(10) 全日本直前インタビュー 周藤集 「また青い舞台の中心で」
国内最高峰の大会である全日本選手権(全日本)がいよいよ12月19日に開幕する。この大舞台のために選手は日々研さんを積んできた。今シーズンの大一番を前に、選手それぞれの思いを伺った。
(この取材は12月2日に行われたものです)
第1回は周藤集(政経1=ID学園)のインタビューです。
――全日本ジュニア選手権(全日本ジュニア)から約1週間が経ちましたが、改めて大会の振り返りをお聞かせいただけますか。
「全日本ジュニアは1週間前にインフルエンザにかかってしまって寝込んでいて、なかなかジャンプが本調子ではない中でまとめた演技ができて安心できたという面と、やはりもう一度表彰台に登りたかったという面があったので、あと一歩という気持ちを強く感じました」
――全日本ジュニアの前は自分史上一番追い込んで練習したとおっしゃっていたのですが、具体的にはどのような練習でしたか。
「プログラムの曲かけの練習をひたすらかけて、1日に5回ぐらいかけた日もあって。加点のGOE(出来栄え点)がたくさんつくジャンプやスピンとかの練習をひたすら追い込んでやってきました」
――現在の調子はいかがでしょうか。
「3日ほど前に国体予選(国民スポーツ冬季大会千葉県選手選考会)の試合があって、そこでも全日本ジュニアの演技とほぼ同じくらいの出来の演技ができたので。全日本ジュニアも後から振り返ると、あの緊張感の中であれだけまとまった演技ができたことは、自分の中で相当自信になったので、最近はとてもいい練習ができています」
――最近はどのような練習を中心に取り組んでいらっしゃいますか。
「全日本ジュニアと変わらず、加点がたくさんつく練習をずっとやっているのと、あとは全日本に向けて4回転トーループのハーネスの練習行っていて、全日本までちょっと日数が短いので、全日本までに4回転を間に合わせられるかはわからないのですが、来シーズンシニアに転向していくにあたって、4回転の種類はたくさん持っておかなくてはいけないので、最近は4回転の練習を多めにやっています」
――全日本選手権では4回転を跳ぶ予定はあるのでしょうか。
「間に合うように全力で練習はするのですが、4回転が1日に5本跳べたとかではプログラムの中に入れてジャンプ跳ぶとなった時に、確率が悪くなったりするので、やはり試合に入れていくジャンプというのはもう少し安定感が欲しいです」
――では練習次第ということでしょうか。
「そうですね」
――全日本ジュニアでは中田璃士選手(TOKIOインカラミ)をはじめ、ライバルの方々との交流はありましたか。
「大会期間中ずっとライバルたちと一緒に遊んだりしてとても楽しかったです。試合が終わった後に小河原泉颯くん(岡山理科大学附属高)と森遼人くん(MFアカデミー)と中田くんと、あと西野太翔くん(星槎国際横浜)と僕で吉野家に打ち上げ的な感じで行って。チーズ牛丼を食べました。(お好きなメニューなんですか。)はい(笑)。なので、みんな特盛を頼んでいました」
――小河原選手と会場のお客様のお見送りをされていたと伺いましたが、何かきっかけなどはありますか。
「ジュニア女子の応援が終わった後、みんなで一緒に見ていたので、その他の友達を出口あたりで待っていたのですが、そうしたら観客の方々がみんな帰っていっていたので、なんか挨拶するかってなって、みんなでお見送りしていました」
――シーズン中の息抜きなどは何をしているのでしょうか。
「僕はシーズン中息抜きしてしまうと、もう一回スイッチ入れるのに時間かかったりしてしまうタイプなので。あとは、結構自分を追い込むのが好きで、自分の部屋でトレーニングをずっとしてモチベーションを保っているので、トレーニングが息抜きです」
――来年の2月にはミラノ・コルティナオリンピックが開催されますが、国際大会について意識はしていますか。
「今シーズンは、怪我のことなどもあってジュニアGP(グランプリ)の選考会までに間に合わなかったのですが、今シーズンはこのように調子も上げられてきているので、来シーズンこそはシニアのGPシリーズ、NHK杯とかに出場していきたいです。そのためにも今頑張って練習しています」
――フィギュアのシーズンはまだ続きますが、2025年を振り返ってどんな1年間でしたか。
「2025年は初めての大学生として、最初は練習時間とかとの兼ね合いもいろいろあって両立させるのに苦労して、試合についてはいい試合も悔しい試合もたくさん経験できた1年でした」
――今シーズンのご自身の出来に点数をつけるとしたら、どのくらいになりますか。
「この間の全日本ジュニアとかは、自分の演技の内容は80点ぐらいをあげたいのですが、やはり表彰台に乗れなかった悔しさもあるので、65点くらいかなと思います」
――残りの35点を埋めるためにはどのようなことをしていきたいですか。
「全日本ジュニアは全部堪えというか、頑張ってきたGOEがたくさんつく練習が半分ぐらいしか生かしきれていなかったので、加点がつくエレメンツをこなすことで30点ぐらい、だいぶ大きいので埋められて、あと5点はやはり4回転を跳ぶことだと思います」
――GOEを高くするためにどのような練習を行っているのでしょうか。
「中庭先生(中庭健介氏)から動画を撮ってもらって、チェックの形だったり、ジャンプの降りる角度とかで降りた後の流れとかが全然変わってくるので、そういうところを自分で動画撮って、分析して修正したりをひたすらやってきました。」
――今季はSP(ショートプログラム)とFS(フリースケーティング)の両方で点数を揃えること、特にFSに苦労されていた印象がありますが、その点についてどのように感じていますか。
「僕は結構大きい試合でもSPで2位ぐらいのいい位置につけることができて、でもFSで崩れてしまうということが多かったのですが、今シーズンは後半からFSでまあまあまとめられた演技ができるようになって。なぜFSが弱いのかなと考えた時に、1個目のスピンの後の後半、ちょっとスタミナが消えてきたあたりから、集中力が下がって自分が練習で気を付けてるコツだったりがうまく体で動かせないということが原因だと思ったので、スタミナの部分をたくさん強化してきました」
――メンタル面の強化も必要だと思うのですが、何かやっていることやこだわりはありますか。
「全日本ジュニアは相当な緊張感で、6分間練習とかも心臓がバクバクしてたのですが、自分の本番が始まるまで、更衣室で1人で静かなところで集中したりとか、自分の気持ちの落ち着け方、気持ちをコントロールする方法がだんだん自分の中でわかってきたので、そこはだいぶ大きいかなと思います」
――緊張はするタイプでしょうか。
「結構するタイプですね。自分で自分にプレッシャーをかけてしまう癖とかが昔はあったので。そういうところの克服が成長に繋がったと思います」
――SPは暗い曲が多めだとおっしゃっていましたが、明るい曲も似合っているように感じました。ご自身では明るい曲調と暗い曲調どちらが好きですか。
「昨シーズンまでは失恋系の暗い曲の方が感情を込めやすいなと思っていたのですが、バレエ専門のダンスの方に今シーズンから自分のSPとFSを見てもらうようになってから、明るい曲の踊れるようになったり、大人っぽい、かっこいいイメージで滑れるようになったりしてきて、明るい曲で踊る魅力も今シーズン分かってきたので、明るい曲も好きになってきました」
――トリプルアクセルについては現在どのように取り組んでいらっしゃいますか。
「今シーズンの全日本ジュニアを見ていると、昔はトリプルアクセルはレアなジャンプだったのですが、もうそこらじゅうで全員がトリプルアクセルを跳ぶようになってきていて。また、ジュニアラストシーズンということもあって、トリプルアクセルは必須で決めて当たり前というレベルのジャンプになってきたので、やはり毎試合ちゃんと決めていきたいジャンプです」
――今シーズンのプログラムについて、実践を重ねる中でどのような変化がありましたか。
「SPは、最初は明るく楽しそうに滑っていればいいのかなという感じでやっていたのですが、ダンスの先生に習ってから、ジャズは大人の落ち着いたかっこつけているみたいなところが魅力だと思うのですが、そこをひたすらそのダンスの先生と磨いてきて。ステップシークエンスだったりも結構魅力的になってきたので、そこが大きく変わった部分だと思います。FSは主人公の自由になりたいという感情、怒りの表情だったりを今シーズンの後半からだんだんできるようになってきて、そういう部分がFSの点数に繋がっていると思います」
――表現面で特にこだわっている点はありますか。
「振り付けの宮本賢二先生から、手首が僕は柔らかいタイプで、必要以上に曲げてしまう癖を指摘されて、そこを意識して直したら綺麗な動作が特にFSできるようになりました」
――全日本は特別だとおっしゃっていましたが全日本選手権にはどのような印象をお持ちですか。
「全日本の舞台はやはり特別で、また青い舞台の中心で、たくさんのお客さん方にいい演技を、今年はちゃんとSPもFSもお見せしたいなと思っています」
――今までの全日本について振り返っていかがですか。
「最初に出た全日本は本当にジュニアからの推薦のご褒美みたいな感じで気楽にできたのですが、2年前の全日本でノーミスで滑れてたSPでたくさんの方にスタオベしていただいて、とてもいい景色が自分の頭の中に残っているので、今大会もしっかりSP、FSともに皆さんにスタオベしていただける演技をお見せしたいと思っています」
――全日本には明治大学から佐藤駿選手(政経4=埼玉栄)、三浦佳生選手(政経2=目黒日大)が出場されますが、スケーティングの面で尊敬している点などがあれば教えてください。
「二人ともオリンピック前で忙しくて、あまり会っていないんですけど、尊敬しているところですか(笑)。佐藤選手はジャンプの安定感と4回転ジャンプの軽さ、世界の中でトップクラスに4回転トーループだったりルッツだったりを軽く余裕持った状態で降りてくるので、そういうところはとてもかっこいいなと思っています。三浦選手の一番尊敬している、参考にしてるのはスピード感と迫力ですね。4回転トーループやサルコーをあれほどのスピードで入ってきて綺麗に降りてこれるのは多分三浦選手だけなので、迫力だったりスピードは自分も参考にしたいと思っています」
――自分の強みはどこだと思われますか。
「一番自分の強みだと思っているのは自分の表現力で、今シーズンのFSだったりもひたすらそこに気を付けて、怒りの感情だったり、憎しみの感情、悲しい感情、いろいろな感情を表現できることが僕の強みだと思っていて、曲の物語を僕の演技を見て想像できるくらいの表現力が僕の強みだと思ってます」
――全日本での目標順位を教えていただけますか。
「来年からシニアに上がっていくとなってくると、やはり今年は10位以内に入ることを目標にしていて、ジュニアの中で3番以内に入りたいと思っています。その理由はやはり全日本ジュニアで4位だったのがとても悔しいのと、あとは今年ジュニアGPに出場していないので可能性はかなり低いのですが、全日本でのジュニアのトップ3が総合的に評価されて世界ジュニア選手権に出場が決まるので、僕に0.1パーセントでも出場できる可能性があるなら、それを信じて練習に励みたいと思っています」
――カギとなる要素は何になるのでしょうか。
「一昨日ぐらいに韓国選手権が行われていて、ジュニアの選手がシニアの選手にSP、FS合わせて4回転1本だけで、基本トリプルアクセルなどでシニアの選手に勝っているのとかを見ていると、その方は出来栄え点、GOEがすごくジャッジスコアでついていて、なので僕も本当に加点をつくジャンプをひたすら磨いていけば全然可能性はあると思っているので、加点のつくジャンプ、スピン、ステップを磨いていければいいなと思ってます」
――構成はこれまでと同じような形でいかれる予定でしょうか。
「そうですね。あとは4回転がもし安定してきたらFSの1本目に入れていきたいと思っています。」
――4回転は跳ぶとしたら何のジャンプでしょうか。
「トーループです」
――最後にファンの皆さまに一言お願いします。
「骨折から辛くて苦しい2年間だったのですが、先生方のサポートだったり、仲間たちからの刺激だったり、ファンの応援してくれる方々がいて今の自分がいると思うので、しっかりその感謝の気持ちを込めて、全日本の舞台で皆さんにいい演技をお見せできるように頑張ります。応援よろしくお願いします」
――ありがとうございました。
[藤岡千佳]
※写真は本人提供
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