
(36)シーズン後インタビュー 岩永詩織
掲げた目標の達成を目指して、今シーズンをひたむきに戦い抜いた。今年度の日本学生氷上競技選手権では20年ぶりにアベック優勝を果たし、チームとしても目覚ましい結果を残した。その中でも、近い将来を見据えながら歩み続ける選手もいれば、今シーズンでスケート競技から引退した選手もいる。それぞれが感じる思いを、選手の言葉を通じてお届けする。
(この取材は3月2日に行われたものです)
第6回は岩永詩織(営4=明大中野八王子)のインタビューです。
――明治法政on ICEを終えた今の心境はいかがですか。
「昨年度も滑らせていただいてはいたのですが、前は現役生として滑らせてもらったので全く気持ちは違うなという感じです。お客さんもたくさん来てくださっていて、お客さんの前で滑るというのはここ何年もできていなかったので最後の引退の場を温かく見守っていただけたことがとてもうれしかったです」
――今シーズンを振り返っていかがですか。
「東日本学生選手権の直前にケガをしてしまっていい演技ができなかったのは悔しかったのですが、ローカル試合や大学の試合では毎回この試合に出るのは最後だという寂しい思いが強かったです」
――スケート人生全体を振り返っての思いはありますか。
「本当に長い間滑ってきてここまで続けさせてもらったので、たくさんの方にお世話になったなと思っています。試合で結果を出したりはできなかったですが、毎試合、今できることを全力でという思いでやってきました。どんな時も楽しんで滑ることができたのは先生がいたからです。良い時も悪い時も一番近くで見守ってくれたことは感謝してもしきれないです」
――春からスケートを教える仕事に就くとのことですが、教える立場として心がけていることはありますか。
「実は1年前くらいから教えたりしています。それをしていて思うのは、シンプルに物事を伝えてあげた方が良いなということと、スケート以外にも日常生活において必要なことを教えられたらなということです。シンプルに伝えるというのは、複雑なことを言うのではなくポイントで一番大事なことをまず伝えるということで、その方が吸収が良いなと実際に教えていて感じました。日常生活のことについては挨拶をきちんとする、荷物を片付けるなど外に出て恥ずかしくないようにさまざまなことに気を配ることができるような子にしてあげたいと思って、気付いたら少し言うようにしています」
――スケートと学業の両立は大変でしたか。
「朝の4時から練習がある時があったのですが、夜2時くらいに起きて4時から滑って、その後大学に行くという生活が半年から1年くらい続いてそこが少しきつかったですね。他の子も同じ条件だとは思うのですが帰って寝てしまうことが多かったです」
――どのようにして乗り越えてきましたか。
「みんな同じ時間にリンクで練習しているのですが、特に小学生や中学生、高校生は大学生と違って絶対に学校に行かないといけないじゃないですか。授業サボったりできないので、後輩たちの姿を見て『ちゃんとやらなきゃな』と思っていました」
――5歳からスケートを始めたそうですが、これまでの17年間でスケートを辞めたいと思ったことはありますか。
「大学生になってからは落ち着きましたが、中学生、高校生の頃はたくさんありましたね。試合で結果を残せなかったり、滑る時間が長すぎて嫌になったり、先生に怒られた時などそう思いました」
――その中でここまでスケートを続けてこられた原動力は何ですか。
「同じリンクで練習をしている、歳も同じくらいの子が何人かいました。その子たちも先生は違うのですがよく怒られたり『やめる!』と言っていたりしたのですが、今までみんなで続けてこられました。みんながいるからリンクに行こうと思えて、遊びに行っているような感覚の時期もあったので本当に大切な存在です。コロナでリンクが閉まっていた間も一緒にお散歩に行ったりちょくちょく会ったりしていました。みんながいたから長く続けてこられたなと思います。」
――小川菜(文4=新潟南)さんとはどのような交流がありましたか。
「菜ちゃんが自分と同じコーチになったのが去年とかで、正直それまでは、会ったらすごく話しますが、練習の場所が違うのであまり会うことがなくて寂しかったです。今は私の実家から歩いて10分くらいのところで菜ちゃんが一人暮らしをしているので、何かあったらお互いにすぐに連絡をして、日用品の買い物を一緒に行ったり、ご飯を一緒に食べたり、スケートのことだけでなくいろいろとお世話になっている感じです」
――同期の4年生とはどのような交流がありましたか。
「カテゴリーが違ったり練習するリンクが違ったりするのであまり頻繁には会えないのですが、会った途端におしゃべりが止まらないです。みんなすごく真面目でたくさん練習をしているのも知っているので、自分も頑張ろうとモチベーションにもなります」
――スケートから得たもの、自分の人生に生かしたいことはありますか。
「飽きっぽいので、ここまで長く続けられたものがあまりないので、やろうと思えばしっかり続けられるのだなと自信になりました。諦めなければ良いことがあるというのは今後に生かせたらいいなと思います」
――スケートは岩永さんにとってどのような存在でしたか。
「小さい頃から家が近いこともありリンクにいる時間や先生といる時間が多かったです。スケート以外のことはあまり長く続けてこられていないので本当に好きなことに出会えて良かったです」
――お世話になった方への思い、メッセージをお願いします。
「小さい頃から本当にたくさんの方にお世話になりました。いろいろな場面で、スケートをやっていて良かったと思えるところがたくさんありました。これからは周りにいる方々やお世話になった方に少しでも恩返しができるようにさまざまな面で頑張っていきたいと思います」
――ありがとうございました。
[布袋和音]
(写真は本人提供)
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