが速いタイムを出しやすいため自由形で泳ぐ人が多いから、自由形がフリーと呼ばれているから、メドレーリレーや個人メドレーにおける自由形はバタフライ、背泳ぎ、平泳ぎと重複してはならないためクロールが選ばれるからなどが挙げられる。

 

 世界水泳でもそういった点に注目しながら楽しんでもらいたい。

 

――知られざる競泳の決め手

 選手たちの戦いは、スタートの瞬間から始まる。競泳ではスタートの合図から、スタート台から足を離すまでの時間をリアクションタイムという。大規模な大会を行う水泳場では、飛び込み台にセンサーが設置されており、スターターの合図からの時間を計測できる。彼らは日々、泳ぎはもちろんのことスタートの反応速度を上げる練習もしている。ちなみにこのリアクションタイムは、トップスイマーで0.5秒台と言われている。スタートの合図を聞き、体を動かし、飛び込むまでの動作をたったそれだけの時間で完結させるというのだ。競泳では、結果タイムの差が1秒に満たないこともよくある。リアクションタイムの差は、知られざる順位の決め手となっているのだ。

 

 合図の前の張り詰めるさまは、どこか神聖ささえ感じさせる。そして一気に放たれる力強いスタートは、戦いの口火を切るにふさわしい。

 

――細部にまでこだわりを

 競泳の見所は、泳ぎだけではない。壁を蹴り大きな推進力を生むチャンスとなる折り返し地点も、レースの展開が動く大きな要所だ。この折り返し地点で見られる“ターン”という動きは、主にタッチターンとクイックターンの二種類に分けられる。

 

 クロールや背泳ぎで見られるクイックターンは、泳いできたスピードを利用して、素早く前転のような動きをする。一見簡単そうに見えるものの、水中でありながら素早い動きをしなければならないため、見た目よりも難易度が高いことが特徴だ。

 

 バタフライ、平泳ぎでは折り返しとゴールの際、必ず両手で同時に壁に触れなければならない。このタッチターンではスピードを保ちつつも細部へも神経を尖らせることが求められる。壁に触れる際は審判の目視もあり、厳しいチェックがなされている。

 

 テレビ放送などでは折り返しの際、カメラが寄ることが多い。そういった点もぜひ注目してもらいたい。

 

[中川美怜]


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