(113)第552号特別インタビュー⑨/尾ノ上一

2025.12.27

 今回は明大スポーツ第552号で扱った選手や指導陣の、掲載し切れなかったインタビューをお届けします。

 第9回は尾ノ上一(商4=鹿児島実業)のインタビューです。(この取材は11月30日にオンラインで行われたものです)

——大学生活で一番印象に残っていることは何ですか。
 「直近のことなので記憶に新しいというのもありますが、最後の夏合宿をAチームで過ごし、4年間で一番練習を消化できたことが強く印象に残っています」

——競技は社会人になっても続けられますか。
 「実業団という形ではなく、自分で環境を作って、まずは頑張ってみようと考えています」

——寮長を務められましたが、具体的にどのような役割を担っていたのですか。
 「寮内の掃除やさまざまなルールの決定、また体調不良者が出た際の対応など、生活全般の管理を任されていました」

——4年間で一番大変だったことは何でしょうか。
 「私たちの代は周囲から期待されて入ってきた選手が多く、その中で自分だけ走れない日が続いてしまったことです。常に不安や劣等感を抱いていて、それが大学3年生の頃までずっと続いていたのが一番きつかったです」

——座右の銘と、その言葉を大切にしている理由を教えてください。
 「『何も咲かない寒い日は下へ下へと根を伸ばせ、やがて大きな花が咲く』です。先ほどの苦悩の話ともつながりますが、周囲と比べてしまい、うまくいかない日はどうしてもあります。それでも、自分にできることを一つ一つ丁寧に行っていけば、いつか大きな花が咲くと信じて、一日一日を積み重ねてきました」

——1年時から現在までを振り返っていかがですか。
 「1、2年生の時はケガや体調不良が多く、練習に慣れるだけで精一杯でした。3年生になってようやく合宿を完璧にこなせるようになり、そこで自己ベストを更新し、4年生でもさらにベストを更新することができました。もう少し早くから体調管理を徹底できていれば、もっと上を目指せたのかなという思いもありますが、この4年間、自分なりにやり切ったという充実感もあります」

——一番印象深い試合を教えてください。
 「大きな大会ではないのですが、3年生の時に出場した国士舘大学競技会の5000メートルです。高校2年生以来、4年ぶりに自己ベストを更新することができました。それまでは『ずっと更新できないままなのではないか』『競技を続けていて意味があるのか』と自問自答する日々でした。1、2年生の苦悩の時期を経て、やっと記録を塗り替えられた瞬間は、自分の中で止まっていた針が動き出したような感覚があり、本当にうれしかったのを覚えています」

——同期へのメッセージをお願いします。
 「来年度も実業団で競技を続ける仲間が何人もいます。4年間切磋琢磨(せっさたくま)してきた仲間なので、みんなが引退するその日まで、全力で応援し続けたいと思っています」

——後輩たちへのメッセージをお願いします。
 「昨年度から体制が変わり、変化も多くて大変な時期だと思います。ただ、今の取り組みが当たり前になれば、必ず素晴らしい環境になるはずです。今はきついこともあるかもしれませんが、辛抱強く頑張ってほしいなと思います」

——今後の意気込みをお願いします。
 「決して順風満帆な4年間ではありませんでした。しかし走ることはもちろん、寮長を任された経験などを通じて、人間性の部分を鍛え、養うことができた大切な4年間だったと感じています。この先の長い人生、ここでの経験をしっかりと生かしていきたいです」

——ありがとうございました。

[下田裕也]