(11)全日本直前インタビュー 三浦佳生「エントリー1番、自分、終わり。Flow do it ^_^」
国内最高峰の大会である全日本選手権(全日本)がいよいよ12月19日に開幕する。この大舞台のために選手は日々研さんを積んできた。今シーズンの大一番を前に、選手それぞれの思いを伺った。
(この取材は12月12日に行われたものです)
第2回は三浦佳生(政経2=目黒日大)のインタビューです。
――今の心境を教えてください。
「やっぱり時間は待ってくれないな、という感じですね(笑)」
――体感では短いですか。
「一瞬です。カナダから帰ってきて。もうファイナル(GPファイナル)がないというのは分かっていたので、全日本に向けてただ追い込むだけだと思っていたんですけど。1カ月先だと思っていたら気づいたらもう来週ですね。1年が本当に早いですね」
――大学に入学してからはあっという間に2年が経ちます。
「早いですよね本当に。いや早いな。スケートも大学入ってからは駄目ですね(笑)。(正直あまりいい思い出はないですか。)ほぼないですね。(昨年度のGPシリーズNHK杯のSPは。)ほぼ奇跡ですね。あの時も全然調子上がっていなかったし、絶対無理だろうと思っていました。100点が出たのでびっくりしましたね」
――GPファイナル(グランプリファイナル)はいかがでしたか。
「いや、すごい試合でしたね。とんでもなかったですね。考えられないぐらい。例年のファイナルの中でも特にレベルの高い。みんなすごかったです。特に男子が面白かったですね。イリア(・マリニン=アメリカ)がやばかった(笑)。やりたい放題やって。その後に駿(佐藤・政経4=埼玉栄)があれだけできるのは本当にすごい。優真(鍵山・オリエンタルバイオ/中京大)もすごかったです」
――以前マリニン選手のジャンプを「まるでカエルのように跳ぶ」とおっしゃっていましたが、まさにそのような軽さでした。
「4(回転)って思えないですよね。なんか軽々と。最後のジャンプまで4(回転)ですからね。やばいですよ。見えない。3(回転)に見える。本当にやばかったです」
――マリニン選手が『めっちゃ』と発言しており、三浦選手が教えたのではと話題になっていました。
「もう何を教えたか覚えてないですけど、結構教えましたよ(笑)。『めっちゃ』は教えた記憶ありますね。『おいしい』とか『右、左』も覚えていたので、自分でも結構勉強しているはずです」
――IGアリーナの演出もファンの方に好評でした。
「そのうち全日本もあそこで開催されそうですよね。来年、再来年あたりになりそうな気がするなとか思いながら。それにしてもファイナル組は大変ですよね。全日本がもうすぐ来ちゃうので超ハードです。駿はあまり疲れてなさそうな感じでケロっとしてましたね(笑)」
――ご自身のコンディションはいかがですか。
「体は結構いい感じで、もうケガはないです。ケガがなくてもシーズン頭とかは再発が怖いから、どうしても抑えている部分がありました。やっとガンガン、トー(ループ)を何発も練習できるという感じで、ようやく状態が上がってきました。間に合って良かったです。(間に合ったという感覚はありますか。)状態はすごくいいですね。練習でもポンポン跳べているので、練習と本番は違いますけど練習としてはかなりいいものができているなという感じです」
――先日、インスタグラムのストーリーで4回転―3回転のトーループをきれいに跳んだ様子が上がっていました。
「あそこぐらいからトー(ループ)がいい感じにハマりだして。あれより前はもう全然トー(ループ)の感覚が薄れているから、降りても気持ちよくない降り方しちゃうから、ようやく流れのあるような4(回転)という感じで。2年前ぐらいの感覚がやっと、大学入ってからやっと感覚がつかめて、なかなか大学に入ってから長かったです(笑)」
――降り方が気持ち悪いとはどのような感覚なのですか。
「跳べるは跳べるんですけど、(降りる時に)斜めとかになっちゃって、着氷が詰まったりしちゃいます。少し気持ち悪いというかGOE(出来栄え点)も取れないし、跳んでいる本人も気持ちよくないし。それこそ駿とかにも(コツを)聞いたりして。安定感なら今彼がピカイチじゃないですか」
――確かにそうですね。GPシリーズ(グランプリシリーズ)でも目立った崩れがなかったように思います。
「全然失敗していない。彼は練習が一番あてにならないスケーターですね。練習はひどくても、絶対本番カチッと合わせるので。バケモン(笑)」
――どのようなアドバイスをもらったのでしょうか。
「トー(ループ)が自分の中で気持ち悪かったんですけど、駿は安定していて絶対失敗しないし、すごく軽く跳んでいるので『どうやってるの』と聞きました。前までは『なんか跳べばいける』みたい(な返答)だったから、あまりあてにならなかったんですよ。だから今回も冗談半分で聞いたら、結構真面目なアドバイスが返ってきて。『去年外しまくっていたから、コースとタイミングをひたすらトー(ループ)の部分だけ練習していた』と。『ああ、なるほど、めっちゃ参考になるじゃん(笑)』と思いました。期待半分で言ったら結構ガチガチなアドバイスでした。そこから調子上がってきて、感謝してますね」
――佐藤選手のGPファイナル(グランプリファイナル)はいかがでしたか。
「本当にすごかったです。でも顔がさわやかになった気がします(笑)。去年までもっと地球に絶望した感じで、眉間にしわ寄せて不安そうな顔をしていましたけど(笑)。今年は6分間から見ていて、本当にすっきりしているように見えますね」
――具体的にいつ頃から調子は上がってきましたか。
「他のジャンプはずっと調子いいんですよね。トー(ループ)だけが駄目で。それが先々週。先々週でもないな、先週くらいかな。良くなってきたので、そこからだんだん上がってきていい感じですね。練習で跳べても絶対曲で入らなかったので、それが入り始めてきていますね」
――ループに関してはいかがでしょうか。
「夏場からずっとやっていて、夏場の時って試合で入れてはいるけど全然跳べていない状態で、惜しいけど跳べないんですよ。跳べていなかったので。よほどまずかったらシーズンで抜くのも手段かなと思っていました。でも優真と駿はおそらく失敗しないから、もうあと1枠と考えた時に爆発力は必要なんじゃないかなと。コンスタントに跳べるようになったのは9月、もっと先か、ちゃんと跳べるようになったのは10月前です。そこからは毎日コンスタントに跳べるようになってきて、やっていて良かったなと思います」
――GPシリーズスケートカナダでは演技後〝セーフ〟と気持ちをあらわにしていました。
「スケートカナダで駄目だったらオリンピック(出場の可能性は)終わっていたので。(世界ランキングも2月の四大陸選手権出場が効きましたか。)本当にそうですね。あれはでかいです。出といて正解でした。GPフランス(GPシリーズフランス大会)は0点なので、良かったです」
――改めて今シーズンここまでいかがでしょうか。
「どこかしらで調子は上がるだろうとは思っていたんですけど、なかなか上がらなくて。自分でもびっくりしたというか。練習でできても、本番でできないのが気持ち悪くてしょうがなくて。それがなんでだろうとずっと考えていたけど、今考えてみればケガの影響がどうしてもあったなと。自分で感じてなくても、やっぱりどこかでかばっている部分がありましたね。痛くなくても痛くしたくないからかばっているというか」
――今ケガをした箇所の状態はいかがですか。
「全く大丈夫です。痛みもなく、(肉離れした箇所の)肉もくっついています。(かばう意識というのもないですか。)ないですね。今は思い切り跳んでいます」
――プログラムは昨年度の全日本と全く同じになりますね。
「FS(フリースケーティング)は滑る時間が足りずに慣れていなくて。(プログラムを)作った後に1回シーズン終わりに休んでいるのと、シーズンインしてからも6月末から1回休んでいるので、どうしても(時間が)足りていないんですよね。それがあって、せっかくいいプログラム作ってもらったのに申し訳ないのですが、戻した方が、プログラムに馴染みはあるから、体が覚えている方がいいだろうなと。『ラストサムライ』はすごくいいプログラムなんですけど。(ジャンプの間が、という話でしたね。)そうですね、間が。直してもフランス(での演技)が絶対出てくるんですよ。フラッシュバックするので変更しました」
――辻秀一さんのもとでメンタルケアもされていましたね。
「正直メンタルなんてあまり関係ないだろう、今までは気持ちでいけばいけるみたいな感じだったんですけど。病むとかそういうのじゃなくて、試合の運び方のトレーニングなんだなと改めて気づきました。必要なことだった。要は、簡単に言っちゃえば、勝ちたいからそれを前面にむき出して頑張るとか、そういうのは駄目で。全部自分の心をご機嫌にして平和な状態を保って、自分のベストを尽くせば最大パフォーマンスは出せる、という感じです。練習中は誰でもあると思うんですけど、どうしてもうまくいかなかったりすると多少誰でもイライラするし。そこに不機嫌が出てきて、それが一番パフォーマンスの邪魔をしてしまいます。最初に(辻さんのもとへ)行った時に、ご機嫌な状態の時に不機嫌な時と何が違うかをまず書き出して。視野が広がるとか、階段上りやすいとか。そういうのからご機嫌の価値、というのを自分で高めていって。それが分かっていても、練習になるとどうしても不機嫌という存在が出てくるので。試合になると緊張や不安から不機嫌が出てくるので、それをどうご機嫌に変えていくかというトレーニングでした」
――なかなか難しそうに聞こえます。
「そうですね。短期間でできるものじゃないので、少しずつ。緊張や不安も何から来ているかと言ったら、過去の練習からだったり、過去の練習が駄目だったというとこから来るので。過去の成績から出る不安、焦り。そういったものから来るから、それを取っ払わないといけないですね。考えなくていいぐらいご機嫌な状態。ご機嫌な時は何も考えずに自分に集中しているということなので。調子が悪くてもご機嫌でいれば悪い記憶にはならずに、そういう日もあるよねぐらいな」
――スケートカナダでは前滑走者のケビン・エイモズ選手(フランス)の演技を見ずに臨んだそうですが、全日本でも前の選手の演技は見ない予定ですか。
「絶対見ないです。今まで絶対見るタイプだったんですけど。GPフランスでも見ていて。見れば前の人がどんな演技だったか分かるから、自分の構成を自在に変えられると思っていて。でも、(GPフランスでは)アダム(・シャオ・イム・ファ=フランス)がノーミスをして、それ自体にはそんなに緊張はしなかったんですけど、会場のボルテージが一気に上がるじゃないですか。それを見て、ぞわっと。FSでは6分間までの自分と別人のような感じになっちゃったので。それをどういつも通りに変えられるかというところで、何も崩す必要がないなと。もうルーティンとかもつくらないようにしました。ルーティンをつくるのは、それを特別視しているからで。だから常に自分のいつも通りを考えるという。どんな状況でも、例えばSP(ショートプログラム)が駄目だった時も良かった時も、自分ができることに集中します」
――それでは全日本のジャンプ構成も前の人を見て変えたりはしないということですか。
「前の人を見てはしないですね。自分の演技内容次第ではあるかもしれないですが。自信は持つけど過信が駄目ですね。過去の自分の調子が良くても、それに自信は持っちゃ駄目で。前の練習の状態の良さとかも一回全部リセットさせて、本番は本番で勝負ですね。ここは跳べていたからいけるとか、余計なこと考えてしまうので、何も考えません(笑)。何も考えずに気づいたら4分終わっていたみたいな」
――ジャンプの予定構成を教えてください。
「もうめげずに(4回転)四つはいこうと思います。どんな状態でも四つ締めにいきます。後半にアクセル二つ、1個はオイラーフリップで。とにかく高い点を取れる構成にはしています」
――スケートカナダの流れのままということでしょうか。
「カナダと変えずに。でもカナダも途中が変わっちゃっているので。アクセル、オイラー、サルコーではなくて、元々予定がフリップなので。あの時は詰まってサルコーになったんですけど、予定はオイラーフリップですね。基礎点を全面的に上げていきたいです。優真のファイナルを見ていて思ったのは、やや着氷の乱れはあったんですけど、少し詰まっても大きな失敗じゃなければ積み重ねていけるので、自分もそういう戦略で大きな過失なく、リスクを犯しつつも犯さないみたいなところを意識して、完璧を求めすぎないようにやっていきたいです。着氷が詰まらなければ意地で後半締めにいきます。後は変わらないですかね。体力に余裕があれば最後をルッツにしますけど、ルッツも得意ではないのでやるかは分からないです(笑)。全部決めれば200点は見えるのかなと思います。去年のプリンスアイスカップぐらい、1発目を思い起こしてという感じではあります。あれを出したいですね。(当時は『シェルブールの雨傘』初披露ですよね。)そうですね。出落ち感がすごいですけど(笑)。あそこから少しブラッシュアップして編曲も変えてやっていたんですけど、今年はもう戻して。構成も全部戻して、去年シーズンを通してやっていたものとは違うものにしていて。縁起のいいプリンスアイスカップの時のものにしています。メンタルトレーニング的には縁起は駄目ですけど(笑)。縁起というよりも、やりやすさですね」
――三浦選手が演技冒頭に持ってくる4回転ループは跳ぶ選手が少ない印象があります。
「単純にループジャンプが怖いんですよね。スケートやっている人は分かるんですけど。エッジで跳ぶじゃないですか。跳ぶ時にスポって抜けるんですよ。アウトサイドに深く乗りすぎて靴がついちゃって。ついた瞬間に抜けるんですよね。それで飛び上がれずに、めっちゃ痛い転び方したりとか。誰しもが多分シングル、ダブル、トリプルで経験しているから、なかなか勢いを持って締めにいきたくないし。でも自分の場合はもう怖さを捨てていっているので。跳べたときはすごくいい流れになると。なかなかループでは見ない流れがあるのは自分の持ち味ですね」
――樋口新葉選手(令5商卒・現ノエビア)からループのアドバイスをもらいコツをつかんだ、というインスタグラムのストーリーを以前上げていましたね。
「あの時期もすごく惜しいところまでいっていて、回っているけど降りられない状態が続いていて。なんでだろうなと思っていたら『上がってから締めているから余裕がないんだよ』って。上がりながら締めるというか、若干前めに行く意識を持つことによって、上がりながら締めにいけるという感覚の話をもらって、一発で跳べたので『おお』ってなりました(笑)。言われてみれば確かに分かるんですよ。そこからだいぶ変わっていきましたね」
――樋口選手や坂本花織選手(シスメックス)など、今シーズンで引退される選手も多いですね。
「そうですね。花織ちゃんもだし、本当に来年寂しくなります。でも来年、璃士(中田・TOKIOインカラミ)とかが今度は来ますからね。それはそれで新しい時代が来る感じがします」
――全日本ジュニア選手権もハイレベルでしたね。
「アクセルもみんな跳びますよね、すごいです。トータル的なカテゴリーのレベルが上がっていますよね」
――西野太翔選手(星槎国際横浜)とはGPフランスの後にお話されたようですね。
「普通に何気ない感じで。フランスから帰ってきてすぐ、練習の後にご飯に行きました。『やっちゃおうよ』みたいな話をしました(笑)」
――インスタグラムでも『やっちゃおうよ』というハッシュタグをつけておられて気になっていましたが、何が発祥でしょうか。
「もうスケートを引退している先輩が言っていて(笑)。なんでもかんでも『やっちゃおうよ』って。とりあえず困ったら『やっちゃおうよ』って。結構みんなの中でもはやっていて。いつも何かあるたびに自分がはやらせている感じがちょっとまずいですけど(笑)。日本のスケート界を頭悪くさせないようにしないと(笑)。語彙力を低下させないように。(楽しそうですね。)ある意味自分も先輩感がないというか。大事かなと」
――今シーズンここまで印象に残っているプログラムはありますか。
「一希くん(友野・第一住建グループ)のSPとかいいですよね。面白くてすごくいいなと思っていて。アイデアもいいし、何より一希くんにすごく合っていますよね。優真のSPもいいですね。他にはノービスの宮﨑花凜ちゃん(MFアカデミー)。FSがすごく凝って作られていて、いいプログラムだなと思いました。うまいですし、絶対に上がってきますね(笑)。簡単に跳びますし、着地の沈み具合は三宅咲綺ちゃん(シスメックス)に似ていますね」
――ジュニア世代の活躍は女子も目覚ましいですね。
「すごいですね。僕は岡さん(万佑子・木下アカデミー)推しですね。個性が際立っていて。SPがすごく好きです。哉中ちゃん(村元)の振り付けもいいですね。ジュニア男子で言ったら、JGPファイナル(ジュニアグランプリファイナル)を優勝したソ・ミンギュ(韓国)。スケートの面白さが詰まっているプログラムで。去年までもいいスケートはしつつ、手足の振りが一緒になっているようにも見えていたんですけど、今年は全部課題が解決されてすばらしかったです。振りもしっかり入っていたし、何より滑りが生かされていて」
――全日本での目標を教えてください。
「(目標を)設定しないのが目標ですね(笑)。メンタルトレーニングを始めたので、メディア的におもしろいことは言えないですけど、ただただ自分のベストを尽くすこと。ベストを出せば勝てるという気持ちでいきます」
――ご機嫌を保った状態で臨むということでしょうか。
「自分自身との戦いですね。自分の状態との戦い。そういう不安や不機嫌の状態との戦いだと思います。なるべくオフの生活はもうスケートを考えずにご機嫌を取り入れています。家をきれいにして、ゲームを買ってこもってやったりもしています。今はインフルエンザもはやっているので。電車とかも使わずに常にご機嫌を取り入れる生活をしています。Switch2も買いましたし。(買ったんですね。)買いました。たまたまビックカメラに行ったらその日に入荷していて、買うしかないと(笑)。(何をやっているんですか。)イナズマイレブンをやっていますね。全然分かんないんですけど、サッカーだと思っていたらあまりサッカーじゃないみたいで(笑)。ひたすらイナズマイレブンと、逃走中もやっていますね。結構難しいんですよね(笑)」
――体調の方はいかがですか。
「体調はもうばっちりです。家も気をつけています。クレベリンを置いて、湿度も絶対40から50の間で加湿させて、あとはもう常に消毒と手洗いを徹底して。集(周藤・政経1=ID学園)が確か全日本ジュニアの前にインフルになっていたというのも見た気がして。(周藤さんとはよくお話されますか。)最近はしてないですけど、仲良いですね。結構喋ります。地味に1歳しか変わらないんですよね(笑)。もっと年下だと思っていて、3歳ぐらい年下だと思っていたら、あんま年齢変わらないなって。ほぼ同じでした」
――コンディションとしては現在何パーセントでしょうか。
「85パーセントから90パーセントぐらいまで来てます。体力も戻ってきたし、練習でこの前も4回転は全部入りました。最後の一番簡単なループ、アクセルでバランスを崩したんですけど、かなり仕上がっているんじゃないかなと思います。どんな人でも100パーセントというのはないと思うので」
――難しいことも多く、気持ちの起伏も大きい1年だったと思います。ここまでの『スケートに対しての気持ち』の変化を折れ線グラフで表していただけますか。(下添付写真参照)
「1月は全日本が終わってリフレッシュして。2月は少しケガが良くなってきて、試合に出て。3月はオフシーズンだからこのぐらいで。4月は頑張り始める時期ということで上がってきて。5月もショーとかやって。6月はシーズンインが近くなってきているからこのぐらいまで。7月はケガで。8月は試合が入ってくるので頑張って徐々に上げていく感じで。9月はもうこの辺にあって、10月はここからのこうみたいな(笑)。10月内で(笑)。11月、12月はここです」

――今は気持ちが100パーセントを超えているということですね。
「そうですね。今は足の状態もやっと完璧な状態に戻ったというか、毎日追い込んでいて、いい感じなので。状態に対して安心感もあるし、だからこそこれだけできるという期待を込めて、この高さです」
――ファンの方もドキドキだと思います。
「もう腹くくるしかないですよ(笑)。いつもより緊張しないですね。いつもの方が嫌です。今シーズンは五輪があるから、良くも悪くも結果が出るじゃないですか。だから駄目でも割り切れるぐらいの練習はしています。(いつもの)1試合ぐらいにしか考えてなくて。ここさえ頑張っちゃえばあとは楽だからと。去年やおととしは、翌シーズンがその結果で変わってくるから、それにとらわれていました。(節目の年ではありますよね。)そうです。4年周期のサイクルの集大成みたいな。だからここまでやってきた4年間のピークということで、あまり緊張しないです。多分会場に行ってからも緊張あまりしないですけど、逆に緊張させないといけないですね。ある程度緊張感はないとやってないといけないですし」
――改めて、昨シーズンと同じ曲目で勝負の舞台を迎えますが、その中での違いはありますか。
「顔色です。顔色と言っても本当にただの色じゃなくて、かもし出しているオーラ的な感じのもので。去年は明らかに負のオーラが漂っていたので、今年もうちょっとポジティブに『生きていますよ』という姿を見せたいですね(笑)。(ご自身でも内面の負のオーラは感じていたのですか。)そうですね。全日本の時も6分間は結構ニコニコしていたんですけど、本番の時、前の織田くん(信成)の演技の後の雰囲気にのまれてしまって。のまれる自分が悪いので、そこに対応していかないと、それも込みでアスリートだと思っています」
――もしまた前の滑走者の演技がすばらしいもので、会場が盛り上がっている時はどんなマインドで臨みたいですか。
「自分は自分なので。自分との戦いと捉えて、もう『エントリー1番、自分、終わり』みたいな考えでいきたいです」
――そういった考えで挑むのは今までのスケート人生で初でしょうか。
「初です。今までは勝負! という感じで『いざ参る』だったので。それを一旦捨てて、自分のパフォーマンスだけにマインドをセットします」
――色紙に意気込みを書いていただきたいのですが、ちょうど1年前の全日本前は何と書かれたか覚えておられますか。
「なんて書きましたっけ、覚えていないな(笑)。(おそらく今と真反対のことかもしれません。)真反対……『勝つ!』とかですか。(おっしゃる通りです。)ひどいですね(笑)。メンタルトレーニング的には終わっていますね(笑)」
(色紙にはFlow do it ^_^と書く)
「ご機嫌ですね。にっこりマークをつけておきます。これもメンタルトレーナーさんから教えていただきました。これができれば。全部自分次第です。自分の演技に集中すればできると思っています」
――最後になりますが、ファンの方にメッセージをお願いします。
「本当にファンの人も緊張すると思うんですけど、それこそFlow do itで(笑)。意外と本人はケロっとしているので。もちろんファンの人だったら五輪に行ってほしいと思うのは当たり前だと思いますけど、楽しんで見てほしいです。楽しんで見てもらった方が自分も楽なので。いつもの試合のような感覚で見ていただきたいです!」
――ありがとうございました。
[橋本太陽]
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