(83)再び箱根路へ 大志田新体制、勝負の大一番/箱根駅伝予選会展望

2025.10.17

 昨年度は全日本大学駅伝予選会(全日本予選)で次点、箱根駅伝予選会(箱根予選)でもわずかに届かず、大学駅伝の舞台から姿を消した明大。主力の不調が重なり、苦しい一年となった。しかし今年度は、東京国際大駅伝部を一から築き上げた大志田秀次駅伝監督が新たに指揮を執り、再出発の年を迎えた。チーム全体の状態は着実に上向いており「箱根予選に向かう気持ちを昨年度より作れている」(堀颯介・商4=仙台育英)と選手たちは口をそろえる。例年以上に準備の整ったチームが、再建の第一歩を踏み出す。

 カギを握るのは、4年生の復調だ。吉川響(文4=世羅)、堀、森下翔太(政経4=世羅)の3人はいずれも箱根駅伝経験者で、いまやチームのエース格を担う。前回の箱根予選では吉川がチームトップ、堀は2年連続で全日本予選の最終組を任されるなど勝負強さを発揮している。特に堀は「速いペースでも対応できており、調子が上がっている」(桶田悠生・政経1=八千代松陰)とチームメートが太鼓判を押す。森下も「しっかり練習を積めている」と仕上がりは良好で、エースとしての走りが期待される。吉川は過去の箱根予選でも毎年チーム上位を走る安定感を誇り「今年もやってくれるはず」(河田珠夏・文1=八千代松陰)と後輩からの信頼も厚い。

 一方で、下級生の台頭も明るい材料だ。2年生では井上史琉(政経2=世羅)が全日本予選で健闘し自己ベストを更新。「ずっとアベレージが高く練習できている」(堀)と4年生からの評価も高い。土田隼司(商2=城西大城西)も昨年度の箱根予選で93位と好走し、安定感を示した。3年生の大湊柊翔(情コミ3=学法石川)もケガから復活し、チームの戦力に厚みを加える。さらに、岩佐太陽(商1=鳥栖工)、桶田ら将来性豊かな1年生も加入。夏合宿で大きく成長し、主力に割って入る勢いを見せている。経験豊富な上級生の意地と、勢いある若手の挑戦心がかみ合えば、予選突破は決して夢ではない。

 とはいえ、箱根路への道は容易ではない。今回の箱根予選では、立大、中学大、法大、神大、専大、山梨学大、日大、東農大などが明大のライバルとなると予想される。いずれも留学生や日本人エースを擁するチームが多く、一人で大きくタイムを稼げる選手がいる。一方明大には、突出したエースはいない。だが、それこそが強みでもある。誰か一人に頼るのではなく、全員が「自分の役割を果たす」ことで戦うチーム。大きなミスをせず、全員が堅実に走り切れば通過ラインは見えてくる。

 昨年度のような気温の上がる厳しいコンディションもあり得る中、冷静さと粘り強さが勝負を分ける。再建を託された大志田体制の下、準備を積み上げてきた紫紺の12人が新たな歴史を刻む。ここ数年悔しさを味わってきた明大競走部・長距離部門が、再び箱根駅伝の舞台へ。その第一歩を踏み出す瞬間が、立川の秋空の下で訪れる。

[下田裕也]