(68)特別編 早大突撃インタビュー!大田尾竜彦監督「ハードワークしているところを見ていただきたい」

2025.12.02

 5シーズン目を迎えた早大・大田尾竜彦監督にインタビューを行った。昨シーズンの振り返りや今年度のチームの特徴、早明戦に対する思いなどを伺った。

――昨シーズンを振り返っていかがですか。
 「2023年度の全国大学選手権・準々決勝の京産大戦での敗戦を受けて色々なことを見直して、選手とスタッフが一丸となって、佐藤(健次・現埼玉パナソニックワイルドナイツ)キャプテンの下『Beat up』というスローガンを掲げて、強い、負けない早稲田を取り戻そうということで一生懸命戦いました。4年生の引っ張り、頑張りもあって、非常に成長したチームになったなと思います。それまでと違うような姿をたくさんの方に見せられたと思いますし、早稲田の復活にもなったのではないかと思います」

――今年度の早大はどのようなチームですか。
 「去年の流れをしっかり受け継ぎ、さらに経験を積んで今年の4年生の色が出てきていると思います。非常に団結力の強いチームです」

――今年度の早大の強みを教えてください。
 「FWはサイズこそないものの、セットピースが非常に固く、運動量とスキルが備わっている選手が多いです。リーダー陣も昨年度から経験を積んだリーダーが多く、非常にまとまりがあります。BKに関しては、BKラインが昨年度とほとんど変わっていないので成熟度が高く、お互いの特徴を熟知していて非常にいい関係性だと思います。一旦ボールを持って勢いに乗ったら非常にスピードがあるメンバーだと思います」

――今年度の早大が目指すチーム像を教えてください。
 「勝ち切るということ。勝ち切るために、日々の練習の中でしっかり一つ一つのプレーにこだわるということ。そして一致団結するということ。今年の『One Shot』のスローガンに込められたこの三つの意味が今年度の早稲田の目指す姿です」

――今年度で早大の監督を務めるのは5年目ですが、指導やチームの戦略には何か変化などはありましたか。
 「昨年から大きく変わったことはありません。昨年の良かったところを継承しながら、僕自身5年目と年目というところで、学生とのコミュニケーションもより密になっていると感じますし、より自主性とチームのルールで決められた中でやるというところとの調和がよりよくできているように思います」

――野中健吾主将(スポ4=東海大仰星)はどのような主将ですか。
 「昨年度の佐藤健次は、入部した時からこの子がキャプテンになるだろうなというようものを持ち合わせているキャプテンで、世代のトップランナーとして活躍していた非常に分かりやすいタイプの選手であり、リーダーだったなというふうに思うのですが、(野中)健吾はどちらかというと、キャプテンになってだんだんキャプテンシーやリーダーシップを学んで、内に秘めている闘志やラグビーに対しての理解度の高さを発揮しつつ、しっかりとしたリーダーシップを執れるようになってきたなと思います。キャプテンをやりながら成長している人物です」

――野中主将のすごさというのは、監督から見てどのようなところだと思われますか。
 「ぶれない強さがあるところです。どんな時でも非常に俯瞰(ふかん)して物事が見えているので、そういうところでの周りの声掛けにしても、学生の目線とは違う、高いところから物事を見て、みんなに伝わりやすいように発信しているという印象があります。また、コーチングして伸ばしていこうとするときに、しっかりとした軸として野中がいます。服部(亮太・スポ2=佐賀工)や矢崎(由高・スポ3=桐蔭学園)や田中(健想・社会2=桐蔭学園)といった個性的な選手がいる中で、しっかりと中心にいることで、全てのことを理解しながらやってくれていて、彼がいることで周りの選手たちがプレーをしているというような印象がすごく強いので、そういう意味では彼はBKの大黒柱かなというふうに思います」

――今年度の大混戦の関東大学対抗戦(対抗戦)をどうご覧になりますか。
 「今年度の大学4年生の代は、(彼らが)高校3年生の時から見ている世代で、飛び抜けた選手が少なく、全体的にレベルが高いので(優勝争いが)どうなるか分からないというのは花園(全国高校大会)の時から思っていました。今年度が始まるときも、誰かすごく突出したリーダーというのがどの大学、どのチームにもいるわけではなくて、ある程度どこが勝つか分からないような状態になるだろうなと思っていました。ただ、ここまで混戦になるとは思わなかったです。その中でも、やはりキャプテンの存在感がどの大学も一戦ごとに増してきているのは感じます。慶大の今野(椋平)くんとかは本当に春先とは全然違いますし、筑波大の高橋(佑太郎)くんや帝京大の大町(佳生)くんもそうですが、キャプテンの色というものがチームに与えている影響力がここまでくっきりとした年もなかなかないのかなというふうには思いますね」

――対抗戦の中での早大の立ち位置や野中主将の色をどのようにご覧になっていますか。
 「昨年優勝はしましたけれども、一戦一戦、自分たちがどういうふうに成長していくかというものを基本的に大きなテーマとして毎試合に臨んでいて、試合が終わった後に自分たちが何を得られたかということを大事にするために『この試合はこれにフォーカスしよう』ということを毎試合言って、対抗戦は歩みを進めてきました。一貫して、目の前のことに集中して戦うことで自分たちのプレーを出せるし、成長もできるという話をずっとしていたので、そこの一貫性は非常に高いものがあったかなというふうに思います」

――今年度の明大はどのようにご覧になっていますか。
 「春から非常に調子がいいというふうに見て取れていましたし、対抗戦の初戦で筑波大学に敗れはしましたけれども、その中でも自分たちの課題をクリアしながら、しっかりと終盤に向けてチーム力を高めてきているなという印象です」

――明治大学で特に警戒している選手はどなたですか。
 「キャプテン(平翔太・商4=東福岡)もさることながら、やはり昨年から経験を積んでいる選手ですね。柴田(竜成・営4=秋田工)くんと伊藤(龍之介・商3=国学院栃木)くんのハーフ団や、白井(瑛人・商2=桐蔭学園)くんなど、本当に経験を積んでいる選手が対抗戦の終盤になってしっかりとプレーをしている印象なので、しっかりとその辺りは我々も集中して臨みたいと思います」

――昨年度の早明戦を振り返っていかがですか。
 「本当に早明戦らしいと言いますか、自分たちが持っている力をお互い全力でぶつけて、大学生のレベルの高さというのを証明した試合だったのかなと思います」

――監督にとって早明戦はどのような試合でしょうか。
 「その年の自分たちの立ち位置関係なく、やはり4年生の試合だと思っています。お互いの4年生が4年間で得たものを、そこで全てを出す。その後ろには当然試合に出ていない4年生たちもいて、その(試合に)出られない4年生も含めた一体感や、試合に出る4年生は出られない4年生の分も(気持ちを)のせて戦うという、4年生のすべてが詰まったような、そんな試合なのかなという風に思います」

――今年度の早明戦の勝負のカギはどこになると思いますか。
 「一つはやはりスクラムとだと思います。スクラムでどのような戦いになるかというのが勝負かなというふうには思っていますね。どちらが勝つにせよ接戦になると思うので、お互い自分たちがこれまでやってきた色をどれだけ出せるかだと思います」

――早大の注目ポイントを教えてください。
 「今年のチームに関しては、あまり多くのことはできないですけれども、非常に集中力高くプレーすることができるので、とにかくハードワークしているところを見ていただきたいですし、自分たちの持っている粘り強いディフェンスにも注目してもらいたいです」

――ファンの方へメッセージをお願いいたします。
 「いつも応援していただき本当にありがとうございます。早明戦は、両校のラグビー部だけではなく、観客の方もいて初めて作り上げられるような、そんな大学ラグビー界のビッグマッチです。本当に両校の学生も力の限り戦いますので、ぜひ両校に温かいご声援をよろしくお願いします」

[加藤晃誠]

◆大田尾 竜彦(おおたお・たつひこ)平16人卒
現役時代はスタンドオフとして活躍。早大卒業後は当時のヤマハ発動機ジュビロ(現静岡ブルーレヴズ)に所属し、トップリーグ通算150試合以上に出場。現役引退後はヤマハ発動機ジュビロでコーチを務め、2021年度より早大ラグビー部監督に就任した。