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明スポ独占 フィンランド大会事後インタビュー 佐藤駿

フィギュアスケート 2022.12.07

 佐藤駿(政経1=埼玉栄)は先月25日から3日間にわたって行われたグランプリシリーズ(以下、GP)第6戦フィンランド大会に出場。初日のSP(ショートプログラム)では3位につけ、FS(フリースケーティング)で自己ベストを更新し総合2位で表彰台にのぼった。第4戦イギリス大会の結果と合わせ、GPの獲得ポイント上位6人のみが参加することのできるグランプリファイナル(以下、GPファイナル)出場を決めた。

帰国後、明スポ独占でインタビューを行った様子をお届けします。

 

(この取材は12月2日に行われたものです)

 

――楽しみにしていたサウナには行きましたか。

 「行きました。チームリーダーの方がサウナ好きで、試合が終わった後にしっかりとした施設に連れて行ってくれてとても良かったです。サウナで温まってから近くの海に入ったのですが、フィンランドは日本よりずっと寒くて気温がマイナスとかだったので本当に寒かったです(笑)。今までにないような経験ができて、過去一楽しいGPでした。最高でした」

 

――フィンランドの印象を教えてください。

 「フィンランドは、フィギュアスケートがメジャーな国なのかなと思いました。ホテルのすぐ近くに屋外リンクがあって、滑っている人がみんな上手だったんです。体育の授業でも取り組むくらいスケートは人気だと聞きましたし、リンクの数がヘルシンキだけでも20、30個くらいあるので日本とは違うなと思いましたね。会場の練習用のリンクも3個くらいありました」

 

――ご飯はおいしかったですか。

 「イギリスよりはおいしかったです。でも晩ご飯に出たハンバーグみたいなものがいつもと全く味が違っていて、おいしくないわけではないけれど、微妙という感じでした(笑)。そんなにたくさんは食べられなかったのですが、全然イギリスよりはおいしく食べられました」                                               

 

――イギリス大会では時差に悩まされたとのことですが今大会はいかがでしたか。

 「今回は7時間くらい時差があったのですが、日本でしっかり調整してから行ったので、フィンランドに行ってから時差ボケになることはなかったです。イギリスの時は時差ボケで眠くてあまり思うようにいかなかったのですが、今回は昼寝をしてから試合に臨むといういつもの流れで持っていくことができました」

 

――イタリア・トリノはジュニアグランプリファイナル(以下、JGPF)で優勝した舞台ですが、思い入れはありますか。

 「またJGPFの時の会場に戻れるのはすごくうれしいことなので、前回のグランプリファイナルの時よりもさらにいいものが出せればと思っています」

 

――JGPF以来3年ぶりの自己ベスト更新。これまで当時の点数を『超えなければ』という思いはありましたか。

 「昨シーズンはかなりずっと思っていましたね。FSでジュニアの点数を超えていないなと思っていたのですが、なかなか超えることができずにいました。一応昨シーズン最初の方で非公式ですが179点でぎりぎり超えることはできましたが、ずっと目標にしていた180点台には届いていなかったので、今大会で180点台を出すことができて、やっと超えることができたなというのが率直な感想です。今後はさらに190点を目標にしていこうと思っています」

 

――ケガをしてから氷に乗れない期間が続く中で不安や苦しかったことなど多くあったと思いますが、いかがですか。

 「ケガをしてから3カ月くらい練習できない時期があったり、ジャンプがあまり跳べなかったり戻らなかったりした時期がかなりありました。お医者さんのほうから『ジャンプもう跳んでいいよ』と言われてからも、結構何カ月かジャンプを跳べない時期が続いて、本当にシーズンに間に合うのかという感じでした。でも、今はしっかり試合に合わせていくことができて、ルッツも跳べて最低限の4回転を跳ぶことができているので、良かったなと思っています」

 

――ケガから復帰のシーズンですが『GPファイナル出場』といった大きな目標を掲げる上での不安はありましたか。

 「ケガ明けの時とかは思いましたが、シーズン初戦の試合が終わってからは全くマイナスなことは考えていなくて、今の状態から上げていくだけかなとずっと思っていました。イギリス大会もフィンランド大会も自分の出せるスケートを出し切ろうと思って頑張ったので、緊張することなく自分のしたいスケートを滑り切ることができたと思っています。GPファイナルも『行けたらいいな』くらいの感覚で臨めたので、逆にそれが良かったのかもしれないです」

 

――GPファイナルを意識しすぎないメンタルの持ち方に佐藤選手の強さがあるような気がします。

 「個人的には本番に強いとは思わないですが、今回の大会に関しては自分でも一皮むけたかなと、自分自身を超えることができたかなと思っています。おそらく昨シーズンとかだとプレッシャーにやられていい演技ができていなかったと思うのですが、今シーズンは気持ちがすごく楽でとても落ち着いて試合に臨めたので、メンタル面が昨シーズンに比べたら成長したのかなと思います」

 

――ケガがあったからこそ成長した部分や得たものはありますか。

 「ケガをしてからジャンプ以外のことをたくさんやるようになったのもあって、昨シーズンに比べてスケーティングの面ではよくなったのかなと思います。あとはケガがありながらもここまで持ってくることができたのはかなりメンタルの部分ですごく成長できたのかなというところもあります。ケガのおかげというわけではないですが、すごくメンタル面では強くなったかなと思います」

 

――メンタルが強くなった要因はありますか。

 「先月からメンタルトレーニングを取り入れたことですかね。トレーニングセンターの方が無料でやってくれるのですが、試合前の気持ちの持っていき方を先生が教えてくれるという感じです。そのおかげもあってかなり気持ちの面で楽になりました」

 

――SPの演技を振り返っていかがですか。

 「SPはいつも自分の中で課題にしているのですが、今回もあまりいい演技とは言えないと思っていて、ルッツを決め切ることが課題かなと思っています。ファイナルではイギリス大会とフィンランド大会のミスを引きずらずにしっかりとノーミスの演技をできるように、まずはSPから頑張っていかなくてはいけないと思っています」

 

――FSの演技を振り返っていかがですか。

 「最初のルッツは、フィンランドに行ってから一番いいジャンプが跳べたかなと思っています。あとはしっかりとそこから崩れずに4回転トーループの連続ジャンプを決めることができましたし、大きなミスなく最後まで終えることができたのは良かったかなと思っています。悪かったこととしては、スピンとステップのレベルを落としている部分があったことですね。すごくもったいないので、しっかりとレベル4を取っていきたいと思います。また演技構成点もそうですし、スケーティングスキルなども上げていければなと思っています」

 

――FSの好演技の要因は何でしょうか。

 「サウナとかでリラックスしてから試合に臨めたのが本当に良かったかなと思っています。いい意味で試合という感じがしなくて、試合前もリラックスしていたので『これ、いけるな』という感覚が自分の中でありました。そこがいい演技ができた要因かなと思っています」

 

――FSは練習の時からノーミスはよくありましたか。

 「そうですね。しょっちゅうではないですが練習でも何回もノーミスの演技はしていました。でも本番では何かしら大きいミスが出てしまうというのが続いていたので、今回はしっかりと練習通りの演技をようやくすることができて、そのことが一番うれしかったですね」

 

――練習での4回転ルッツの調子はいかがでしたか。

 「正直あまり良いとは言い切れないような状態でした。向こうに行ってから最初の公式練習ではルッツをやらなかったですし、6分間練習でもステップアウトとかが多くて調子が良いとは言い切れない状況ではあったのですが、本番で一番いいルッツを跳ぶことができたので、そこは成長している部分かなと感じましたね」

 

――イギリス大会のSPの4回転ルッツがTESカウンターで3回転ルッツと表記されていたのはご存じですか。

 「聞きました(笑)。それだけ3回転ルッツと思ってもらえるようないいジャンプが出せたのかなと思うので、逆にポジティブに捉えて、もっと軽いジャンプが跳べればいいなと思います」

 

――試合後のインタビューでは涙も見られましたがその時はどのような感情でしたか。

 「ほっとした思いが強かったです。あとは、GPファイナルに行くことを今シーズンの一つの大きな目標に挙げていたので、その大きな目標を達成できて純粋にうれしかったという感じです」

 

――試合後は、佐藤選手よりも日下匡力コーチの方が喜びを見せていたように思います。

 「いつも僕よりも感情が爆発していて、試合の時は先生の方が緊張していたりするので、逆に緊張がほぐれたりします。今回はいつになく喜んでいて、僕もうれしかったですね」

 

――試合後はコーチからどのような言葉を掛けてもらいましたか。

 「『本当によくやったよ』と言われました。『ここまで長かったけど、しっかりここでノーミスの演技ができたから次につながると思う。次のGPファイナルでも頑張ろう』と言ってくれました」

 

――イリヤ・マリニン選手(米国)と抱擁する場面も見られましたが、海外の選手との交流はありましたか。

 「今回は交流する機会が割と多かったです。海外の選手からもたくさん『おめでとう』と言ってもらったり優しい言葉を掛けてもらったりして、皆さんすごく暖かかったですね。マリニン選手とは一緒にファイナルに行けることが決まったので、向こうの方から『GPファイナルおめでとう』と言ってきてくれて、『また2週間後会おうね』という話をしました」

 

――シニアでは初のGPファイナル。楽しみなことはありますか。

 「日本から男子4人も出られるということで、すごく楽しみなGPファイナルになるかなと思っています。全日本選手権(以下、全日本)の前の試合という感じではありますが、しっかりとそこで勝っていければいいなと思います」

 

――GPファイナルに向けて、現在の調子はいかがですか。

 「正直あまり疲れが取れていなくて、練習でもそんなにすごい調子がいいわけではないです。イタリアに着いてから試合まではかなりの期間があるので、その間でしっかり調子を戻して、それからしっかり休んで試合に臨みたいです。連戦で大変ではありますが、試合がないよりはある方が全然いいです。GPファイナルから全日本までもあまり時間はないのですが、逆にいい調子のまま全日本に向かえるかなと思うので、ポジティブに捉えていければなと思っています」

 

――GPファイナルではどんな演技をしたいですか。

 「課題としているSPからいい演技をして、上位に食い込んでいけるように頑張りたいと思っています。SP、FSの合計で自己ベストを更新したいですね」

 

――ありがとうございました。

 

[布袋和音]


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