(33)大学生パラリンピアン・川除大輝選手 インタビュー

明大スポーツ新聞
2022.04.28

3月14日に閉幕した北京パラリンピックで一人の大学生が快挙を成し遂げた。クロスカントリースキー男子20キロクラシカル立位で、日本選手団の旗手を務めた川除大輝(日大/日立ソリューションズJSC)が金メダルを獲得。冬季パラリンピックで日本男子金メダリスト最年少記録の更新だけでなく、他種目でも入賞を果たし、まさにパラクロスカントリースキー界の次世代エースとも呼べる川除。そこで今回、明大スポーツは私たちと同じ大学生である川除のことを大学生世代にさらに知ってもらうために北京大会の振り返りや普段の練習、パラスポーツのことについてお話を伺った。

(このインタビューは4月7日にオンラインで行われたものです)

 

――北京パラリンピックが終わってからの反響は大きかったですか。

 「そうですね。終わってから、レースが終わった後もLINEですごい通知がたくさん来ました。その後地元に帰っても大会がありました。参加したら子どもたちからも『メダル見せて』と声を掛けられ、反響があったので注目されていたんだなというのを感じました」

 

――北京の選手村はどのような感じでしたか。

 「選手村は日本の棟があって、クロスカントリースキーとスノーボードが一緒でした。食堂が歩いて5分くらいの所にあり、あとは卓球などもできるような場所もありましたし、VR体験のできる所などゲームができる場所もありました。スポーツをしに行っているけど、楽しめる場所もあったので、快適な場所だなと思いました」

 

――他の国の選手との交流はありましたか。

 「僕はあまり、英語は話せないんですけど、優勝した時は『おめでとう』と言ってもらいました。あとは中国のボランティアの方が日本人と気さくに話してくれる人が多くて、日本語を話せる人が多かったです。『日本のピンバッジをくれるか』なども聞かれたりしていました」

 

――実際に金メダルを獲得された時はどのように思いましたか。

 「ゴール直後はガッツポーズをして喜んでいましたが、本当に優勝したのかなという感じでした。メダルセレモニーの時にメダルをもらい、金メダルを目にしてようやく実感が湧いてきました」

 

――事前の会見で、以前新田佳浩選手(日立ソリューションズ)が旗手をされて自分もその道をたどっていきたいとおしゃっていましたが、今現在はいかがですか。

「この流れでまた4年後、旗手はたぶんもうないですが、主将はあると思うので、そういったところにもし選ばれたとしたら、やはりそれ相応の結果を出さないといけないと思います。でもそこにプレッシャーを感じていても上手くいかなくなったりするので、自分の今までやってきたことを出して、新田選手のようにメダルをたくさん取れる選手になれたらいいなと思います」

 

――普段はどこで練習されていますか。

「普段は日本大学のスキー部に所属しているので、寮周辺だったり、高尾山の山を登ったり、基本東京都内で練習しています。月1回パラリンピックの強化合宿があるので、合間を縫ってそちらに参加して練習しています」

 

――スキー以外で何かスポーツはされたことはありますか。

「小学校に入る前は水泳をやっていましたが、全然今は泳げないです。あと小学3年生の時は半年だけサッカーをやっていて、すぐ辞めてまたスキーに戻ってという感じでやっていました」

 

――ご自身の強みは何だと思いますか。

「上り坂がやはり強みだと思っています。クラシカルだとポールを持っている選手と同じスピードで上っていけることができて、そこがタイムを稼げる場所かなと自分では思っています。下りはポールがないと詰められなくて、タイムが稼げないので、やはり上りが強みかなと思います」

 

――クロスカントリースキーを見る人に注目してほしいところはありますか。

「マラソンと似ている部分がありますが、違うところは雪の上を滑って、自然がきれいなところを進んでいくので、そういうところを注目して見てもらいたいです。パラでいうと、ぱっと見はクラスや計算タイムがあって難しいですが、そのようなところも深く知れば面白いと思うので、知ってもらえたらなと思います」

 

――クロスカントリースキーをやっていて面白いと思うところはありますか。

「長くやっているからだと思いますが、自分が上達していくことがまずはすごく楽しいなと感じています。結果も出るようになってくるのも自分の中では楽しい要因だと思いますが、そこから自然の中を滑るというのも気持ちいいですし、そういったことが楽しいです」

 

――北京が終わった今の目標はありますか。

「次の4年後でも金メダルを取りたいという目標はありますし、あとはワールドカップで総合優勝したいというのも目標です」

 

――若い世代の冬季のパラスポーツ選手があまりいないことについてはいかがですか。

「若い選手があまり出てこない、見つけられないというのがあると思います。そこで下(の世代)が来ないから、上の(世代の)人たちも続けるしかないという状況になっていると思うので、そこは僕たちもできることはやろうと思いますが、普及などが進めばそういうことはなくなっていくだろうと思います」

 

――パラスポーツの魅力を教えてください。

「最大限に体を使ってのパフォーマンスをみんながしているので、こういうこともできるんだというのを見てもらいたいです。あとは他の人たちに勇気をかなり与えられると思うので、そういったところを見てもらえればパラスポーツはもっと面白くなると思います」

 

――今後の意気込みをお願いします。

「スキーはパラリンピックだけではないので、来季はワールドカップもあります。そこに向けてこの1年間しっかり調整して、その流れで4年後に向けてまた金メダルを取れるように頑張りたいと思います」

 

――パラスキー、パラスポーツをこれから始める若い世代に向けてのメッセージをお願いします。

「最初はやはりどの人でも同じだと思いますが、スポーツを楽しむということが大切だと思うので、遊び感覚でいいからまずはやってみるのが大切かなと思います。そこからやりたいことがどんどん見つかっていくと思うので、自分がやりたいことを見つけてやっていってもらえればいいなと思います」

 

――ありがとうございました。

 

[出口千乃、萩原彩水、渡辺悠志郎]

◆川除 大輝(かわよけ・たいき)日大。北京パラリンピックで金メダルを獲得。

※写真は本人提供