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(2)GOAT Challenge Cup主催者・安田桂太朗さんインタビュー

アイスホッケー 2023.06.28

 安田桂太朗さん(Connecticut College)が大学在学中に立ち上げたGOAT Challenge Cup。このイベントが今後のアイスホッケー界にどのような影響をもたらすのか。これまでの取り組みから今後の展望。さらには海外での生活についてもお話を伺った。

 

――安田さんの経歴についてお聞かせください。

 「僕は愛知県出身で幼少期から愛知でアイスホッケーをやっていて、その後アイスホッケーのために北海道に移り住みました。その時には三浦選手(稜介・政経4=駒大苫小牧)とも一緒にプレーをしていて、小学校卒業してから1年目はカナダ、その後アメリカに留学をしました。今はアメリカの大学に通っていて、あと1年そこで過ごす予定です」

 

(写真:ボードを掲げるファンと写真を撮る安田さん)


――アメリカの大学ではどのようなことを学んでいますか。

 「経済学と金融学を専攻していて、その中でも特にスポーツマネジメントに興味がありました。その授業ではアイスホッケー以外の運営方法を学ばせてもらったり、地元スポーツチームのボランティアをしたりしていました」

 

――大学での1日のスケジュールを教えていただけますか。

 「アメリカは文武両道が厳しくて、9時から16時までは授業があるので朝は7時くらいに集合して筋トレとか氷上以外のトレーニングをやっています。授業が終わって氷上練習が1時間半から2時間あって終わるのが20時くらいになるんですけど、授業の課題が毎日出るんです。なので、そこから23時くらいまで学校の図書館でみんなと勉強をして日付が変わるくらいに就寝という感じです。自分の時間はほとんどないですけど、土日は試合後に学校が開いているパーティーとかがあるので、そこで息抜きをしています」


(写真:アイスホッケー以外の面でも充実した生活を送る安田さん)

 

――アメリカで一番印象に残っていることをお願いいたします。

 「やはり、たくさんの観客の中でアイスホッケーの試合ができることです。大学のリンクで試合をするんですけど、ホームの時は応援の声がすごいですし、逆にアウェーだと相手の罵声とかも聞こえてきます。それがプレーヤーとしてはたまらない状況で、このために海外に来たんだなというのは今でも感じます。ものすごい熱い感じとか、リンク一周観客で埋め尽くされる状況っていうのは日本だとあまりない環境なので」

 

――GOAT Challenge Cupを開催しようと思ったきっかけについてお聞かせください。

 「アイスホッケーはアメリカやカナダが本場で、もちろん日本のアイスホッケーのレベルと北米のアイスホッケーのレベルは差が多少あるんですけど一番の違いとして、アイスホッケーの運営力やエンターテイメント性にあまり日本はフォーカスを置いていないなと感じました。アメリカに留学をして規模の違いを感じ、そこをもう少し工夫したり、アメリカの仕組みなどを取り入れたりしたら、もっと観客が増えるんじゃないかなというのもあって、アイスホッケー界は試合を開催するという動きがあまりなかったので、とりあえず地元の愛知で何かできないかなと、2021年に始めました」

 

――北米の試合中のイベントで印象に残っているものはありますか。

 「あっちは規模が違うので、観客がセンターラインからシュートを打ってゴールに入ったら景品で車がもらえるとか、四輪バギーを2台セットして競争するとかもありました。あとは、バブルサッカーを氷上でやるとか、スクリーンに有名人に似ている観客を映すとかも印象に残っています」


(写真:NHLの試合。巨大スクリーンや観客数など規模の違いが分かる)

 

――GOAT Challenge Cupという名前の由来を教えていただけますか。

 「GOATはアメリカで使われる単語で、スポーツ界でいうと、大谷翔平選手だったり、イチロー選手だったりがアメリカでGOATという風に言われています。スポーツ界で何かしら史上最高のプレイヤーであったりとか、史上最高のイベントであったりとか、そういったものを表すために使われるのがGOATという単語です。日本のアイスホッケー界で一番盛り上がるイベントをつくりたいと思って、その名前を取りました」


――運営スタッフは大学生の方が中心となっているのですか。

「そうですね。基本的には大学生が中心です。僕がこのプロジェクトでいいなと思っている部分はいろいろなことが経験できることです。例えばマーケティングやインスタグラムの動画編集や画像編集などのテクノロジー系の仕事もあります。あとは、資金を獲得するための営業という仕事もあって、将来のための経験としてはいいスタートアップではないかと考えています。多少なりともミスはありますが、その中でしっかりと学生が成長できると思いますので、基本的な学生に声を掛けてやってもらっています」


――今回は日本の大学オールスターと、海外に挑戦している日本人選手の対戦というこれまでにない組み合わせです。この対戦カードで開催しようと思ったきっかけをお聞かせください。

 「まず一つはアマチュアレベルの選手にスポットライトを当てている機会がすごく少ないな、という風に感じたからです。若手の選手ですごい上手い選手が多いというか、もっと注目されてもいい選手がたくさんいるという風に前から思っていました。あとは僕自身、留学をしている中、日本でプレーをする機会や試合をする機会が全然なくて、人目に付く機会がすごく少なかったんです。でも日本の大学生にも負けないくらい、海外で頑張っている選手がたくさんいて、そういった選手のプレーを日本で見られないのはすごくもったいないなという風に感じたからです。最後は本当に日本の大学生も含めて、海外の選手たちもぜひやりたいという風に言ってくれて。日本のアイスホッケー界を俺らで盛り上げるという強い気持ちが選手たちからもすごく感じられたので、最終的に決断したのはやっぱりそこだったかなと思います」

 

――アイスホッケーを初めて見る方とかもいると思うんですけど、特に注目の選手をお願いします。

 「難しいですね(笑)。でも海外チームだと、佐藤優選手(Torpedo Nizhny Novgorod)はまず絶対に挙げたい一人で、彼は11歳くらいの時からロシアに留学して、その後フィンランドやアメリカ、カナダで本当にいろいろなところに渡っていました。日本にはいないプレーヤーというか、海外仕込みのプレーヤーという風に一番感じるのはおそらく彼です。それに続くというか、引けを取らないのが榛澤力選手(Sacred Heart Univ.)と安藤優作選手(New Mexico Ice Wolves)。榛澤選手は日本代表にも入って活躍もしていますし、しかもまだアメリカの大学で1年生が終わったばかりで、これからあと3年あるって考えると、本当にとんでもないなという風に感じています。安藤選手は世代のトップを走ってきた選手で、U―18、U―20日本代表でキャプテンを務めて優勝をして、アメリカのジュニアリーグの1部に常に所属していた選手なので、ぜひ見てほしいです。というか僕も見たいぐらいの選手なので、その3人はちょっと別格かなと個人的には思います」 


――明大の選手で注目の選手はいらっしゃいますか。

 「明治は去年のインカレで優勝しているので、必然的に選手が多くて今回、8人くらい入っていると思うんですけど、その中で挙げるとすれば、三浦選手と丸山選手(詳真主将・商4=北海道清水)と井口選手(藍仁・商2=埼玉栄)です。井口選手は僕が一緒にプレーをしたことがあるんですけど、彼のスキルは海外選手に引けを取らないというか、なんなら海外の選手よりすごいぐらいなので、井口選手のスキルに注目したいです。三浦選手はご存知の通りいつも冷静なプレーヤーで、どちらかというとゲームを組み立てるタイプの選手なので、三浦選手が各大学のトッププレーヤーとどのようなプレーをするのか楽しみです。丸山選手は生粋の点取り屋みたいな感じなので、それがどこまで海外チームに通用するかというのはすごい楽しみです」


――今回のイベントが成功した後の展望についてお聞かせください。

 「一つはパッケージ化をしたいというのがあります。今回は愛知で作ったパッケージをもとに東京でいろいろやっているんですけど、東京での開催が成功したら様々な地域。それこそ北海道もそうですし、関西の地域とかでお話をいただいていているので、こういった動画編集のノウハウであったりとかもいろいろ伝えていきたいなという風に思ってますし、各地域の横のつながりを増やしていけたらと考えています。あとはインターン制度です。アイスホッケー界でインターンをやっている人ってそこまで多くないと思うんです。アメリカの大学生は、必ず夏はみんなインターンをするんですよね。それはすごく面白いなというか勉強になりますし、そういったものをGOATを通して経験してほしいです。そういった人材をGOATから輩出して、その人たちが将来のアイスホッケー界に還元していくような有意義なサイクルをつくり出していきたいです」

 

――最後に今回のイベントの見どころと意気込みをお願いします

 「見どころとしましては、普段見ることのできない海外チームの選手と、大学側はトップ大学の選手が集まって一緒にプレーをするということで、非日常的な試合をお届けできるかなと思っています。目標はGOAT Challenge Cupという名前の通り、史上最高と言われるような試合をつくることです。来場した皆さんがまた来たいなとか、またアイスホッケーを見たいなと思ってもらえるように。また、今後のアイスホッケー界に光を当ててくれるような試合にできたらうれしいです」

 

――ありがとうございました。

 

[倉田泰]

※写真はご本人提供


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