長谷川慶 箱根を駆ける覚悟

2025.09.22

 今春、静岡県出身の長谷川慶(営1=韮山)が明大競走部の門を叩いた。速さと安定感を兼ね備え、今後の活躍が期待される彼は確かな実力を示してきた一方で、勝負の舞台では悔しさを味わうことも少なくなかった。努力を糧に成長を遂げてきた彼が次に見据えるのは、大学駅伝の大舞台・箱根駅伝だ。

挫折から芽生えた覚悟
 陸上を始めたきっかけは小学校のマラソン大会。優勝したい一心で陸上教室に通い始めた。だが中学3年時の県選抜大会では全国標準にわずかに届かず、「あと一歩」の悔しさがわすれられなかった。胸に残ったその無念さが、高校での取り組みに火をつけた。進学先に選んだのは文武両道を掲げる韮山高校。チームは楽しく取り組む雰囲気で、顧問からは「明るく声を掛け合え」という言葉が日常的に飛んだ。現在、東洋大で活躍する木村隆晴選手をライバルと定め、彼を追い抜くことを日々の目標にした。「どうすれば勝てるのか」と自ら課題を見つけ、坂道や反復走に取り組んだ。悔しさをバネにした猛特訓の積み重ねが、彼の代名詞ともいえる粘り強さを形づくった。

主体性を育んだ大学での日々
 明大競走部に入部した当初は「チーム状況に対して不安があった」と胸中を明かす。だがいざ入ってみると先輩方は明るく優しく、さらに「昨年の敗北を悔しく思っている選手が多い」と感じ、その姿勢に刺激を受けた。自然と強くなりたいという思いが芽生えたという。チームの誰もが真剣で、同期も熱心に練習へ取り組み互いに刺激を与え合う関係だ。しかし、大学入学後の練習は順風満帆にはいかなかった。ケガで思うように走れない時期もあり、補強や体の使い方を自ら考えるようになった。その試行錯誤の中で養った「主体性」が大学生活での最大の成長だと自負する。さらにレースでは周囲を観察し、スパートをかけるタイミングを見極める冷静さも身につけ、着実に力を磨いてきた。

箱根5区への憧れと未来への誓い
 目標は箱根駅伝。希望するのは「山の5区」だ。地元・御殿場で坂道に親しんできた経験が自信の根拠となり、同郷の名ランナー・吉田響氏への憧れもある。座右の銘は「地に足をつけて取り組む」。高校時代の顧問の言葉を胸に、浮かれず謙虚に練習を積み重ねる姿勢は、彼の人柄そのものを表している。競技外では睡眠を最優先。リラックス法は同期の選手たちとの食事やゲームといったコミュニケーションだ。「4年時に3位以内を達成しないと、箱根優勝は難しい。自分たちが黄金世代のように、新たな強い組織を築いていきたい」と力強く語る。大学4年間でチームを大きく飛躍させ、4年時には3位以内へ。任された区間で勢いをつける走りを誓い、箱根路を駆け抜ける覚悟だ。これからどんな活躍を見せてくれるのか。長谷川の活躍に目が離せない。

[下田裕也]

◆長谷川慶(はせがわ・けい)営1、韮山高校。今年の目標は結果で恩返しすること。168㌢・49㌔