(12)全日本直前インタビュー 江川マリア 「楽しむという気持ちを大切に」

2025.12.15

 国内最高峰の大会である全日本選手権(全日本)がいよいよ1219日に開幕する。この大舞台のために選手は日々研さんを積んできた。今シーズンの大一番を前に、選手それぞれの思いを伺った。

(この取材は1211日に行われたものです)

第3回は江川マリア(政経4=香椎)のインタビューです。

――全日本まであと1週間と少しですが、現在の練習について教えてください。
 「そうですね。もうあと1週間ということでもうどこかを変えるというよりは、しっかりコンディションを整えて、毎日ちゃんとこなすべきことをこなす練習というのしているという感じですね」

――具体的な課題などは今ありますか。
 「課題としては、やはりジャンプに集中してしまうと、スピンとかステップとか、そういったちゃんとレベルを取らないといけないというところが少しおろそかになってしまうことがあるので、しっかりそこは意識して、絶対に取りこぼさないようにという意識で一番練習しているかなと思います」

――現在のプログラムの完成度としてはどのくらいでしょうか。
 「SP(ショートプログラム)は結構安定してできているかなというふうに思うんですけど、FS(フリースケーティング)がまだ毎回1個ミスがあったり、ちょこちょこミスがある部分がでたりするんですけど、後半のジャンプまですごくしっかりはまるようにはなってきたなというのは感じているので、あとはちゃんと1週間調整していけたらいいかなとは思ってます」

――SPの衣装を変更されましたが、衣装についてこだわりの点など教えてください。
 「この間の都民大会よりはもう少しストーンをつけた状態の衣装で本番は出るのですが、結構シンプルめなのを最初からイメージしていて、前までは仮の衣装という感じでやっていたんですけど、本当はもう1個衣装を作ってたんですけど、それが少し不都合があって、着れなくなってしまってというので、急遽用意したんですけれども。でもすごくシンプルさがしっかり曲に馴染むというか、いい意味で主張しないところがすごく、それが自分らしさかなというふうにも感じていて。そういう衣装からも自分らしさを出せたらいいなと思っていたので、すごくイメージ通りの印象かなと思います」

――シンプルめというのは江川選手が『アヴェ・マリア』の中で表現したいものと通じるものがあるからでしょうか。
 「そうですね。曲としてもそんなに主張の激しい曲ではないので。振り付け自体もすごく象徴的な振りがあるというよりは、もう全てきれいに最初から最後まで滑っていくというプログラムになっているので。これが、よく言うとというのか、言い方が少しわからないんですけど、本当にシンプルで洗練されたスケートというのが、すごくSPは見せ場だなと思っているので、それを衣装でも表現した形になります」

――4度目の全日本ということで、大会に臨む気持ちは昨年までと変化がありますか。
 「やはり毎回全日本と思うと、自分の今まで出てきた大会の中で一番大きな大会になるので、いつもと違うことをしたりとか、身構えてしまう気持ちとかが誰でも出てきてしまうとは思うんですけども、その中でもどれだけいつも通りの気持ちで入れるかというのが結構大切なことかなと思っているので、一番は今シーズンずっと楽しむという気持ちを大切に、練習も大会も、それを意識して挑んできたので、しっかりその気持ちを忘れずに演技できたらいいかなとは思ってます」

――今季はオリンピックシーズンということで、全日本も緊張感が昨季までと違うかと思いますが、そういう点についてはどのように思われますか。
 「私自身がやはり全日本は4回目なので、オリンピックシーズンの全日本というのを経験したことが全くないので、自分がその中で滑るというのはどういう雰囲気だろうというので。もう未知のものなので、自分の中ではすごく、その空気で滑れることに少しドキドキする気持ちがありつつも、でも、すごくその瞬間をしっかり味わいたいなというふうに感じています」

――プログラムの構成は今までのものと何か変化はありますか。
「構成は今シーズンずっとやってきた構成で挑もうかなと思っています」

――昨年の全日本は少し悔しい結果だったと思いますが、目標としてはやはりそれを超えることでしょうか。
 「やはり目標としてはそれを超えるということなのですが、やはり結果というのを意識しすぎてしまうと、今シーズンずっと自分が大切にしてきた楽しむという気持ちも、その軸がブレてしまうというか、忘れてしまう部分があると思うので、一番は本当にしっかりちゃんと集中して、自分の今出せる力を全て出して、でもあっという間のSPとFSになると思うので、しっかりとその空気感を楽しみたいなと思っています」

――順位や点数など具体的な目標はありますか
 「やはり今シーズンまだSPとFSを、サマーカップはSPが良くなくて、でもFSはすごく揃えられたというのがあって、それからFSがなかなか全て揃えた演技がまだできてないので、ショートとフリーどっちも自己ベストの演技ができたらいいかなとは思ってます」

――そういった目標を達成する上で今年重要だと考えていることなどは何かありますか。
 「もうなんだろう、こうやってきたことをただただ出すという、自分に集中するというのが一番大事なことかなとは思っています」

――先週行われていたグランプリファイナルでは同学年の佐藤駿選手(政経4=埼玉栄)をはじめ、多くの日本人選手が活躍されていたと思いますが、ご覧になって感じたことを教えてください。
 「もう駿くんは今シーズンずっといい演技をしていますし、本当にそれが女子も頑張ろうという刺激になりますし。あとはやはり女子は中井亜美ちゃん(TOKIOインカラミ)と渡辺倫果ちゃん(三和建装/法政大学)は同じリンクで練習しているチームメイトなので、本当に特に思い入れが強いというか、チームメイトとして本当に頑張ってほしいという気持ちが強かったので、二人ともトリプルアクセルに果敢に取り組んで、しっかり着氷させていたので、本当に日々の努力の積み重ねだなというのをそばで見て一番感じた部分があって、それがまた自分も頑張ろうという刺激になっているかなと思います」

――今季もいろいろな選手のプログラムを今年もご覧になったと思いますが、好きなプログラムなどありましたか。
 「一緒に練習している選手以外だと生で見る機会がなかなかないので、やはり今年だと特に、それこそ同じMFアカデミーで練習している青木祐奈ちゃん(MFアカデミー)の『ラ・ラ・ランド』は、もうあれは永久保存版のプログラムなので、出来上がった当初からもう本当に大好きなプログラムです」

――現在はゼミなどもほとんど終わっているのでしょうか。
 「この間ようやく卒論を出し終えて、ゼミも行かないといけない回数ではないですけど、一段落したので、やっと本当に最後スケートに集中できるかなという感じで、とりあえず間に合ったことにほっとしています」

――卒論はどんなことをテーマに書かれたのですか。
 「スケートリンクのことについて書いたのですが、ゼミが財政について取り扱ってるゼミで、それに少しでも絡めればいいよみたいな感じだったんですけど、自分はそれこそスケートリンクだと福岡で練習していた時のパピオが潰れてしまったという経験があって、そこからどうやって、しっかりと維持していけるスケートリンクができるのかなというのにすごく興味があって。公的なスケートリンク、行政とかが関わったスケートリンクと、あと民間が運営しているスケートリンクがあると思うんですけども、研究していく上でその中でも行政が運営しているスケートリンクは比較的持続できやすいという特徴がやはりあるなというのに気づいて。それで、行政が運営しているスケートリンクを増やしていくためにはというタイトルで研究したという感じです」

――スケートと両立しながらの研究は大変でしたか。
 「結構自分が興味がある分野ではあったというか、関わっている分野ではあったので。勉強はやはり得意じゃないですけど、興味があることなので、ちゃんと手をつけてできたかなという感じはしてるんですけど。本当に周りにたくさんそういうスケートリンクの知識を持った人が近くにいるので、事あるごとに大人にスケートリンクの事情について少し聞いたりして、伊藤(秀仁)監督とかにも相談しました」

――充実した研究になったということでしょうか。
 「ゼミの先生もスケート部の部長の方なので、すごくスケートリンクに詳しい方なんですけども。なので、すごくいいアドバイスをもらって、なんとか完成できたかなという感じですね」

――少し早いですが、2025年を振り返ってどんな1年でしたか。
 「多分、今季を振り返ると、すごく充実したシーズンだったかなというのは感じていて。それは自分の中で結果が良かったから充実したとかそういうことではなく、ちゃんと試行錯誤して、また次の大会ではどうしようとか言って。本当に試行錯誤を自分なりに楽しめたというか。成功すれば一番いいんですけど、失敗もあまりネガティブに受け止めずに、ちゃんと次の材料にしようと思って、ずっとポジティブに今季スケートに向き合えたなという感じがしているので、すごく充実したシーズンだったなというのは感じています」

――年明けには明法オンアイスがありますが、もう既に準備などはされていますか。
 「それに関しては、去年と一昨年は実行委員で関わっていたんですけれども、4年生はやらなくてもいいよという風潮があって、後輩がたくさんやってくれて。毎年大変なんですけど、今年も大変という話を聞きます。なので本当に私たちが気持ちよく滑る機会を後輩たちが頑張って作ってくれているというので、少しでもお手伝いできることがあれば、積極的に手伝いたいなと思っています」

――最後に応援してくださる方々に向けてメッセージなどあればお聞きしたいです。
 「本当にいつも応援ありがとうございます。今季は特に大会での歓声とかに、すごく支えられて演技しているなというのを感じていて。毎試合毎試合、その嬉しさというのが、演技の時の表情にも出てしまうぐらいかみしめるものがあるので、しっかりと自分の演技には集中したいんですけれども、少しでも自分の感謝の思いというのも全日本やインカレなどで、お客さんに伝えられたらいいかなというふうに思っています。応援よろしくお願いします」

――ありがとうございました。

[大島菜央]

※写真は本人提供