(4)Figure Skating Bar「おむすびアクセル」マスター・鎌田英嗣さんインタビュー

 5月に東京都新宿区にオープンしたFigure Skating Bar おむすびアクセル。マスターを務めるのは、明大スケート部フィギュア部門OBの鎌田英嗣さん(令2営卒)。競技を引退し3年がたった現在の鎌田さんに、卒業後のことを中心にお話を伺いました。

 

――おむすびアクセルがグランドオープンを果たし、ご自身の構想が実現している段階にあると思いますが、今はどのような感想をお持ちですか。

 「内装などの構想は満足していて、こんなことが実現できるのは普通ではありえないですしありがたいことでうれしさいっぱいです。どうしたらお客様やスケートファンの方に、お店に入りやすい、と思っていただけるのかを、今後も検討していきたいと考えています。気軽に足を運んでいただけるようなお店になったらうれしいです」

 

――グランドオープンしましたが、お客様と話をしてみていかがですか。

 「話をするタイミングがないくらいお店が混んでいた時は、満足させられたかどうか心配でしたが、スケートの映像も流れていてお客さんもスケートに興味を持とうとして来てくれている方も多いのですごく楽しく今は営業しています。趣味で大人からスケートを始め、ジャンプの跳び方を真剣に聞きに来てくださったお客様がいました。『英さん、お酒どうぞ』と僕にご馳走してくださって。コミュニケーションを取りながら技術に関してのアドバイスを一生懸命させてもらい、メモをたくさん取られて帰られたのですが、その翌日に『ジャンプが跳べるようになった』と連絡をいただいて。そういった、とても楽しくうれしいこともありました」

 

――キスアンドクライはどうして設置しましたか。

 「スケート好きなお客様には絶対喜んでもらえるかなという想いと、知人からのアドバイスもあり、作りました」

 

――選手時代の記憶に残っているキスアンドクライはありますか。

 「全日本選手権のキスアンドクライは毎回豪華だなと思います。ジュニアグランプリシリーズの試合でキスアンドクライに座って手を振っている時、カメラの先に日本人の応援してくれている人がいるとなんとなく想像ができたので、その時のことは心に残っていますね。スロベニアの試合が2回目の海外試合でかなり心細かったのですが、カメラの奥に応援してくれる方がいると思ったら少し元気が出た、そういう思い出があります」

 

――フィギュアスケートをどのように見ると面白くなるか教えていただけますか。

 「ジャンプももちろんフィギュアスケートの醍醐味(だいごみ)ですが、プログラムのつなぎ、4分間の曲の流れの中で強弱そして表現、そういったものを含めた上で一つの作品になるので、そこを楽しんでいただけたらいいなと思います。入口としてはいろいろあると思いますが、単純に選手が美男美女そろっているので『この人はイケメンだ、この人はかわいいな』とかそういうところからでいいと思います。所作がきれいな人、踊りがうまい人、こういうのかっこいいよとか、誰が見てもすごくいい作品だからとか、お店を通じてフィギュアを楽しめるポイントを伝えられたらいいなと思います」

 

――競技経験のある鎌田さんご自身が大会を見るときはどんなところに注目して見ているのですか。

 「曲の強弱に対してどういう表現の仕方をしているかと、ジャンプのポジションやフォーム、スピンとか、いかに美しく魅せられるか、その選手の最大限の魅力を引き出せているかどうかを見ています。見入ってしまいますね(笑)」

 

 (写真:明大スポーツ第490号には、鎌田さんが4年次に東日本学生選手権で優勝した記事が掲載されている)

――卒業後の進路には飲食業界を選びました。

 「学生時代に少し手伝わせてもらったアルバイトが六本木の焼き肉店でした。そのときに飲食の経営ってとても面白いなと興味を持ったことがきっかけで、いろいろな業種を見ましたが最終的に経営を含めて面白いと思える飲食店を選びました」

 

――卒業後、フィギュアスケートとはどのような関わりを持っていますか。

 「健康維持のためのスポーツとしてたまに練習するのと、まだ自分がここまでできるというのをユーチューブに収めていきたいのと、そういった演技ももう少し発信していきたいと思います。今、アイスダンスも始めていますし、アイスダンスでちょっと試合に出るとかも考えますね。アイスショーを運営することも友人たちの間でそういう話もあるので、披露できる場があればうれしいなと思っています」

 

――現役を終えたころと数年たった今とで、ご自身のスケート人生に対する考え方は変わったりしましたか。

 「競技をもっと楽しめばよかったってすごく思っていますね。あの時は一つ一つの試合にすごく自分で自分にプレッシャーをかけていたので、もっと競技自体を楽しんで『こうなったら点数伸びるかな』とか点数が出なかったら出なかったで『ちょっと失敗しちゃったな』くらいでもう少し軽い気持ちでやれたら楽しかったのかなと思います。それを含めて競技の実力の向上とかも踏まえて、フィギュアスケートって競技を楽しむことができればよかったなと思います。結果にとらわれ過ぎないのは大事だなと思いましたね」

 

――鎌田さんご自身がフィギュアスケートをやってきた得たものは何でしょうか。

 「やり切る力ですかね。何としてでも、支えてくれている人や応援してくれている人の気持ちを裏切らないにはやり遂げること、やり抜く力を競技生活中ずっとテーマにやってきました」

 

――フィギュアスケートに対する今の思いを教えていただけますか。

 「自分がフィギュアスケートでとても楽しい人生を送ることができていて、今後、後世にもフィギュアスケートという競技を楽しむ人が増えたらなと思っているので、今後ももっとフィギュアスケートが注目される世の中をつくっていきたいなという思いがあります」

 

――ありがとうございました。

 

[守屋沙弥香]