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(41)シーズン後インタビュー 佐藤伊吹

フィギュアスケート 2023.03.22

 掲げた目標の達成を目指して、今シーズンをひたむきに戦い抜いた。今年度の日本学生氷上競技選手権(以下、インカレ)では20年ぶりにアベック優勝を果たし、チームとしても目覚ましい結果を残した。その中でも、近い将来を見据えながら歩み続ける選手もいれば、今シーズンでスケート競技から引退した選手もいる。それぞれが感じる思いを、選手の言葉を通じてお届けする。 

 

(この取材は3月1日に行われたものです)

 

第11回は佐藤伊吹(政経4=駒場学園)のインタビューです。

 

――競技生活の中で一番いい印象に残っている試合を教えてください。

 「大学3年次の全日本選手権(以下、全日本)です。それまでの全日本で思った通りの演技ができていなかった中で、ようやくいい演技がSP(ショートプログラム)とFS(フリースケーティング)そろえられたという意味で力を出し切れた試合だったので一番いい印象に残っている試合です」

 

――ノービスの時代を振り返っていかがですか。

 「ノービスは全体的にいい印象が私の中には残っていて、花絵先生(横谷花絵コーチ)のもとでジャンプをすごくやっていたから、全日本ノービス選手権でもいい成績が取れたし、単純に楽しく上を目指して頑張っていたので、それはすごくいい印象に残っています」

 

――スケートをやってきた中で挫折はありますか。

 「ジュニアの2、3シーズン目は全然結果が出なくて今思い返すとよく毎日練習してたなと思います。やめたいなとは思わなかったんですけど、やっていて楽しくないし、何よりけっこう自分の限界というか、試合に出てもこれぐらいだろうなというのがすごく見えて感じてしまっていたことがつらかったかなという記憶です」

 

――どうしてやめようとは思わなかったのでしょうか。

 「飽きない、飽き性の逆なんですたぶん。スケート以外に関してもけっこうそうで、なんでもずっとできるタイプだから、そこでやめてもまたたぶんどうせやる、というかやりたいなってすぐ思うだろうし、割と頑張ることは好きだったので、試合より練習が好きって感じだったのでなんとか耐えてたかなという感じです」

 

――シニアに上がって初めて出場した全日本はいかがですか。

 「小さい時から目標の舞台だったから、それだけ大きい試合に出て本当にたくさんの人に見てもらえたということが、そこからの自分のスケートをやっていく上での一番のモチベーションになる試合でもあったので印象に残っています。というのと、自分でそれまですごく頑張ってきて全日本に出られたんですけど、それでも全日本の中ではすごく下の方だったのでまだまだこれからやることはあるし、もっと頑張らなければという意味で悔しさと出られたうれしさというのをどちらも感じた試合でした」

 

――そのシーズンを今振り返っていかがですか。

 「ジュニアからシニアに上がったシーズンでそれまであまり結果が出なかったけど、シニアに上がったことで割と吹っ切れたというかあまり周りや順位を気にせずにシニアのみんなの中に入っていけたからうまく行った部分はあったかなと思っています。今思い返しても毎試合ミスが少なかったし、いい思い出が多いシーズンだなと思います」

 

――大学1年次を振り返っていかがですか。

 「毎日学校に行って毎日学校の合間に朝昼夜練習して、何往復もしていて今考えるとよくできたなと思うのと同時に、対面で行けたのがほぼ1年生だけだったのですごくいろいろな人に会えて楽しかったし、充実してたという感じです」

 

――2年次を振り返っていかがですか。

 「片手で数えられるぐらいでしか学校には行ってないし、スケート場も数カ月閉まっていて、スケート人生で初めてこんなに休んだというぐらい滑ることのできない状況だったから今までにないシーズンというか、そんなに滑らないままシーズンが始まっちゃった感じだったのでそこを調整するのは難しかったと感じました」

 

――氷に乗ることができないことへの不安はありましたか。

 「ありました。ですが、神宮に関してはみんな同じ状況ではあったし、しょうがない状況だったからその時にできることをとりあえず全てやって氷に乗った時どうかは分からないけど、今やれることをやるしかないなという感じだったし、割と私はポジティブだったから平気でした」

 

――リンクが開いて実際に氷に乗ってみていかがでしたか。

 「おもしろい感覚でした(笑)。ああ全然違うなって思ったのと、本当に上達するのはすごく大変だけど下手になるのはめちゃめちゃ早いなって思いました(笑)」

 

――大学3年次を振り返っていかがですか。

 「3年の夏過ぎぐらいからは就活と共にスケートをやっていた感じなので、就活をしながらスケートをしていた時が人生で1番ぐらい忙しいなって思った期間だったので、すごく大変だったけど結果が出たから本当に良かったっていう印象です」

 

――そんな中で結果を出せた理由はありますか。

 「それがけっこう私も分からない部分ではあるんですけど、就活をして視野が広がったというか、自分が知らない世界をいろいろ見たことでスケート一点集中っていうこれまでの十何年だったのが、少し感じが変わったような気がします。スケートに集中するのはすごく大事だけど、それだけではないいろいろな新しいことを知ることがまたスケートにプラスになるということを感じました。逆にいいバランスでスケートと違うことをバランスをとりながらできたのが良かった、それまでのシーズンと違ったことだから良かったかなと思います。でも忙し過ぎてかなりつらかったなって記憶もあります(笑)」

 

――4年生、今シーズンを振り返っていかがですか。

 「考えなくても最後のシーズンだと思ってしまう部分はありました。でも、だからすごく頑張るというよりもこれまでも自分のベストの練習をして本番に臨んできたから同じことをやるだけだなというのと、最後楽しく後悔ないように終わりたかったので、もう十分っていうぐらい練習して試合に臨めたのでそれは後悔なく今終われた結果かなと思います」

 

――全日本はいかがでしたか。

 「終わって悔しい気持ちは強かったです。けど全日本に行く前の練習では結果が本当にどうなっても後悔しないだろうなと思える練習を自分はできたので、後悔もないし悔しかったけどその結果なら受け止めようとけっこうすぐに思えました」

 

――インカレではFSを滑りましたね。

 「FSを滑る機会が最後に、なんとかそのシーズンの全日本の前の試合からいろいろ頑張って結果を出したからインカレにも選んでもらえたので、そこは頑張ってきて良かったな、FS滑れて良かったと思います。最後明治に入ったからこそインカレで終われて良かったなと思いました」

 

――インカレにはこれまでも出場していますが、思い入れは違いますか。

 「違いますね。今シーズンからインカレに出るメンバーが試合ごとにポイントがついてそのポイント順で全日本の結果とかに関係なく出られるとシーズンが始まる前に知った時に、シーズン前の状況を考えたらそのメンバーも含めて考えたら自分は到底インカレにはまだ遠い位置にいると思っていました。シーズン当初から考えたら出られるとは思ってなかった試合にこうやって最後出ることができて引退できたというのが一番うれしかったので、やっぱり諦めないでやってよかったなっていうのを一番感じたのが今シーズンでした」

 

――最後全日本とインカレは有観客でしたね。

 「うれしかったです。ブロック(東京選手権)とかもまだ無観客なんだって私は思ったんですけど、滑る前の出ていく時の拍手や歓声が一番背中を押してもらえるとこの2、3年で思ったので、それを感じながら最後滑る時にリンクに立てたのは幸せだったと思います」

 

――大学に入って一番の思い出を教えてください。

 「スケートに限らず言ったら、1年の時に週5回毎日ほぼずっと学校に行っていたことが今考えてもすごいなと思います(笑)。本当に大学生って忙しいんだなと思った記憶が強いです。でも楽しかったです。小中高大の中で大学が一番楽しかったなと思うのは1年生の頃があったからだと思うので、その毎日が楽しかったです」

 

――明大に入って過ごした4年間を振り返っていかがですか。

 「明治に入ってよかったです。それは二つあって、一つはいろいろな人と会えたことです。明治に入って他のスポーツも強い中で、スケートも勉強もどちらも頑張れる環境にあって4年間やり切ることができました。もう一つはスケート部、フィギュア部門が強い選手の集まりだったことです。その中でいかに結果を出すか、インカレの優勝に向けて自分がどう貢献するか、できるかということで、強い人たちの中でなんとか自分もその力、その人たちに引っ張りあげてもらいながら頑張れました。明治に入ったからこそ『インカレに向けて』とか『みんなで全日本に出る』とかそういったことを目標に頑張り続けられたなと思います。勉強との両立の面と、スケート部がすごく強かったという二つから明治で楽しかったし成長できたかなと思いました」

 

――これまで関わった明大の先輩や後輩たちはどんな存在でしたか。

 「先輩のスケートのことだけでなく勉強のことも頑張ることとか、スケートも本気で練習するという姿を見て私も明治に入りたいと思ったので、それはすごくお手本になる存在でした。後輩に関しては学部が同じ後輩だったら授業の部分を助け合うこともありましたし、先輩後輩関係なく上手な選手がそろっているのが明治大学だと思っているので、合宿とかも勉強になる点がたくさんあったし、それがすごく良かった4年間だなと思います」

 

――フィギュア部門での一番の思い出を教えてください。

 「明治合宿のリレーです。明治合宿はトレーニングの後にリレーをするのですが、この前の合宿のOBの方なども入ってやったリレーがすごく楽しかったので思い出に残っています。(みなさん足は速いですか)速いです。負けた方は罰ゲームをするので、それも含めて面白かったです」

 

――今もスケートは好きですか。

 「好きです。やっぱりおもしろいなと思うし、やることが尽きないなと思います。技術だけでなくて表現も重視する二面あるのがおもしろいし、いいなと思います」

 

――ファンの方へのメッセージをお願いします。

 「これまで見てくださって、応援してくださって、とても感謝しています。最後の演技を終えた時、17年フィギュアスケートに全てを懸けてきて本当に良かったと思えました。これから別の道でも頑張っていきます。本当にありがとうございました」

 

――ありがとうございました。

 

[堀純菜]

 

(写真は本人提供)


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