特集記事
SPECIAL

(26)全日本選手権直前インタビュー 大島光翔

フィギュアスケート 2022.12.18

 いよいよ冬の大一番、全日本選手権(以下、全日本)が開幕する。最高の演技を目指し日々練習を重ねる選手たちに懸ける思いを伺った。大舞台でそれぞれの熱い思いを表現し、今年度一番の感動を届ける。

(このインタビューは12月14日に行われたものです)


第4回は大島光翔(政経2=立教新座)のインタビューです。

 

――全日本開幕が近づいてきていますが、率直にどのようなことを思っていますか。
 「今年1年、自分なりに練習を一生懸命に頑張ってきて、あとは残り1週間詰めるだけ詰めて本番やるだけだと思うので、ポジティブな気持ちで挑もうという感じです」

――今シーズンの感触としてはいかがですか。
 「正直、昨シーズンと変わった点と言われると、少し伸び悩んでいる部分があるのですが、昨シーズンよりいい点数が出せていることについては自分にとっていいことだと思います。SP(ショートプログラム)のミスが少ないのが今シーズン自信を持っていることではあります」

――安定して跳べているジャンプ、逆にうまく跳べていないジャンプはありますか。
 「ジャンプでの不安要素でいうと、一つ一つのジャンプの完成度が上がってこなくて自分の中でもちょっとした不安要素ではありますが、どのジャンプも確率は良くなっていて、特に3回転ルッツと3回転トーループのコンビネーションは今シーズン確率がとてもいいと思っているので、そこは自信を持っているかなと思います。トリプルアクセルも含めて、質を上げる練習を今シーズン特にしてきたので、着氷した時の質は昨シーズンに比べて多く加点をもらえているのかなと思います」

――着氷後のバランスが崩れたり流れが止まったりする原因で思い当たることはありますか。
 
 「東日本選手権(以下、東日本)でいうと、すごく緊張していると降りなければいけないというのが頭の中で先行してしまって、自分が萎縮してしまったときにあのような降り方になってしまうので、思い切っていかなければいけないなと学びました」

――今シーズン、コンディションが良くない時期はありましたか。
 「正直、昨シーズンの終わりくらいから調子が悪いジャンプもあって、自分の中で昨シーズンに比べて、自分の跳び方を取り戻せていないと言いますか、自分の跳び方を失ってしまっている部分がありました。ですが、過去の自分にとらわれず新しい自分だと思ってそこは受け入れて、その跳び方に適応した跳び方を模索して、今シーズンは今シーズンなりにいいジャンプを跳べたらなと思っています」

――跳び方が変化したタイミングはいつ頃ですか。
 「明確なタイミングは思い当たらないのですが、昨シーズンはアクセルを軽く跳ぶことができていたのに、今シーズンのアクセルはどうしても肩や全身に力が入ってしまって自分の思うような幅や高さが出せていなかったので、そこの部分では去年とのギャップを感じていました。ですが、それに徐々に適応していってその跳び方の中で修正点を見つけることができているので、それほど問題視はせずにやっています。数をこなして自分の体にたたき込むような感じで、感覚的に跳べるようになるまで跳びまくりました」

――東日本が終わってから全日本に向けてどのような練習をしてきましたか。
 「SPは良かったのですがFS(フリースケーティング)で多くのミスが出てしまったので東日本の後はFSを重点的に練習するようにしていて、特に後半のジャンプでミスが出ないように、後半まで体力や集中力を切らさずにできるようにやってきました。SPの回数を減らして、曲かけの時間はほとんどFSに費やすようにして、一つ一つの動きにストレスがないように自分の中に染み込ませるような感じで練習してきました」

――東日本が始まる前のコンディションや緊張具合はいかがでしたか。
 「SPもFSも過去最大くらいの緊張感とともに滑っていました。SPであれだけうまく滑ることができたのは自分でもびっくりという感じで。想定していたよりもうまくまとめられてノーミスで75点台で自己ベストを出すこともできて。FSでは初めて最終滑走を滑ったので、その部分でも緊張やプレッシャーがあって、気付かないうちに歯車が狂ってしまっていたと思っていて、終わってみた時に全体的に演技が崩れていたので悔しくて心残りではありましたね」

――SPで自己ベストを出せたことはうれしかったですか。
 「昨シーズン、ノーミスできた回数が少なかったので、今シーズンは2戦目でSPノーミスをできて自信につながったかなと思います」

――東日本の演技を振り返ってみていかがですか。
 「SPは緊張した中でも一つ一つのエレメンツに冷静に取り組んでいたというのがあって、それがノーミスにつながったのはあると思います。FSは決めに行き過ぎたことがミスの一つの原因だと思うので、ノーミスしたい気持ちが先走って体がこわばってしまって一つ一つのエレメンツが自分の思うような出来にはならなかったかなと感じています」

――FSの演技後、昨シーズンにもおっしゃっていた本番で練習の力が出せないということは感じていましたか。
 「もちろん本番で練習したことが出せないことも悔しさにありました。それに加えて、東日本で優勝という経験を今までしたことがなかったのですが、優勝したにもかかわらず情けない出来で優勝したことが心残りでそこに一番悔しさを感じていたと思います」

――コーチからは何と声を掛けてもらったのですか。
 「『これが全日本じゃなくて良かったな。まだまだ改善していかないといけないところがあるから練習して改善していくしかないね』と言われました」

――同じリンクで練習する佐藤駿選手(政経1=埼玉栄)がグランプリファイナル(以下、GPファイナル)から帰国した後にリンクで会ったりはしましたか。
 
 「空港から帰ってすぐくらいに、一緒にサウナに行こうとなって。帰国した日に会っています。彼が海外で活躍しているのを見て、改めてすごいなと感じています」

――イギリス大会、フィンランド大会の時も帰国後に会いましたか。
 「イギリスの時も帰ってきたその日に会っていますね(笑)。家の距離もそれほど遠くないので『今日、何時に帰ってくるの?』から始めて『何時に帰るよ』と返ってきて『じゃあ何時に家の近くおるわ』と言って、そこから2人で遊びに行く感じです」

――大会の話を聞いたりはしたのですか。
 「彼が海外にいても、上尾の男の子みんな仲良しなので、グループLINEがあってそこでずっと話したり電話したりゲームしたりしていて、海外にいてもずっと話したりはしているので、帰ってきた感じも行ってきた感じもそれほどないと言いますか(笑)。そういえば久々だなという感じです。いつも通りの日常的な会話をしている感じですね」

――大会に行く前は特別に送り出したりしましたか。
 「今回、GPファイナルに行く前、出発する日に空港に行く前に会って『向こうに行ったらおいしいラーメンと米が食べられないから絶対ここで食べていきな』と言って、おいしいみそラーメンのところに連れて行って食べさせてあげたりいろいろして。帰ってきてからもラーメン食べて、そんな感じです(笑)」

――佐藤駿選手と2人で神宮球場に野球を見に行った話を耳にしました。
 「自分の友達が硬式野球部にいて、試合で投げると聞いていたので駿と2人で見に行きました。東京六大学秋季リーグ戦を2戦見に行ったのですが、僕が行った2戦だけ(明大が)負けるという。明治は秋季リーグ戦で2敗しかしていないのですが、僕が行った時だけ負けていて。新葉ちゃん(樋口新葉・商4=開智日本橋学園)から来ないでと言われました(笑)」

――ご友人にフィギュアスケートを見に来てと声を掛けたりするのですか。
  「しないと言えばしないのですが、今回SPは地上波の時間で滑ることができるので、それは『見たい』とみんな言っているので、何日の何時くらいからやるよと言ってはあります」

 

――サッカーW杯は見ていましたか。
  「見ていますね。けっこうサッカーが好きなのでゴリゴリに見ている人みたいな感じだと思います。みんなで集まって見ていますね。上尾の子たちだったり、山隈主将(山隈太一朗・営4=芦屋国際)、本田太一くんなど、家にいろいろな人が来るので呼べるだけ呼んで来られるだけ来て楽しくやっています」

 ――今年の始めに掲げた目標を教えてください。
  「全日本で12番以内に入って強化選手に入るというのを目標としてやってきました。強化選手に入るためには難しいことをいかにやるかではなく、どれだけミスのない演技が本番でできるかだと思うので、それを目標にしてミスのない演技をすることを心掛けて毎日練習してきました。強化選手になることで、強化選手のみんなと練習する機会もありますし、それによって同年代の子たちと切磋琢磨(せっさたくま)できるので、そこを一つの目標として大きく掲げています」

 ――SPではどのような演技を見せたいですか。
  「SPは盛り上がる曲調で、今年2年目ということで滑り込んでいるプログラムで自信をもって披露できるかなと思います。今シーズン初めての有観客ということで、お客さんがいて成り立つような盛り上がるプログラムなので、いかにお客さんに楽しんでもらえるか、そして自分がいかに楽しんで滑れるかが大事かなと思っています。プログラム全体を通して盛り上げていって、後半になるにつれ激しくなっていって最後ステップのところで一番盛り上がっていただけたらなと思います」

 ――FSではどのような演技を見せたいですか。

 「FSのミスの数が自分の成績に大きく関わってくると思うので、とにかくまずはジャンプでミスをしないことを目標にやっていくので、しっかり最後までジャンプを決めるというのをお見せしたいです。ジャンプが終わった後にコレオステップがあるので、そこでいかに自分の表現したい『トップ・ガン』をできるかだと思うので、そこは観客の皆さんとも滑れたらなと思います」

 ――FSでは4回転ルッツを跳ぶ予定でいますか。
  「予定では跳びます。練習で組み込んでやっていますが、やはりミスをしない演技が重要だと思っているので、会場に行ってからの調子など自分と相談して決めたいなと思っています」

 ――ご自身にとって全日本はどのような舞台ですか。
  「カテゴリーは違いますが髙橋大輔選手(関西大学KFSC)も出場されるので、髙橋大輔選手と同じ試合に出られるのが自分の中の一番の楽しみで、モチベーションでもあるので、自分へのご褒美の大会だと思って全力で楽しみたいと思います。過去2回全日本に出ましたが、空気感から何から何まで他の試合とは全く別物で、全日本でしか味わえない緊張感や幸福感があるので、やはり全力で楽しみたいのが一番にありますね。(髙橋大輔選手への思いはやはりすごいですね)そうですね、今シーズン、RD(リズムダンス)えげつないので、同じ試合に出られるのはやはり訳が違いますね。ずっとテレビで見ていた人と同じ試合に出られるのはもう不思議で不思議で」

 ――シニアとして挑む全日本ですが、その点についてはいかがですか。
  「去年まではジュニアで出ていて、ジュニアの強化選手ではあったので、そこの部分で全日本は順位を気にせず100パーセント楽しみにいっていたのですが、今シーズンからは12番以内に入らないと強化選手に入れないので、楽しむ場でもあり勝負の場でもあると思っています。今シーズンの集大成ではないですが一番大きな舞台で一番いい演技をできないといけないと思っているので、シニアとして東日本チャンピオンとして堂々とした演技ができたらなと思っています」

 ――全日本での目標を教えてください。
  「自己ベストで12位以内です。どんどん成長していかないといけない中で立ち止まっている時間はなくて、過去の自分の点数を更新したいので、SPもFSもそろえて自己ベストを更新するのがまず目標で、それをした上で12位以内を達成できたらなと思っています」

 ――ファンの方々に向けてメッセージをお願いします。
  「今シーズン最初の有観客ということで、お客さんの前に出られることを楽しみにしています。お客さまも自分も120パーセント楽しめる演技ができたらなと思っているので応援よろしくお願いします」

 ――ありがとうございました。

 

[守屋沙弥香]

 

(写真は本人提供)


関連記事 RELATED ENTRIES