(15) 全日本直前インタビュー 佐藤駿 「自己ベストを超えることが目標」

 国内最高峰の大会である全日本選手権(全日本)がいよいよ1219日に開幕する。この大舞台のために選手は日々研さんを積んできた。今シーズンの大一番を前に、選手それぞれの思いを伺った。

(この取材は1211日に行われたものです)

第5回は佐藤駿(政経4=埼玉栄)のインタビューです。

――今シーズンは6月末にケガをされて、そこからのスタートでしたが振り返っていかがですか。
 「ケガをした時は、正直シーズン大丈夫かなという不安とかもあったんですけど、そこからドクターの方とかコーチの方とたくさんの治療だったりとかがあったおかげで、今シーズン無事にここまではいい形で来られているのかなと思っています」

――初戦は8月末のMGC三菱ガス化学アイスアリーナトロフィーでしたが、どういう思いで臨みましたか。
 「まず、初戦は無理しない程度に確認な感じで、まずは滑れたらいいなというふうな感じで出たんですけど。内容としても自分がその時できる最大のことができたのかなとは思っています」

――その後東京選手権(ブロック)に出場されましたが、振り返っていかがでしょうか。
 「東京ブロックはSP(ショートプログラム)でしっかりと元の構成に戻してノーミスにはできたのは良かったと思うんですけど、FS(フリースケーティング)の方は転倒とかもあって少しミスが多かったのかなと思ったので、そこは課題だなと思っていました」

――足の痛みは今も感じていますか。
 「今はもうほとんど感じていなくて、もう自分的には完治しているのではないのかなと思っています。10月の末ぐらいまでは本当に完璧な状態ではなかったんですけど、グランプリ(GPシリーズ)が2試合終わって、そこから結構時間が空いたので、その期間に一気に良くなった感じでした」

――ブロックからGPシリーズ初戦の中国大会までは1カ月空きましたが、その間にプログラムのブラッシュアップはされましたか。
 「ケガしている期間にできなかったところをブラッシュアップしていって、振付師のギヨーム先生(ギヨーム・シゼロン=フランス)とオンラインで夜中にブラッシュアップを行って、そのおかげで大分実のあるプログラムになったんじゃないのかなと思っています」

――大きく変わったと感じている箇所はありますか。
 「プログラム全体的に伸ばしていったんですけど、前は結構ジャンプとジャンプの合間のステップが少なかったりとかというのがあったんですけど、そこを詰めて、もっとボリュームのあるプログラムにしていきました」

――10月末にGPシリーズ中国大会に出場されましたが、そこでの演技はどのように感じていますか。
 「中国大会では痛みもまだ完璧じゃなかったんですけど、痛み止めを飲んでアドレナリンとかも出ていたので、ほとんど痛みを感じずに本番はできたので、そのおかげもあって気にすることなく練習以上の演技ができたのではないのかなと思っています」

――GPシリーズ2戦目のNHK杯の演技は振り返っていかがですか。
 「日本開催のGPシリーズはほとんど初めてだったと思うんですけど、中国大会よりも緊張することなく落ち着いてSP、FSともにできていたのではないのかなと自分では思っていて。点数でも自己ベストに近い得点を出すことができたというのはすごく大きいことだなと思っています」

――GPシリーズ2戦ともノーミスの演技でしたが、その要因はどのような点にあると思いますか。
 「本当に両方の試合は普段の試合と比べて全然緊張していなくて、本当に練習通りの演技ができたというのがノーミスできた要因なのではないのかなと思います」

――NHK杯の際、メンタル面での成長が大きいというふうにおっしゃっていましたが、メンタル面の成長についてご自身でどのように感じていますか。
 「とても強くなったなというのは感じていて。昨シーズンの世界選手権を経験してから、本当に海外試合含め全ての大会での試合への持っていき方であったりとか、どういった気持ちで臨むかといったところが大きく変わったなと感じています」

――大きく変わったと思う理由はありますか。
 「世界選手権の前に宇野さん(宇野昌磨氏)と対談する機会があったんですけど、その時に今までの自分だったら失敗を恐れていて、その状態で本番に臨んでいたんですけど、昌磨さんはそういったことを全く考えていなくて、『失敗してもいい』くらいの気持ちで本番に臨んでいるという話を聞いて、自分もやはり練習でこれまですごく調子よくやってきているので、自信はもちろんあるので、失敗を恐れずに行こうという気持ちで、世界選手権から、そこからメンタル面ですごく良くなったんじゃないのかなとは思っています」

――練習をコンスタントに分けて行うように変わったと伺いましたが、その変化はどのように感じていますか。
 「練習もここ最近は無理しないような練習をしていて、練習量的にも昨シーズンよりは落としているんですけど、でもその分質の高さは去年よりも上がっていると思っていて、すごくいい、質の高い練習ができているんじゃないのかなと思っています」

――コーチとはどのように話をされていますか。
 「コーチの方ともケガのこともあるので、無理しないような練習でいこうというふうに話していて、自分のタイミングで終わるようにしていて、今日とかもあまり無理しないよう気楽に一本ずつとかで確認程度で済ませているという感じですね」

――GPファイナルはどのような気持ちで臨みましたか。
 「GPファイナルも昨シーズン、表彰台に初めて乗ることができたので、今シーズンもそこを目標として頑張っていこうと思っていました」

――FSではイリア・マリニン選手(アメリカ)が世界最高得点を出した直後でしたが、会場の雰囲気はどのように感じましたか。
 「やはりものすごい空気感でとても緊張したんですけど、その中でもやはりいい演技ができたというのは自分の中ですごく自信につながりますし、正直点数を聞いてからは普段よりもGPシリーズ2戦以上に緊張はしていたんですけど、でもその緊張を力に変えて。始まってからは冷静にできていたのではないのかなと思っています」

――メンタル面での成長をご自身も感じられましたか。
 「はい。今までの自分だったら、おそらく失敗をしてしまっていたのではないのかなというふうに思うんですけど、そこでしっかりとノーミスにはできたっていうのは、自分のメンタルの強さを強くなったなっていうのを実感しました。今後大きな試合が控えているので、その大会でも今回の経験が生きてくるのではないのかなと思いました」

――いよいよ全日本が始まりますが、どのような目標で向かっていきますか。
 「今まで表彰台に乗ったことがなくて、全日本選手権というのは昨シーズンも失敗してしまっていて、あまり自分の中ではいいイメージがないんですけど、その要因の一つにメンタル面が挙げられるのかなと思うので、今シーズンはそこは変わったぞという部分を出せるように頑張っていければなと思っています」

――具体的な順位や点数の目標はありますか。
 「順位はあまり考えてはいなくて。それよりも自分の点数、自己ベスト。(GP)ファイナルでの点数を超えることを目標として頑張っていきたいなと思っていて。本当に今回は優勝とかそういったものを狙わずに、もう自分に集中して、やはり自分との戦いだと思うので、周りは気にせずに自分の自己ベストを超えることを目標として頑張っていこうと思います」

――五輪について現在の気持ちを教えてください。
 「やはりシーズンの最初の方から意識している大会ではありますし、自分の小さい頃からの夢の舞台でもあるので、もちろん出たいという気持ちは強いんですけど、出ることが目標ではないので、出てメダルを取って、自分の中で今シーズンが一番いいシーズンになれればいいなと思っています」

――今後への意気込みをお願いします。
 「全日本終わってみないとなんとも言えないんですけど、まずはシーズンの折り返し地点なのかなと思うので、まずは来週の全日本でいい演技をして、次の試合につなげていければいいかなと思っています」

――ありがとうございました。

[野原千聖]