(62)~The road to Recapture~ 後藤剛志「みんなとの時間を大切に」

2025.11.26

 「最後の1分1秒までスキを見せず、全力を尽くす」。平翔太主将(商4=東福岡)がスローガンである『完遂』に込めた意味だ。関東大学対抗戦(対抗戦)、全国大学選手権(選手権)制覇の渇望を胸に、ラグビーに向き合ってきた4年生は明大での日々を振り返って何を語るのか。4年間の総括とラストシーズンの意気込みを伺った。11月7日より連載していく。

第20回は後藤剛志主務(法4=茗渓学園)のインタビューをお送りします。(この取材は11月4日に行われたものです)

――スタッフをする以前はプレーヤーだったと思いますが、始めたきっかけと時期を教えてください。
 「ラグビーを始めたのは幼稚園年長ぐらいで、きっかけは幼稚園で過ごしている姿を見て、周りのお母さん方が、あの子にぴったりなスポーツがあると言って紹介してくれました。(自分は)多分どうしようもなかった幼稚園児だったので、それを見てラグビー(体験)に行ったら楽しくて始めました」

――プレーヤーから明大ラグビー部の学生スタッフになろうと思った理由を教えてください。
 「明治のラグビー部はスポーツ推薦が多いと知っていたので、その中でラグビーはもうできないというのは分かっていたのと、そこまでやっていける自信もありませんでした。体育会のラグビー部入るなら、スタッフをしようかなというのは決めていましたが、やっぱり本気で日本一目指す集団の中で4年間頑張りたいなっていうのはありました。最初はサークルに入るかもめっちゃ迷いましたし、他大学で普通にラグビーを続けるか迷ったんですけど、最後は本気で日本一を目指す集団でやってみたいというのもあって入部しました」

――プレーヤーからスタッフになって、新たに気づいたラグビーの魅力はありますか。
 「スタッフになってからは違った魅力というよりかは、プロの大人のコーチがいっぱいいらっしゃる中で、自分がやっていた時よりも知識が増えたかなと思っています。あと、僕は元々BKなんですけど、2年生の時からFWコーチをやっていて、スクラムやラインアウトのことは正直全く分からなかったんですけど、いろいろ教えていただいたおかげで少しずつ分かるようになってきて、ラグビーを見る時にセットプレーが見てて面白くなったので、最近は新しい視点が増えたと思います」

――4年間で大変だったことはありますか。
 「学生コーチになった2年生の時に、ヘッドコーチから下のチームのスケジュールや練習の組み立てを全部任せられた時はしんどかったです。それと同時に、相手の分析とかも任せられたので、選手の前で発表したり、コーチの前で発表したりというのは、2年生の僕には結構しんどかったなっていうのはあります」

――分析したことが試合でうまく機能した時は喜びも大きいですか。
 「めちゃくちゃうれしいです。前の慶應戦のラインアウトは、FWコーチの方と一緒に慶応のラインアウトを見て、ジュニアメンバーに慶応のラインアウトの動きを全部コピーしてもらって、多分これが来るからこんな動きをしてもらおうかみたいにサインを絞りながらやったことで、ラインアウトでプレッシャーをかけることができたのはすごくうれしかったです」

――学生コーチとして意識していることを教えてください。
 「チームが静かになってしまうこともあるので、とにかく僕は全力で声を出して、少しでも周りのみんなに何か言えたらなと思って、声を出して応援しています。グラウンドの中に入った時は逆に、トライを取られた後とかは選手が焦ったりしている時もあるので、そこは自分も一緒に焦らず、熱くなりすぎずというのは意識しています。あとは基本的にコーチ陣から言われたことを伝達することが多いので、正確にみんなに正しい情報をあげられるようにというのは、熱くなりつつもしっかり冷静であるところは意識しています」

――主務になって大変だと思うことはありますか。
 「学生コーチ、レフリーもやっているので、グラウンド関係、ラグビーのことでやることと、競技とは別にマネジメントでやることがどっちもこの時期になると多くなってくるので、そこの両立が難しいなと感じています。ラグビーもシーズンが深まってくると、相手校の分析とか、チーム内の選手とのコミュニケーションなどやらないといけないことはすごく多くなっていくので、そういったラグビーに直接関係する部分と、外部とのやり取りだったりとか、いわゆる主務がやる仕事とのバランス、両立が難しいなというのは最近すごく感じています」

――ご自身のチームにおける役割はどのように考えていますか。
 「選手たちとコーチ陣とのつながりが切れないように、選手たちが今どう思っているか、選手たちとコーチ陣とのつなぎ目になれるようにというのは常に意識していることではあります。主務という立場としては、選手たちが競技に集中できるように、他の余計なこと考えなくていいように、ラグビーのことだけ集中できるように、他の準備はしっかり完璧にしてあげるというのは自分の役割かなと思います」

――4年間活動を続けられた要因を教えてください。
 「やっぱり一つは『日本一を経験したい』という思いがあって入部したので、それに向かってやることは頑張れるかなというモチベーションがありました。また大学生活はバイトをしたり、いわゆる普通の大学生活を送ることもできる中で、スタッフという形で部活をやりたいというのを自分で選んだのもありますし、毎月の部費とか寮費とか、その他色々ラグビーに関係するお金を、自分がバイトもできない中で親に出してもらって、ずっと頑張れと言ってくれる家族がいるので、そこは原動力になっているのかなと思います」

――同期の存在はいかがですか。
 「仲がいい同期には最近困ってることとか、こんなことがあってみたいな相談も話したりしていて、そういう意味ではすごく話を聞いてもらったりもしますし、休みの日はみんなで一緒にどこかに出かけたりすることも多いので、同期がいないと僕は絶対今までやってこれなかったと思いますね。本当に同期がいたから、今も頑張れてるなというのはすごく思います」

――後藤主務にとってスローガンである『完遂』の意味はどのようなものですか。
 「僕はラグビーにおいてもオフフィールドにおいても最後までやり切る、シンプルにそれだけかなと思っています。ラグビーだったらこういうふうに戦うと決めたことを80分間最後までやり続ける。フィールドの部分で1年間、ラグビーがうまくいってても、いってなくても、オフフィールドでやらないといけないことは変わらないですし、そういう部分を最後までやり切るという意味かなと思います」

――残りのシーズンに向けての意気込みをお願いします。
 「やっぱり最後は絶対に勝って優勝して終わりたいです。みんなと一緒にラグビーしたりグラウンドに行ったり、寮生活する時間も長くて2カ月ぐらいだと思うので、みんなとの時間を大切に、悔いのないようにやり切りたいなと思います」

――ありがとうございました。

[晴山赳生]

後藤 剛志(ごとう・たけし)法4、茗渓学園高。
4年間の寮生活は「最高だった」そう。「最近は隣の部屋の竹之下仁吾(政経3=報徳学園)が毎日自分の部屋に来て、たまに帰ってきたら自分のベッドで寝てたりしてます(笑)。めちゃくちゃ楽しかったので、社会人になって1人暮らしになったら、帰ってきて誰も喋る人がいないのかと思うと寂しいです」