(20)全日本選手権事後インタビュー 江川マリア

 1219日から行われた全日本選手権(全日本)で総合13位となった江川マリア(政経4=香椎)はFS(フリースケーティング)後に現役引退を表明。大学卒業後はロイヤル・カリビアン・クルーズへ就職し、船上スケーターの道に進むことを表明した。最後の全日本を終えた江川に、現在の心境を伺った。

(この取材は1月5日に行ったものです)

――全日本を振り返っていかがですか。
 「今回『結果ではなくてSP(ショートプログラム)、FSも自分の力を出し切る』というのを目標にしていたので、しっかりちゃんとそれを達成できたというのは、本当に集大成にふさわしい全日本だったんじゃないかと思います」

――SPは自己最高順位の9位ですが、演技を振り返っていかがですか。
 「SPは少しスピンで失敗してしまったのがあって、もう少し点数を伸ばせたかなというところはあったんですけど、最低限やりたいことはできてという感じだったので、順位にほっとしてるというよりは、演技に自分の力を出せたことがうれしかったなという感じです」

――SPの衣装はお母様がストーンを付けられたとのことですが、それは福岡でつけられたということでしょうか。
 「そうですね。衣装だけ福岡に送って、お母さんに付けて輸送してもらいました」

――それはあえてということでしょうか。
 「そうですね。いろいろ金銭面のこととか、現実的なこともあるんですけど。でも、高校の時に着ていた衣装とかも何着かはお母さんがストーンを付けてくれたりしていて、大学に入ってからは離れてるのもあって付けてもらっていなかったんですけど、ストーンなら付けるよって言ってくれて、やってもらいました」

――FSを振り返っていかがでしょうか。
 「SPの方が結構リラックスしていて、FSはそれこそ直前の6分間がめちゃくちゃ調子悪くて。それまで練習では本当に満足のいく練習が積めていたので、いつも大きな舞台になると最後に自分を信じられなくなってしまうんですけど、今回はやっと信じて最後までできたかなというのがあります」

――FSの『トゥーランドット』は昨季からの継続プログラムですが、継続を決められた理由が、全日本で悔いが残ったからとのことでした。今回の演技はいかがでしたか。
 「去年よりは本当に随分成長したかなと思って、自分の思い描く演技ができたので、そういう意味でも今季継続してよかったなと思います」

――今回の全日本は悔いの残る演技にはならなかったということでしょうか。
 「そうですね。でも、本当にこんなにいい形で終われると思っていなかったので、自分の結果的な目標としては、大学4年間ずっと国際大会を目標にしていたので、それがかなわなかったというので、そこには少し悔しさは残るのかなと思うんですけど。でも、自分のやってきた練習とか、そういう過ごしてきた4年間自体には悔いは全くないので、そういう意味でも本当に集大成だったかなと思います」

――大会が終わった後、ご家族やコーチから何か言葉はありましたか。
 「それこそ中庭先生(中庭健介コーチ)からは、自分は今年でやめるって決めていたけど、それを止めるかも迷ったけど、自分のFSが終わった時の顔が、やりきったという顔だから。それで選手の意見を尊重というか、本当にやり切ったんだなというのが見えたから、引退していいよというか、その選択でいいんじゃないというふうには言われました」

――お母様とは何か連絡を取りましたか。
 「演技前、SPもFSも結果とかは何も言われなくて、自分らしく滑ってほしいというのを言ってくれていて。それこそ去年の全日本が終わった後は、去年は結構結果も意識していたので、来年は本当に楽しく滑ってほしいということを言ってくれていると思うので、その言葉の支えもあって、去年よりは気楽に伸び伸び滑れたんじゃないかなと思っています」

――周りの人に引退を考えていることは、いつ頃伝えられましたか。
 「健介先生(中庭コーチ)にちゃんとはずっと伝えてなくて、それは全日本前にやめる、やめたくないとか違うことで悩みたくないというのもあったし。でも、アシスタントの先生には今年絶対やりきって辞めるつもりというのも伝えたし、仲のいい選手とか、一緒に練習しているチームメートとかには、本気で最後というのも言っていました」

――最後というのを伝えた時のご家族の反応はいかがでしたか。
 「いろいろ複雑な事情もあったりして、家族としてはもしスポンサーとかが付かないんだったら4年までというのは前々からずっと言われていて。なので今年が最後だねというふうな感じだったので、なおさらのびのび結果とかを全く気にせず滑ってほしいっというのは、今季ずっと言ってくれたかなと思います」

――ロイヤル・カリビアン・クルーズに就職されるとのことですが、どのような経緯で決まったのでしょうか。
 「知ったのは、高校生くらいの時に将来どうするんだろうねみたいなのを親と話している時に、ショーに行きたいんだったら、日本のショーもあるけど、海外のショーもたくさんあるから、日本だけに絞らなくてもいいんじゃないみたいな。その時に、お父さんが船のショーあるらしいよみたいな。なぜか知ってて、お父さんが。そうしたら、たまたまこっちに来て教えてもらっていた中田先生(中田誠人コーチ)たちがそのショーに行っていた経験があって、そういうのを聞いていくうちに、自分も行きたいなという気持ちが深まったのもすごくあるかなと思います」

――では、就職考える時期になって知ったわけではなく、前から知っていたということですね。
 「そうですね、前々から知っていて。そもそもこの4年間の中で、スケートに関わるんじゃなくて、違うことをしたいという気持ちにもなるかもと思っていたので、そんなに大学1年生の頃からずっと目指していたというわけではないんですけど。きちんと今後を決めないとっていう大学3年生くらいになっても気持ちが変わらず、ずっとショーに行きたいって感じだったので。去年まではまだ現役をもう少し続けたいなという気持ちもあったりしたんですけど。でも、日々練習していったり過ごしていく中で、いろいろ考えて一番この選択が自分にとって幸せな選択なのかなと思います」

――やはり英語を喋れないといけないのでしょうか。
 「そうなんですよ。もう全然英語喋れなくて。なので、どうなんだろうという感じなんですけど、一応勉強して、できないなりにもコミュニケーションを取ったりするしかないなと思っているし、あとは太一朗先輩(山隈太一朗さん・令5営卒)がカリビアン・クルーズで本当に大活躍されているので、ちょっと相談したいなと思っています」

――先輩もいらっしゃるんですね。
 「私の一緒のクラブで練習したチームメートで行ったりしている子もいたり、本当にたくさん身近な人が、それに関わってる人がいてというのがすごく大きかったかなと思っています」

――どのような選考が行われたのでしょうか。
 「就職と言っていいのかも少し微妙で、オーディションがあってそれで契約をもらったっていう感じです。南船橋のスケートリンクで、わざわざ船のスカウトの方が日本に来てくれて、日本でオーディションを開催してくれて受けたという感じになります。10年契約とかではなくて、毎回1年契約が更新みたいな感じなので、就職なのかは少し微妙です。なんて言うんですかね、契約社員とかとも違いますよね。例えば俳優さんとかだったら舞台に呼ばれたみたいな、そういう感覚に近いのはあるかもしれないです。でもそれこそ実際行ってみないとわからないんですけど、英語がやばすぎたり、パフォーマンスがやばすぎたりしない限りは、次も更新してくれるという感じなので、ただがむしゃらに頑張ってという感じです」

――卒業してすぐに船に乗る形になるのでしょうか。
 「契約はいろいろな時期があるんですけど、私が乗りませんかともらった契約が4月からだったのでもう、すぐです」

――ずっと船に乗っているような形ですか。
 「4月から11月の頭まで乗るので、7カ月ぐらい。なんかもう、えって感じですよね」

――合間に休暇はあるんですか。
 「休暇は多分ないと思います。ずっと船に乗っているんじゃなくて、ぐるぐる降りて回るみたいな感じみたいなので、停留地みたいなのは、全然あるので、地上には降りると思うんですけど、でも休暇はなくてまとめて働くみたいな感じなんですかね」

――生活はほぼ船になるんですね。あまりそういう船には乗った経験がある人は少なそうですが、いかがですか。
 「私もないし、海外も行ったことないので、本当に未知の世界って感じがします」

――めずらしい就職先ですよね。
 「そうですよね。特に日本だとクルーズ船に乗るというのが日常的じゃないというか、別にバカンスだからクルーズ船に乗ろうともならないじゃないですか」

――そういう道もあるんだと初めて知りました。
 「なんかここ最近で、前は結構そもそもスケート選手のスケートに関わるセカンドキャリアがそんなに多くなくて。選手になるか、振付師になるか、日本のアイスショーに出るかというくらいだったので。最近、その選択肢の一つで、例えば海外のショーに出るとか、船に乗るというのが出てきたかなという。なんかスケート界的にそういう流れが少し広がってきたので。でもそれも多分、みんなが結構よく知るきっかけになったのは、多分太一朗先輩がいたのが結構大きかったんじゃないかなと思います。(先駆者ですね。)だと思います。なんか言い方があんまり良くないかもしれないけど、結構上手で名前がある選手だと思うんですけど。そういう人が行かないと話題にはならないじゃないですか。それで多分話題になって知るという方も多かったから、なおさらそれで話題になって、そういう道もあるんだというのをみんな知り出したのは大きかったと思います」

――現役を退いてからもスケートに関わりたいという気持ちはあったのでしょうか。
 「ずっとそれは昔からあって。普通に就職したとしても絶対にスケートと関わりたいっていう気持ちはずっとあるくらいずっとスケートが好きだったので、ちゃんと夢通りじゃないけど、今後も関わっていければすごくありがたいなと思います」

――パンを作ると以前おっしゃっていましたが、最近は作られたりしていますか。
 「最近はインスタでナンの粉があって、それに水を入れるだけでナンが出来上がる、焼かないといけないですけど。というのがあって、本当にチーズナンとかナンが大好きなので、作ってみました。でもさすがにカレー屋のナンには勝てないなと思いました」

――明大の選手はお菓子作りが好きなイメージがあります。
 「みんな食べるの大好きだと思います。(食べる方が好きなんですか。)作るのも好きだけど、基本みんな食べるの好きだと思います。(そういう情報を共有したりするんですか。)会ったら大体、多分半分以上は最近の美味しいものの話です。なんかもう本当にそれこそ身近な、最近出た限定のスイーツが美味しかったとか、そういう話ばかりですね」

――作ったものを共有したりはしますか。
 「そうですね。作ったものより多分食べるものが多い気がします。(作るのは大変ですよね。)いや本当にりをんちゃんとかあんなに忙しいのにいつ作ったんだろうって、不思議ですね」

――日本学生氷上競技選手権(インカレ)、国民スポーツ大会の後は大会に出られますか。
 「もうそれで大きい大会は終わりで、そのあとなんか全九州大会というか、福岡のローカル試合が3月の終わりくらいにあるんですけど、それが一番最後の本当の引退試合になります。(あと少しですね。)そうなんですよ。なんかもう全日本終わった後は自分で出し切ったという気持ちが強くて、まだその後も少し試合はあるのに、もういいかなみたいな気持ちになってしまったんですけど、一応インカレはきちんと明治に貢献したいという思いで、今それがモチベーションできちんと練習できているかなというのはありますね」

――インカレは4年生全員が出場しますね。
 「りをんちゃん(住吉りをん・商4=駒場学園)はもちろん全日本はオリンピックを目指していて。こうやって全日本が終わって結果が出ていろいろな気持ちに、自分では多分理解できないいろいろな心境を抱えているとは思うんですけど、でもインカレになったら心は一つだと思うので。明治のために、4年間お世話になったから恩返しができたらいいねみたいなのをメッセージで伝えて、本当にみんなでそういう思いで一緒に大会で演技できたらいいなと思ってます」

――4年生同士や女子選手同士で最近何かお話されましたか。
 「4年生同士は、駿くん(佐藤駿・政経4=埼玉栄)とはもう多分駿くんが忙しくて、あまりゼミでも会えてないので、全日本で久しぶりに会ったという感じなんですけど。それこそ卒論の話をしていて、卒論やっと終わったって言ったら他人事で、すごいって言われました」

――佐藤選手は全日本で2位になって五輪出場を決められましたが、お祝いの言葉はかけられましたか。
 「なんか直接会ってないので、言ってないですね」

――お祝いのコメントをお願いします。
 「よく会うわけではないんですけど、でも特に大学に入っての4年間の駿くんの頑張りというか、いつも頑張っているんですけど。見ていて絶対に行ってほしいし、行くと思ってたので無事に決まってくれて、本当にそのままオリンピックも頑張ってほしいという期待という感じです」

――少し話は遡りますが、今回の全日本では緊張感はありましたか。
 「今回は一番緊張しなかったと思います。やはり自分が緊張してしまうのは、プレッシャーをかけているというか、結果を意識しすぎる時に緊張して、どうしてもそういうのを意識してもパフォーマンスが上手くいく選手もいると思うんですけど、私はプレッシャーには弱いタイプなので、常に今年は結果を気にしないというスタンスでやってきて、ちゃんとそのスタンスを全日本でもちゃんと守ってじゃないけどやれたというのもあって、雰囲気を楽しめたなという感じはあります」

――全日本の前には五輪イヤーというのもあってどうなるかわからないと話されていました。
 「なんかもっとピリピリしていて、ピリピリした雰囲気に自分も呑まれちゃうのかなと思ったんですけど。多分今トップで走っている選手が坂本花織選手(シスメックス)というのもあって、更衣室とかでもすごく明るい雰囲気にしてくれているので、トップの選手が誰かというのでも大会の雰囲気って変わるのかなというふうに思いましたね。多分、トップで走っている選手が花織ちゃんだったから、今回女子は特にいい演技する人が多かったのはあるんじゃないかなというふうに思います」

――やはりトップの選手で雰囲気は変わるんですね。
 「本当にそうだと思います。バチバチというよりは、みんなベストな演技しようみたいな、そういう感じなので。オリンピックの選手はもちろん緊張したと思いますけど、でもいい雰囲気でした」

――ありがとうございました。

[大島菜央]