(110)第552号特別インタビュー⑥/森下翔太
今回は明大スポーツ第552号で扱った選手や指導陣の、掲載し切れなかったインタビューをお届けします。
第6回は森下翔太(政経4=世羅)のインタビューです。(この取材は11月28日にオンラインで行われたものです)
——明大の4年間で一番思い出に残っていることを教えてください。
「競技というよりは、友達や後輩との思い出の方が僕の中では強いです」
——競技的な面では、4年間で一番印象に残っている大会はなんですか。
「初めての箱根駅伝(箱根)です。初めて準備をしっかりして20キロという距離に挑むということで、レース前は楽しみも緊張もありました」
——4年間で一番つらかったことはなんでしたか。
「2年の夏前から夏合宿終わりまで、慢性疲労のようになり、急に調子が悪くなりました。ハーフや学連選抜で出場した全日本大学駅伝(全日本)もうまく走れず、箱根の4区も低体温になって全然走れませんでした。そこから5カ月くらいケガをしてしまって、結構きつかったです。その後も2カ月ぐらいしたらまた疲労骨折して、夏合宿も全然走れないようなことが続きました。箱根駅伝予選会(箱根予選)も、1時間8分ぐらいかかり『陸上やめようかな』ともちょっと考えて親にも相談したので、その期間が一番きつかったです」
——長いケガの期間で学んだことはなんでしたか。
「親に相談したら『もうちょっとやってみたら』と言われました。出口が見えない感じでやっていたのですが『ずっとやっていれば、いつかはどうにかなるな』と感じて、何をするにも大丈夫でしょうと、無理と思うことがなくなる感覚がつかめました。『諦めずにずっとやっていけば、いつかどうにかなる』という考え方ができるようになりました」
——4年生の同期はどのような存在でしたか。
「一緒にいるとめちゃくちゃ楽しかったです。ずっと笑わせてくれるのが井坂(佳亮・商4=水城)で、色々教えてくれたり一緒にいてくれたりするのが山本樹(営4=専大松戸)で、一緒に勉強したりご飯とか行ったりするのが窪田(悠人・政経4=沼津東)でした。相性がとても合っていて、毎日楽しく生活ができる人たちという印象です」
——4年間を通して、監督やコーチ、先輩などから言われて記憶に残っていることを教えてください。
「大志田さん(秀次駅伝監督)から言われた何気ない一言なのですが、僕には刺さったのがありました。僕は何かやる時に『無理じゃん』みたいな感じで言っていたのですが、大志田さんが『無理じゃなくて、できないだろう』と。『〝無理〟と言うな〝できない〟だろ』みたいな感じで笑いながら言っていて、なるほどと思いました。確かに『無理』となるのと『できない』というのでは、可能性がゼロと1パーセントみたいな感じで、全然違うなと感じました。心の持ちようが変わるので、それは響きました」
——箱根に対する印象はいかがですか。
「1、2年の時は大きい舞台だと感じていました。3年の箱根予選で落ちて出られないとなった時はめちゃくちゃ悔しかったのですが『箱根が全てじゃないな』という考え方になりました。負け惜しみと言われたらそれまでですが、箱根があることでそこにみんな集中しすぎてしまっているというか、目がいきすぎているのではないかと思っていました。『ないからできることがあるんだ』という考えがあったので『箱根、箱根』という感じではなくなりました」
——4年生としての1年間の手応えはいかがでしたか。
「最後にしっかり走れたのはとても良かったのですが、4年の最初も、夏もケガをしてしまったので、そこがなかったら箱根予選の時にMARCH対抗戦2025(MARCH)ぐらいの調子が来て、MARCHの時にはもっといい調子が持ってこられたのかなと思うので、そこが悔しいところです」
——近年の長距離の高速化については、どのようにお考えですか。
「靴の性能アップもあると思うのですが、練習の方法やトレーニングの研究が結構進んでいて、そこを取り入れているところが結果を出せているというのもあります。中大とかを見てみると、練習の強度がどんどん上がって、そこで耐える練習をやっているからタイムが出ているのかなとも思ってはいますが、なぜこうなっているかは、はっきりは分からないです。年々、高校生や中学生が速くなるように、大学生も自然と(走力が)上がってきているのかなと思います」
——阪神タイガースの森下翔太選手と同姓同名ですが、活躍には刺激を受けていましたか。
「刺激を受けるまではいかないですけど、寮でみんながネタにして『森下翔太、森下翔太』みたいな(笑)。『今日めっちゃ打ってるじゃん』といったことや『今日めっちゃ活躍していたよ』といったことを言われるぐらいで『あ、そうなんだ』という感じでした。阪神の森下翔太が活躍したから僕も頑張らなきゃというのは特になかったです」
——期待の次世代エースを教えてください。
「大湊(柊翔・情コミ3=学法石川)と井上(史琉・政経2=世羅)と桶田(悠生・政経1=八千代松陰)です」
——その理由を教えてください。
「勝負強い印象があります。近くにいるから分かることなのかもしれませんが『難しいレースでもどうにかしてくれそう』という、速さではなくて強さがある選手だと感じています。練習したものをレースでしっかり出してくれるという信頼があるので、その3人を選びました。あと1人、いい方向に振れたらめちゃくちゃ期待しているのが成合(洸琉・情コミ2=宮崎日大)ですね。あまり今は良くないですが、元々能力結構あって、良い方に振れれば強い選手だと思うので期待しています」
——明大が自主性を重んじている部分で、良かったことを教えてください。
「調子が悪い時にも、レースで自分の課題を見つけて何をしないといけないのか、どのような練習をすればいいのかということを自分で考えられるようになりました。(例えば)MARCHだと7000、8000、9000(メートル)で垂れてしまったので、夏合宿をやっていない分、走り込みが足りなかったのかなと感じました。12月の試合がない時期には距離メインで踏んでみるのがいいのではないかな、という考えができるという感じです」
——明大で学んだ自主性を、実業団ではどのように生かしていきたいですか。
「ジョグは各自の調整になり(自分で)調子を良いところに持っていかないといけません。自分でどうしたら良いのか、と考える姿勢が明大で身についたと思っているので、それを実業団でもやることで、一回一回のレースでしっかり結果を出せるというか、コンディショニングがうまくできることにつながるのかなと思っています」
——実業団での目標を教えてください。
「最初はトラックで、種目は1万メートルでやりたいと思っています。日本選手権で優勝している方が旭化成には2人いるので、その人たちに影響されて、1万メートルで日本選手権優勝したいというのが最初の目標です」
――ありがとうございました。
[安田賢司]
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