(13)東日本選手権事後インタビュー 江川マリア

2025.12.15

 東日本選手権(東日本)で、昨季に続き2連覇を果たした江川マリア(政経4=香椎)。4年連続4回目の全日本選手権(全日本)出場を決め、大学最後のシーズンでもさらなる飛躍を見せている今回は江川選手に東日本を終えての心境伺った。

(この取材は11月17日に行われたものです

――東日本のSP(ショートプログラム)とFS(フリースケーティング)それぞれを振り返っていかがでしょうか。
 「SPは自分の中でできることを全て出し切れたので、すごく満足した出来だったんですけど、F Sがちょこちょこ大きなミスがあって。でも一つ一つ成功しているエレメンツはいい質のものをすることができたので、結果的に点数は結構残ってくれたというのもあって、すごく収穫のある大会だったかなというふうには思います」

――SPが今季自己最高の67.82でしたが、点数はご自身の中では満足いくものでしたか。
 「PCS(演技構成点)はもっともっと上を目指せば伸ばす部分あると思うんですけど、一番絶対に抑えなければいけないという、そのエレメンツの部分の点数は、しっかりと自分の中でスピンもステップもレベル4を取れましたし、満足のいくものだったのかなというふうに思います」

――点数としてはもう少し上を目指していきたいという気持ちはありますか。
 「自分が一応戦いたいレベルというか、そこの中で戦っていきたいというレベルは、今世界で戦っている選手たちというのは、いつも意識している部分なので、そこと比較すると、まだまだスケーティングスキルであったり、表現面において伸びしろはたくさんあるなというのは結構感じていて。でも、今できることというふうな意味では、すごく精一杯出し切れた演技だったのかなと思います」

――演技が終わった後にガッツポーズをされていたのがすごく印象的だったのですが、あれはやはり感情が思わず飛び出したというような感じですか。
 「今シーズン結構SPは安定していて、多分ほとんどの演技で結構ノーミスに近い演技ができていたりするんですけど、その中でも自分の感覚としてよく滑れていましたし、スピンも取りこぼしのない演技ができたんじゃないかなというのでガッツポーズしてもいい演技だったなというのがあって。多分咄嗟に出たガッツポーズだったと思います」

――次にFSの方も少し振り返っていただきたいのですが、点数としては120.02で、自己ベストよりは少し下でしたがいかがでしたか。
 「FSは、自分の練習の中でもノーミスの演技が毎回できているかと言われたら、毎回は全然できてないなというふうにまだ思っていて、その弱さが本番に出てしまったのかなというふうには感じているんですけど。本当にノーミスの演技をしたいというのは大前提ではあるんですけど、東インカレ(東日本学生選手権)の時にジャンプはそろえても質があまり良くなくて、全然点数が伸びなかったので、まずは一つ一つの質を大事にやっていこうというのを意識して練習してきていたので、その意識したことを出したのは良かったのかなと思っています」

――ジャンプの面について、1本目のフリップトーループは感触としては結構いい感じでしたか。
 「SPだと、ジャンプが3本なので、一つ一つに結構集中できる、結構フリップトー(ループ)がしっかり入ってくれるんですけど、FSはやはりその後のことも色々考えたりしてしまって、なかなか目の前の一つのジャンプに集中するというのが難しいという感覚が少しあって、別にF Sの曲の中で入りにくいというわけではないと思うので、あとは一つ一つ目の前のジャンプを集中してやるという、それだけかなという感じはしました」

――ダブルアクセルと3回転トーループのコンビネーションを2回されましたが、そちらの方はどういう意図がありましたか。
 「それはリカバリーでしたんですけど、一応ブロック前の試合の中で、リカバリーをしようとした時にできなかった時も結構多かったので、きちんとリカバリーできるというところまで持っていけたのはFSをきちんとフリップトー(ループ)入れていいんじゃないかなという自信につながったかなと思います」

――リカバリーが演技の中でできるというのは、FSが自分の中でも身になっているというか、滑りこなせているという感じですか。
 「FSはやはり継続なので、だいぶ去年よりも、滑り慣れているというのもあるんですけれども、一番自分の体感としては、フリップトー(ループ)に挑戦というか、今年本格的に試合で入れ始めてから、セカンドトーループを本当にどこでもつけられるという技術が自分の中で進歩したというのを結構実感してて、安定するのはアクセルトー(ループ)なので、結構アクセルトー(ループ)にリカバリーでつけているんですけど、練習ではサルコートー(ループ)とかも結構毎日やるようにしていて、本当に今は1本目が普通にまっすぐ綺麗に降りられれば、どこからでもトリプルジャンプをつけられるという。技術面は今季自分が成長できている部分というのもあるので、そこが一番大きいかなと思っています」

――サルコートー(ループ)も挑戦されているということですが、試合で組み込む機会はありますか。
 「一度、東京夏季か何かの時に、フリップトー(ループ)のリカバリーでアクセルトー(ループ)をやろうとして、アクセルが乱れてしまって、その二つ目のリカバリーでサルコートー(ループ)をやろうとして、そこで少し失敗してしまったんですけど。でも、自分の中で全然後半でも問題なく跳べそうというのがあって。なので、特に全日本とかという試合は、完璧な練習通りの構成で実施できるのが一番いいんですけど、何が起こるかわからないので、その一つでも多く点を取っていけるようにというのもあって、やることはリカバリーでしかないかなとは思うんですけど、でも全然練習する意味はあるかなというふうに思っています」

――東日本は女子は上位3選手のみが全日本に出場できるということで、かなり狭き門だったかなというふうに思いますが、東日本の時点では全日本についてはどのように考えられていましたか。
 「枠の数だけ聞くと3枠って誰が聞いても本当にやばいってなると思うんですけど、今まで積み上げてきたものだったり、今シーズンたくさん大会に出て、いい収穫がたくさんあったりして、その中でついた自信をきちんとそのまま東日本で出すじゃないけど、特に変わったことはなくいつも通りという気持ちでやっていたので、その余裕感というのは、すごく精神面の中で、うまく自分をコントロールできていた部分じゃないかなと思っています」

――今季はずっと演技中の笑顔が特に印象的だと思いますが、演技に臨む心境としては、昨季までと違うものがありますか。
 「やはり昨季を振り返って、一番に出る感情として、悔しいとかよりも少し苦しいという気持ちが強くて。スポーツなので、結果を求められるものではあると思うんですけれども、何のために自分がフィギュアスケートという競技をやっているかという根本に立ち返って考えた時に、やっぱり好きというその気持ちでここまでずっと続けているなというふうに感じている部分があって、そのスケートが好きという気持ちは試合だと、やっぱり楽しまないともったいないなというふうに振り返って思うので、今年は一番練習も楽しむという気持ちですけど、何より本番を一番楽しむという気持ちの軸が、表情とかに自然と現れるものがあるのかなというふうには感じています」

――ある意味で初心に戻ったような感じですか。
 「本当に自分のイメージの中では、一番最初にスケートの大会に出た時の本当に自分ができることをみんなに見てもらえる場じゃないけど、そういったなんかワクワク感みたいな。初心に帰って、今シーズン挑みたいというふうにシーズン前から決めていて、きちんとその軸を忘れずに今こうしてやってこられているかなというふうに思っています」

――昨季が振り返ると苦しかったと感じたということなんですけど、どういう場面で苦しさを感じられていましたか。
 「昨季は初めてN H K杯の選考会に呼んでいただけたので、その中で大会ではなくて選考会のために調整をするというのを、ジュニアの頃も少し選考会に出たことはあったんですけど、本当にそうやって過ごしたシーズンはあまりなかったので、選考会だとお客さんもいないですし、自分がどれだけミスのない最大限の演技ができるかという本当にシビアな世界だと思うんですけど、どうしてもその中で、結果だったり、そういう後からついてくるものを先に求めようとしてしまうではないけど、そういう部分がずっとシーズン最後の方まで引きずっていた部分というか。それでうまくいったらいいと思うんですけど、うまくいかなかった時に自分を責めてしまう部分がすごくあったと思うので。少し話がまとまってないんですけど、実力も高めていかないといけないのはもちろんですが、それ以上にメンタル面で、いい時でも悪い時でもできるだけ波を作らない方が自分はうまくいくんじゃないかなというふうに思って、根本に立ち返って、楽しむということが、今シーズン結構メンタル面は安定しているので、すごくそこがいい方向に動いているんじゃないかなというふうに思います」

――選考会の経験というのが今季の気持ちの向き方に影響しているという感じですか。
 「昨季、選考会の時は、自分の中でベストを出したという演技で、それでも心の中で全然実力が足りないというのは、最初から少し実感していたもので、満足せずにどんどん上を目指すというのが、アスリートにとっては一番大切なことだとは思っているんですけど、一応その時、自分の中で今のベストという演技ができても、もっとなんか上を目指さないと意味がないというふうに少し責めてしまう自分がいて。自分を認めてあげられないところが、去年の苦しさに一番繋がっているというのも思って。少しアスリート的な精神としては、客観的に見たら、少し甘いのかなというところもあるかなと思うんですけど。でも、自分の中ではきちんと失敗も成功も全部自分の中に落とし込んで受け入れるという。自分を褒めてあげて、自信をつけるという意味でも、そういう自分に少しだけ、甘くするではないけど、そういうものが今季一番精神的には変わった部分かなというふうに思います」

――SPの『アヴェ・マリア』について、ずっと滑ろうと思っていたとお聞きしているのですが、滑ろうと考え出したのは具体的にいつ頃か覚えていますか。
 「滑りたいなと思い始めたのは、大学に入ってからで、高校の時まではコーチが持ってきてくださる曲でプログラムを滑ることが多かったので、大学に入ってからは自分で考えて自分が成長できるプログラムだったり、使いたい曲調のプログラムを使うように、選曲を自分でしてきた部分があったので、その中で考えているうちに使いたいなという思いはずっとありました」

――曲調が江川選手の柔らかい雰囲気にすごく合っているなというふうに思いますが、滑っていて自分でも滑りやすいなと感じますか。
 「やはり体感として、自分はスローの曲調の方が自分の滑りに合うなというのは感じていて。すごく滑りやすい曲だなというのは、振り付けてもらってすぐから結構感じていることかなと思います」

――お母様に『アヴェ・マリア』を滑るというお話をされた時にあまり驚いてなかったというふうにおっしゃっていたと思いますが、シーズンがだいぶ過ぎた中で、お母様から演技について何か感想を言われたりなどはありますか。
 「大学に入ってから毎日は会えないというか、離れたところで生活しているというのもありますし、私の母も言わなくても、自分でなんでもやれることはやってくれているというふうに、すごく私を信じてくれているので、技術面とか、そういう競技の成績に対しては全く口出しというか、高校生の時よりもアドバイスというのは全くもうないなというふうには感じているんですけど、毎大会毎大会、本当に応援してくれていて、東日本が終わった後も、おめでとうというふうに言ってくれたので、本当に距離的にも、福岡から離れていますけど、心の距離感的にも、一歩下がって見守ってくれているという感じがすごくして、それは本当に、自分がのびのびと競技をできている要因の一つでもあるなというふうに感じているので、すごく感謝しています」

――ありがとうございました。

[大島菜央]