(63)明大男子の先頭を走ってきた4年間 中野耀司

フィギュアスケート
2020.03.31

 インカレ終了後、明大スケート部(フィギュア部門)主将・中野耀司(営4、横浜創英)は「責任を果たせなかった」と、9位に終わった自身最後のインカレを悔やんだ。それでも4年間インカレの順位は明大内でトップ。明大男子フィギュアをけん引してきた4年間に迫る。


切磋琢磨

 己を磨くために選んだ道だった。明大への進学は高校時代から強く希望していた。しかし、当時の明大は一学年上の梶田健登(平31政経卒)、佐上凌(平31商卒)、鎌田英嗣(営4、獨協)など実力あるスケーターが勢揃い。インカレ出場3枠に入れる保証はなく、周囲から進学を反対された。それでも「明大の中で勝てなければ、インカレでも勝てない」と、反対を押し切り進学。入学後は常に「明治で1番は俺だ」という意識で試合に臨み、己を追い込んできた。そして昨年度のインカレでは個人4位に入賞、団体優勝にも大きく貢献。「切磋琢磨してきたことが実を結んだ瞬間だった」。共に戦ってきた先輩たちと成し得た優勝が、4年間で1番成長できた瞬間と中野は振り返る。

緊張しない

 独特のプレースタイルで試合に挑む。「大会では一切緊張することがない」という中野。きっかけは高校時代に発症した閉所恐怖症だった。「本当に靴を履くのも嫌だった」。発症当時は練習に行かず、練習に行っても何もせず先生に怒られる日々が続いた。そんな時、地元リンクで開かれる『フレンズオンアイスショー』に参加。試合や練習と違った空気感に「スケート楽しいなと改めて感じて、少しずつ気持ちが戻っていった」。そしてその日を境に中野は一切緊張をしなくなったという。

 それは諸刃の剣でもあった。「試合のピリついた空気が自分の中に入ってこない」と、試合での滑りは練習と同じ感覚だと語る。それが昨年度までは良い方向へ働いた。「本当に集中できていた」と、大一番の試合では普段通りの滑りを披露。勝負強い中野耀司を形つくり上げていた。しかし、今シーズンはそれが悪い方向に働く。練習は例年以上に積んできたものの、なかなか結果が出ない日々が続いた。「演技中にふっと気持ちが切れて、演技中にマイナスのことを考えてしまう」。いつしか不安が演技中の邪念となっていった。全日本選手権、国民体育大会の出場を逃し、まさに悪循環に陥ったシーズンだった。

もう一年

 今シーズンは全日本選手権、国体出場を逃すなど最後に悔いの残るシーズンだった。「正直選手をもう1年やるのが1番の考えだった」という。しかし、年齢とともに変わっていく体の変化や絶対的に結果を残せる保証はなく、「毎日自分を殴りつけて1年間やり通せる自信はなかったので、諦めがついた」。

 それでも「スケートに恩返しがしたい」という思いに変わりはない。そして今度はコーチという形でスケートに一生関わっていく覚悟を決めた。卒業後はコーチを目指すため、地元のリンクで新たなスタートを切る。まだ「気持ちの整理はついていない」ほど、悔しい結果だった今シーズン。この悔しさと経験を今後のスケート界の発展に捧げていく。

(写真:コーチを目指し、新たなスタートを切る中野)

[大西健太]