

ダンスは学生スポーツになるのか? ④Dリーグ・神田氏から若者たちへのメッセージ /NEW WAVE ~学生スポーツへの可能性~(1)
ダンスは果たして学生スポーツになる可能性があるのか?今回は『世界中すべての人に、ダンスがある人生をもたらす』をミッションに掲げ、10月2日より第3シーズンが開幕したD.LEAGUE(以下、Dリーグ)を開催する株式会社Dリーグ・代表取締役COOの神田勘太朗氏(法卒)に取材を行った。
第4弾は取材の中で神田氏からいただいたメッセージをインタビュー形式で紹介する。
※写真はすべて株式会社Dリーグ提供。なお、この取材は9月13日に行われたものです。
――大学でダンスをしていくとなると学問と両立していかなければいけない現実があります。ダンスは幼い頃からそれ1本でやっていくイメージがありますが、そういう方が多いのでしょうか。
「多いは多いですが、大学からダンスを始めても圧倒的にうまくなる方もいます。自分は他の会社でもダンス大会を開催していまして、大学の部門で審判をしている方に聞いたら『自分は大学生の時に始めて、国技館のステージに立つくらい練習しまくった』と言っているんです。その人は今やもうプロとして活躍しています。なので、歴の長さよりも密度の問題だと思いますね。1日2時間くらいを週に2回、それを10年よりも1日10時間を365日で2年間練習する方が早いんですよ。要するに環境の置き方だと思うので、大学生からというのがそんなに不利に働くとは思わないですね。何かあると歴とかで逃げちゃう人もいると思うんです。でも、すごい人はあっという間に習得していきますから。何かを捨てて集中した人しかもらえないギフトだと思っています。どうしても大学生だと遊んでしまうじゃないですか。でも、それらを全て捨てて集中している子もいて、そのような子は他のことをしてもしっかりしていると思います。大人になればなるほど堕落していく自分の気持ちを、奮い立たせて目標に向かって愚直に進むこと。このように人間のシンプルな本筋を捉える人は、どの道どこでも成功できると思います」
――これは、ダンスに限らない話に聞こえますが。
「(ダンスに)限らず、ですね。ついつい友人に誘われたら飲みに行くじゃないですか。僕はやりたいことが明確にあったので、流されないタイプでした。しなくていいやの1日、あるいは数時間が1年で考えるとまあまあな時間になる、その分集中していれば誰よりも差がつきます。僕よりもすごい経営者を越えるには睡眠時間を削ってでもやるしかないです。大体の人は睡眠や遊びの時間を削らないようにしていると思っています。でも、同じようなことをしようとしたら抜けるはずがないじゃないですか。誰かを抜くには何かを捨てないといけないので、そのような当たり前のことをやる意志の強さですよね。心が折れるのが普通だと思っています。ただ高みを目指していると折れないので、高みをどこまで目指しているのかの濃度です。絶対世界一を取ると決めたら、取るために何をしたらいいのかを考えなければいけない。口で言っていることとやっていることが違う人がほとんどです。結果を出している人は愚直に掲げた目標に向かってやっているだけな気がすると、大人になればなるほど周りと比べて気付きます」
今回取材を受けてくださった株式会社Dリーグ・代表取締役COOの神田勘太朗氏
「僕、明大の時に会社の前身となる個人事業を設立しているんです。周りが就活する中で僕は起業しました。就職が決まっていた人たちは、そこの会社のこれがやりたいということで就職したのではなく、『大手で安定したい』や『親を安心させたい』など、目的が僕からすると不純に見えてしまいました。でも、彼らからすると〝安定=幸せ〟のような形に持っていったのだと思います。ただ、やりたいことは別にあるはずなのに、そうやって就職されていたので『それ嫌だな、俺ダンスで生きていきたいから会社作るわ』と言って、経営者になりました。その時は学生で起業みたいなのはあまりなかったので、まず個人事業主からスタートすることにしたんです。卒業した2ヶ月後に、個人事業主から会社へ登記しました。周りからすると(起業は)リスクだったと思います。ただ、僕からすると周りの方がリスクだった。『そんな大きな会社入って何すんの』と聞いたら『ない』。そもそも遊ぶことや休むことしか考えてなくて、入れたからラッキーくらいにしか思っていなかった。今Dリーグにいる社員の人たちは、基本的に強い意志を持ってきているので、就職できたからという理由で入っている人はいないです。ダンスで世界を変えたい、自分が頑張ってダンスを変えたい、などの強い思いで運営しています。自分に課されたことと設定したものをどうクリアするか、高速でPDCAを回しているような形ですね。もちろんその中でも壁がいくつもあるのは当たり前で、その壁をどう突破できるかという悩みは尽きないと思います」
――実際にダンス界とかに入ってみることで、生きていく中で大切なさまざまなものが育まれそうだなと思いました。
「そうですね。スポーツ的、カルチャー的側面などがありますが、社会勉強や人生設計、さまざまなことが含まれている気がします。ただ他の競技でもそうで、やはり精神的に鍛えられている人たちは強いです。一線で活躍している方は他の事業に転換しても一定の結果を出せる人もいるし、スポーツしかやってないから仕事できないでしょと言われてもかなりできたりするんですよね。精神的な支柱もあるのかなと思います」
――ありがとうございました。
この取材では、神田氏が自身の覚悟やこれまでの軌跡を我々学生に伝えてくださった。ダンスを本気で取り組んでいる学生も、それ以外のことで現在努力している学生にも、ぜひこの言葉を心に刻み込んでほしい。
[菊地秋斗]
関連記事 RELATED ENTRIES
-
麻雀は学生スポーツになるのか? ②学生スポーツへの展望と課題 /NEW WAVE ~学生スポーツへの可能性~(4)
明大スポーツ新聞 2022.11.18麻雀は果たして学生スポーツになる可能性があるのか?今回は麻雀のプロスポーツ化を目的に発足し、今年度で5年目となるM.LEAGUE(以下、Mリーグ)を運営している一般社団法人Mリーグ機構・事務局長の畑敦之氏に取材を行った。第2弾は学生スポーツになる可能性についてまとめていく。※この取材は10月28日に行われたものです。 麻雀は果たして学生スポーツになる可能性はあるのか。畑氏は「(学生スポーツに)なる可能性はかなりあるのでは」としつつも「まずはスポーツであるという認識を持ってもらうところから始めなければいけない」と述べている。eスポーツなど、多様な競技がスポーツとなる現代において麻雀もスポーツとして認められる可能性はある。特に、前回の記事で述べたが頭脳スポーツの世界大会が国際オリンピック委員会(IOC)主導で行われるなど、世界的に見ればスポーツ競技化への階段を着実に上がっていることは確かだ。 スポーツになる可能性はあるとはいえ、学生スポーツとして麻雀を行うにあたっては、厳格なルールが絶対に必要だ。主要な麻雀プロ団体でも、偶然要素をできるだけ排除したルールを適用している団体や、ある程度取り入れている団体など、ルールがプロの間でも定まっていない。「学生スポーツとしての麻雀をどう見せたいのかを考え、みんなが納得できる形で(ルールを)制定できるか」がカギになってくる。また、それに付随してレギュレーションも重要だ。学生スポーツではリーグ戦がどの部活でもよくあるが、麻雀も例外ではない。リーグ戦における1部や2部を設けるのであれば、昇降格などは他の部活と同じように制定するべきである。 「大学という大きな抽象的なものに対しては、やはり全体に対しての規律なるものが必要だと思う」。まだまだ『ギャンブル』としてのイメージが付いて回る麻雀において、学生スポーツになるにはしっかりとした組織体系づくりが必須となってくる。まずはスポーツとして認められなければいけないなど課題は山積みだが、体育会麻雀部ができる可能性は決してゼロではない。 (Mリーグ機構主催で開催された夏休み小学生麻雀大会。Mリーグは下の世代への普及も精力的に行っている) [菊地秋斗]READ MORE -
麻雀は学生スポーツになるのか? ①競技としての麻雀の魅力 /NEW WAVE ~学生スポーツへの可能性~(4)
明大スポーツ新聞 2022.11.18麻雀は果たして学生スポーツになる可能性があるのか?今回は麻雀のプロスポーツ化を目的に発足し、今年度で5年目となるM.LEAGUE(以下、Mリーグ)を運営している一般社団法人Mリーグ機構・事務局長の畑敦之氏に取材を行った。第1弾は競技としての麻雀を深掘りする。※この取材は10月28日に行われたものです。 大学生でも親しみを覚えている人は多いであろう麻雀。近年ではインターネットテレビ『ABEMA』でMリーグが放送されるなど、広く一般的に競技が浸透しつつあるのが現状だ。競技としてのイメージが強い麻雀では、主要なプロ団体も五つ存在し、現在では約2000人以上がプロとして活躍している。各団体それぞれで昇降級制度が設けられたり、タイトル戦があったりするなど、日々シビアな勝負が繰り広げられている。 (Mリーグスタジオの風景。Mリーグは各団体からスポンサー企業に選ばれた選手たちが試合を行う) 麻雀がスポーツと結びつくイメージはあまりないが、知力を競い合う『頭脳スポーツ(マインドスポーツ)』として注目を浴びている。頭脳スポーツとは、思考能力や判断能力など、脳を使って行われるスポーツだ。2005年には『国際マインドスポーツ協会(IMSA)』が創設され、2008年には国際オリンピック委員会(IOC)の働きかけで『ワールドマインドスポーツゲームズ(WMSG)』が開催されるなど、スポーツとしての認知が広がりつつある。麻雀は実際に2017年にIMSAに加盟している。相手の捨て牌や自身の手牌を手がかりに、相手の手牌や山(※①)に何が残っているのかなどを予測するなど、頭脳スポーツの中でもかなり高度な思考能力が求められるのは確かだ。 そんな麻雀だが、もともと雀荘でプレーすることが多いため、敷居が高いイメージを持つ人も多い。しかし今はアプリゲームなどでプレーできるため、麻雀をより手軽にたしなむ人が増えているようだ。また、Mリーグなどの視聴ができるコンテンツも増えているため、『見る雀』と呼ばれる層もできている。2021-22シーズンのMリーグの1試合平均視聴数は100万人、さらに「全人口の4パーセントである500万人がMリーグを認知している」(※②)。元々高かった敷居をデジタルコンテンツの駆使によって、確実に低くすることに成功している。こういった進歩から麻雀を知らない人でも気軽に触れることができるようになっているため、興味がある人は触れてみるのも良いだろう。(Mリーグの対局の様子) 麻雀をプレーすることは、今はまだハードルが高いかもしれない。しかしMリーグは「麻雀に興味を持ってくれそうな全年齢層がターゲット」と、さらにここから一般的に認知を拡大させていくようだ。『麻雀=スポーツ』という概念が生まれるのも時間の問題となってくるだろう。 (※①)牌山のこと。競技者はこの山から牌を取ってきて捨てる。(※②)「Mリーグ」に関するアンケート調査結果を発表より引用。 [菊地秋斗]続きはこちらREAD MORE -
ダーツは学生スポーツになるのか? ②学生スポーツへの発展の展望と課題 /NEW WAVE ~学生スポーツへの可能性~(3)
明大スポーツ新聞 2022.11.05ダーツは果たして学生スポーツになる可能性があるのか?今回は競技ダーツの普及に取り組んでいらっしゃる公益社団法人日本ダーツ協会(以下:協会)の萩尾純子会長に取材を行った。 第2弾は、競技ダーツが学生スポーツになる可能性をまとめていく。※この取材は10月7日に行われたものです。 学生スポーツとしての競技ダーツの展望を述べる前に、日本におけるその立ち位置を確認しておきたい。「若い人たちはおしゃれなイメージでダーツをしている。一方で我々の競技会は堅いイメージがある」。試合を行う際のドレスコードなどプレー以外の規定もしっかりしており、カジュアルにできるソフトダーツよりも敷居が高いと思われている。それでも、2013年に東京で行われた国民体育大会では、デモンストレーションスポーツとして種目となった。葛飾区と協力をすることで実現し、大会後も区が推奨スポーツとして競技ダーツに力を入れている。区内では現在10ヶ所でハードダーツが投げられる場所があり、協会主催の大会の協賛のほか、全国規模の大会を誘致し区民にレベルの高いダーツを見せることで技能向上を図る活動もしている。協会と地方自治体がタッグを組む事で、未来のプレーヤーにつながるような取り組みが現在行われている。(公民館でのダーツ講習会の様子) そして、そのさらなる広がりのために、競技ダーツの大学スポーツ化は協会としても重要視している。ダーツと学業の両立をしているような大学生プレーヤーは比較的少ない。そのため、協会は大学の科目にダーツを加え、学生に理解を深めてもらうことを目標としている。「(ダーツを)受講した学生が教員となり、さらに下の世代にスポーツとしてのダーツを伝えていってもらいたい」。この第1歩として、ある大学で新設された健康スポーツ科学部において2年後に科目として新規参入が決定している。「一つ大学で成功を収めれば、その事例をもとに全国に普及していけるよう私たちが努力しなければいけない」。ダーツを取り入れる大学が増えれば、学生の競技ダーツへの関心も高まり、大学スポーツとしての発展も十分に見込めるのではないだろうか。 他にも、大学で行われている地域貢献の点に着目すると、さらにダーツと大学はマッチする。例えば、サークルやゼミでの地域支援活動、子供や高齢者の方との交流会などにおいて「ダーツというツールを使えば、費用もあまりかからず、地域の方たちが世代を超えてプレーできる」。ダーツの『生涯スポーツ』『教育スポーツ』としての魅力は、大学におけるさまざまな活動の幅をも広げる。遊びとしては大学生にとってメジャーなダーツ。しかし、大学スポーツとしての可能性も無限大だ。 [堀之内萌乃] READ MORE