(116)古賀友太 世界への歩み
古賀友太(商4=大牟田)。彼が4年間で出した実績は名門・明大競走部の中でも群を抜いている。1年次から頭角を現し2年次に東京五輪補欠選手に選出。3、4年次では多くのタイトルを獲得し、明大だけでなく学生競歩界も牽引(けんいん)してきた。そんな彼が歩んだ、4年間の軌跡を振り返っていく。
「東洋大を倒したい」。その一心で明大の門をたたく。陸上の名門・大牟田高出身ということもあり、大きな期待を受けながら入学し、1年次から早くもチームの主力となった。5月に行われた関東学生対校選手権(以下、関東インカレ)で早速4位入賞という好成績を収めるとそこから着実に成長。3月に行われた全日本競歩能美大会ではチームトップ、学生3位という結果を出しユニバーシアードの出場権も獲得。1年生にして明大はおろか、大学競歩界を牽引する存在としてその名を知らしめた。
順風満帆に見えた古賀だが、2年次の前半はフォームに苦しめられる。関東インカレではベントニー(膝曲がり)と呼ばれる違反によってまさかの失格。上位入賞が確実視されていた古賀の失格は明大2部降格の大きな要因となった。「実力がないことをたたき込まないといけない」(園原健弘総合監督)。日本陸上競技連盟の三浦康二氏を専属コーチに置き、徹底的なフォーム改善が始まる。「(膝曲がりを)直さないと、この先の試合でも失格になる」(古賀)。大学2年にして厳しい現実を突きつけられるも、この挫折が古賀を強くする。「お尻やハムストリングスを鍛えることを意識した」と課題を克服し、確かな実力をつけることができた。7月に行われたユニバーシアードでは3位に。さらに9月の日本学生対校選手権(以下、日本インカレ)では見事1万メートルWにて大学入学以来初のタイトルを獲得した。厳しいトレーニングの成果が生んだ結果だった。さらに古賀の快進撃は続く。五輪選考会が懸かった全日本競歩能美大会で自己ベストを更新。見事東京五輪派遣設定記録を突破した。惜しくも内定とはならなかったものの、大学生ながら男子20キロメートルWの補欠に選ばれるという快挙を成し遂げた。
3年次、世界を見据えた古賀の速さはますます磨きがかかる。日本インカレでは東京五輪内定の池田(東洋大)に次ぐ2位に。だが「うれしさも少しはあるが、悔しさの方が大きい」と悔しさをにじませた。長年のライバルであった東洋大の池田らが卒業した4年次の古賀の強さは圧巻だった。関東インカレで2年次の雪辱を果たし見事優勝。明大の1部復帰に貢献すると、その後の学生個人選手権、日本インカレでも1位を獲得。「トップを取ることにこだわりを持ってやってきた」。他の追随を許さない圧倒的な強さを見せつけた。その強さは競走部全体にも影響している。「何回練習しても改めてレベルの差というのはとても感じる」(濱西諒・文3=履正社)。「古賀は競走部の顔」(石川雅也・法4=新居浜東)。大学ラストイヤーも明大競走部の〝顔〟として活躍し続けた男の歩みが仲間にもたらしたものは大きい。
挫折を経てさらなる強さを身に付けた古賀。だが目標ははるか先だ。東京五輪では補欠止まりだった悔しさから「正代表として世界で活躍したいという思いがより強くなった」。常に歩を進め続ける古賀の今後に注目だ。
[菊地隼人]
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