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(78)「連覇にチャレンジしたことは今後に向けての財産」田中澄憲監督 全国大学選手権終了後インタビュー

ラグビー 2020.01.21

 優勝にはあと一歩届かなかった。全国大学選手権決勝で3年連続の決勝に進出した明大。新しくなった国立競技場で行われた一戦は早大を前に35―45で屈した。チームの指揮官に大学選手権終了後の心境、そして武井日向主将(商4=国学院栃木)をはじめとする4年生への思いについて伺った。

(この取材は1月14日に行われたものです)

 

――早大との試合から3日経ちました。改めて試合を振り返りかえるといかがですか。

 「今シーズンに何回かあったパターンです。夏合宿の慶応戦、ジュニアの帝京戦であったように前半に立て直せないまま、相手にずっとやられっぱなしというゲームが出てしまったと思います。では、何が原因だったかと考えると結構難しいなと言う部分です。これだ!というのを探すのがすごく難しいと思います。ですが、自分たちが経験したことのない、想定できなかったプレー、状況になった時に立て直す力がなかったと思います」

 

――早大には中野将伍選手が復帰しました。中野選手の復帰によって対抗戦からのプレーに変化はありましたか。

 「それはあります。中野が入ってきてそこに意識が行きすぎてしまいました。相手がそこの裏を使ってくることは想定できなかったわけではないです。想定していた中でも、体感してなかったからという部分で少しパニックしてしまった部分があったと思います。だから(夏合宿)慶応の時はハイパントを多く蹴られて、そのこぼれ球、イーブンボールをいいように取られてそこからずっと責められてというのが多かったです。そこを経験したので対抗戦の時はそれに対して完璧なくらい対処できました。でも、それが今回できなかった部分です」

 

――明大側は箸本龍雅(商3=東福岡)選手、坂和樹(政経4=明大中野八王子)選手らを中心としたペネトレーターがゲインラインを切れなかったように思います。

 「それも一つです。ゲインできるところでゲインできなかった、早稲田さんの粘り強いディフェンスが対抗戦とは違うディフェンスというのがあったと思うので、そういう意味でもそこまで想定して突き詰めておくべきだったかなと思います」

 

――ハーフタイムではマインドの部分から立ち直りましたか。

 「マインド的な部分もそうですが、あとは児玉(樹・政経2=秋田工)が入ったり、児玉が前に出られた部分やそういうちょっとしたきっかけで後半のゲームにつながったのかなと思います」

 

――前半無得点で選手たちに焦りの表情、パニックの表情もあったと思います。

 「動揺はしていたと思います。ただ、ここでギブアップするのは簡単です。簡単だけど、ギブアップしたら今までと一緒です。こういうときこそ真価は求められると思いました。学生たちもそれは聞いてうなずいていたのでハーフタイムの時は死んでないなと思いました」

 

――その後10点差まで追い上げましたが、丸尾崇真選手の8単を起点にトライを許してしまいました。8単(スクラム直後のナンバーエイトの突破)への警戒はありましたか

 「練習でも相手想定でやっていました。丸尾のダイレクトの8単が(早大の)武器です。天理大戦の時もそれで行って逆サイドにトライしていました。ディフェンスもやっていました。ただ、あそこは、繁松(哲大・政経3=札幌山の手)がこけてしまって(ディフェンスに)いけなかった。平常心じゃなかったのか、そういうことも起こりました」

 

――そのトライは後半終了間際でした。逆転が厳しくなった中でも、選手たちは攻めの姿勢を貫いていました。

 「そうでないといけないと思います。それが明治としては当たり前じゃないかなと思います」

 

――試合後、選手たちにどんな声をかけましたか。

 「勝負事なので勝った負けたはあります。勝った時というのは誰でもうれしいし、気分もいいし調子にも乗れます。なので、常に話していることですが、負けた時にどういるかがすごく大事だと思います。そういう意味では負けはしましたけど、しっかりスタンドに挨拶をしたりだとか、その後の激励会でしっかりとファンの人とか関係者の人とかにしっかりとした対応をできていました。負けたら自暴自棄になるし泣きたくもなります。そんな試合でしたが、そこでも普段通りに受け答えができていましたし立派だったと思います」

 

――試合後にキャプテンにはどんな声をかけましたか。

 「チームマンオブザマッチを毎試合発表しています。今回負けはしましたけど、武井に渡しました。でも、この試合でもらうのは不本意だと思います。彼は次のステージでラグビーを続けます。次のステージでもラグビーが終わってからでも、キャプテンとして最後に負けたというのはほかの4年生よりもついて回るものです。それは忘れろとは言えないですし、背負っていかないといけないものです。それをどう自分の経験にして糧にして成長できるかどうかなので、そういうつもりで渡しました」

 

――武井選手はどんなキャプテンでしたか。

 「今年のチームを象徴したと思います。丁寧に、一生懸命にが本当に似合うキャプテンだったと思います。周りが「日向だったら」と言って支えてくれるような人間性を持っていますし、そういうのが出たキャプテンだったなと思います」

 

――この代の選手たちは1年時にベスト8と経験し、おとととし、去年と成績を上げていく中で、代のカラーはどういったものに変わっていきましたか。

 「どちらかと言うと頼りない感じの学年でした。けど、4年生になったらそれもそれなりに形になったと思います。最後は負けましたが、対抗戦全勝優勝と言う事実を彼らはつくりました。それ自体が20年ぶり以上のことで、それも間違いなく彼らの功績だと思います。最後に負けたから全てダメではないと思います。勝負事なので勝つのに越したことはなしですが、努力をしてきました。そういうのを見ていると最後に結果的には負けたけど本当によくやってくれたなと思いました」

 

――最後のジュニアの試合が終わった中で『出られないならもういいや』という気持ちが出てもおかしくないと思います。ですが、今年の4年生はそうした姿はなかったように思います。

 「僕は100点じゃないと思っています。安部(耕平・法4=大分舞鶴)、小椋(統平・文4=京都成章)このあたりの選手はすごくやってくれたと思います。だけど、姿勢が悪かった選手もいます。厳しい言い方かもしれないですが、考えたほうがいい部分だと思いました。特に安部なんかは1年間ずっと変わらないスタンスでやってくれました。彼がマンオブザイヤーという形で最後に集合した時に賞を贈りました。僕はこういう人間がいるということ、こういう4年生がいることを理解して取り組まないといけないと思いますし、そういう4年生が一人ではなく、みんながそうでないといけないなと思います」

 

――武井選手の代を見て下級生が変わったことはありますか。

 「そこで何が変わったかは今の段階では見えないです。でも変わっていくと思います。変わってこないといけないです。だから僕はルビコンの4年生に何人か頑張ってほしかった。根付いてきたものはもうあります。僕は3年目になりますけど3年目で根付いたと思っています。だからこそ、根付いたものを生かせてない4年生はいたなと思います」

 

――大学スポーツはリーダーが年度ごとに変わっていく中で、勝ち続けることの難しさが問われると思います。

 「本当に難しいと思います。だから(大学選手権9連覇の実績を持つ)帝京大はすごいと思います。(岩出雅之監督とのお話、変わっていく大学スポーツの中で勝ち続けるための秘訣は)こういう立場になってからはできなくなりました(笑)。4年生で空気が変わります。なので、大学スポーツは本当に4年生のものです。その4年生のキャラクターを見て僕の立場は関わっていくことが大事なのかと思います。でも、僕が3年目で感じたのは、意外と大人はいないなと思いました。もともとのイメージで4年生は結構大人だろうなと思っていました。どちらかというと任せることが多かったです。去年の健太(福田健太・平31法卒現トヨタ自動車ヴェルブリッツ)の代よりはかなり任せていたと思います。自主性と言うか大丈夫だろうという気持ちがありました。ただ、終わってみれば大人扱いをしすぎるのも良くないなと思いました。難しい部分ですが、学生と大人のはざまでしっかりとこっちも見極めて介入していくことが大事です。だから僕は昔、岩出さんにリクルートの話『帝京の学生素晴らしいですよね』と話をした時に『そんなことないよ、こいつらまだまだ子供だよ』っていう話をしていて。その時は大人に見えたから。『本当に大人ですよね』って言っても『そんなことないって(笑)』って言っていました。それが今ならわかります」

 

――来シーズン、形として残していけるものはありますか。

 「負けたということだと思います。そしてこの敗戦を次の代がどういうふうに生かすかです。日本一を目指すならどうやってやるのかを真剣に考えるってことだと思います。彼らがどうやってもう一度日本一を取りに行くのか。そういうことを考えて1年間過ごせるかどうかです」

 

――箸本選手、山沢京平選手(政経3=深谷)を中心とした次の4年生はどんな学年ですか。

 「そうやって中心として活躍した選手もいますが、それだけじゃ試合はできないです。逆に言ったら4年生がガラッと抜ける学年になります。上のチームも下のチームも関係なく4年生が本当に引っ張っていけるかだと思います。ただ、この代はラグビーが大好きな子が多いです。本当に1年の頃から最後まで残って練習しているようなやつらが多かったし、ラグビーが好きな子が多いからこそ、勝ちにこだわって取り組んでいけるかっていうのが一番かと思います」

 

――最後にシーズンの振り返りをお願いします。

 「今シーズンは最終的には最後の1試合で負けてしまいました。残念なというか望んでいない結果になったと思いますが、そのなかでも対抗戦の全勝優勝と言うものだとか今回連覇にチャレンジしたことは今後に向けての財産になるかなとは思います。それをしっかり後輩たちが受け継ぐこと、今回やっぱり悔しかったと思うのでそういう悔しさを次の来季のチームにつなげていくこと、どうやって来季勝つのかっていうのを最後まで忘れずに取り組んでいくかと言うことそれだけかなと思います」

 

――ありがとうございました。

 

[清水康佑]


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