
(9)シーズン直前インタビュー 江川マリア
いよいよ本格的なシーズンが始まる。明大の新戦力として氷上に立つ選手もいれば、今季が節目のシーズンとなる選手もいる。4年に一度の五輪シーズンを迎え、リンクにはいつにも増して緊張感が漂う。新しいシーズンを前に、彼らは何を思うのか。本インタビューでは、その胸の内をお届けする。
(この取材は9月4日に行われたものです)
第7回は江川マリア(政経4=香椎)のインタビューです。
――最近はどのように過ごされていますか。
「そうですね、一応夏休みはあるのですが、そんなに生活リズムが変わらず、学校に行くことが春もそんなに多くなかったので、いい練習を積めているかなと思います」
――夏休みはどのように過ごされましたか。
「8月は二つ大会に出場したのと、明治合宿と、あと少し帰省もしたりして、結構バタバタしてたかなという感じですね」
――8月はサマーカップと東京夏季大会に出場されました。連戦でしたが、体の方は疲れなどはなかったですか。
「そうですね。もう帰る時がその間しかないなと思って、その間に帰省もしたんですけど、帰省中も練習は結構積んでいて。大体いつも帰省した時はすごくリラックスできているのですが、結構体が疲れていて。心のリフレッシュは取れたのですが、思ったよりなかなか体のリフレッシュができないなという実感はありました」
――帰省中の思い出は何かありますか。
「いつもお盆の時期に帰れることが少なくて、今回久しぶりにお盆の時期に帰れたので、お墓参りにもちゃんと行けたし、あと福岡にいるいとことか、あまり会う機会が少ないのですが、ちょうどお盆中というのもあって予定が合って会えたりしました。すごく充実した帰省だったかなと思います」
――ご友人と遊んだりはされましたか。
「そうですね。地元の友達とも会ったりできたりしたので。一応オフシーズンではないので、練習は進めながらという感じで。そんなにたくさんは会えていないですけど、心はすごくリフレッシュできたので良かったかなと思います」
――出場された大会についてお聞きしたいのですが、サマーカップについてはいかがでしたか。
「サマーカップは結構自分の中で収穫というか、練習でやってきたことが出せた試合だったので、すごく自信につながる試合になったかなと思っています」
――新SP(ショートプラグラム)の『アヴェ・マリア』についてサマーカップではいかがでしたか。
「今年からちゃんと入れ始めたフリップトー(ループ)の確率はすごく上がっているのですが、京都ではミスをしてしまったので、あそこ以外はスピンとかのレベルも取れていたし、その時期にしては、フリップトー(ループ)以外はまとめられた演技だったんじゃないかなと思います」
――FS(フリースケーティング)の出来栄えとしてはご自身の中でどのように思われましたか。
「滑りはまだまだたくさん伸ばすところがあるなとは感じているのですが、エレメンツに関しては今中心に練習してるのもあって、すごく出来栄えのいいジャンプを全体的に決められたので良かったかなと思っています」
――東京夏季大会のSPは好演技だったと思いますが、いかがでしたか。
「夏季はサマーの時に1個目のフリップとさっきも言ったフリップトー(ループ)を少し失敗してしまったのもあって、そこは確実に決めたいなと思っていたので、そこを決められたのはすごく良かったです。でもジャンプに集中しすぎていたのもあって、スピンのレベルの取りこぼしがすごく多かったので、次のブロック大会からそういうことはないようにしたいなと。ちゃんと収穫、学びがあった大会だったかなと思います」
――東京夏季大会でのフリップとトーループのコンビネーションはGOE(出来栄え点)も高くついていましたが、得意なコンビネーションでしょうか。
「今年はこのフリップトー(ループ)にこだわってというのもあって、今まで5、6年ぐらいずっと、特にSPは単独でフリップとルッツどちらか入れてることはあったのですが、3回転3回転の連続ジャンプはトーループトーループの3、3しか組み込んでいなかったので、今年は何か少しでも自分の中で変化を起こしたいなというのもあって、ずっとフリップトー(ループ)で取り組んでいくという感じです」
――FSの方ではジャンプが乱れてしまったという印象ですが、いかがでしたか。
「そうですね。やはりサマーの前よりは調子というか、練習の強度も少し下げてはいたので、下げてもなかなか疲れが取れなかったりして。スケーターの中では最年長ではないのですが、もう上の方であるので(笑)。普通の人たちから見たら、『まあまだ若いよ』とか、『社会人と比べたら若いよ』と言われるかもしれないのですが、やはり体の回復する速度が少し遅くなってるなというのは、少しそこで実感しましたね」
――明治の合宿に参加されたということですが、今年はどんなことをされましたか。
「今年は自分が最年長という自覚はあって、自覚はありつつも、もう一番楽しみたいというぐらいの気持ちでした。特に男子と女子は結構全部の練習が分かれていて、女の子たちと接する機会の方が多かったですが、全員がそんなふうに集まれる機会というのはなかなかないので、4年生だけではなくてみんなで、アイスクリームの牧場とかに行ったり、みんなを巻き込ませて楽しみました」
――後輩や同級生の皆さんとはどのように過ごされましたか。
「特に自分が4年生になってみて、あまりそんなに4年生の威厳というものはないかなと思っているのですが、でもそれも一ついいことというか、親しみやすいという意味でいいことかなというふうには捉えています。同級生ほどの近さではないとは思いますけど、できるだけ距離が近くて、友達ぐらいの感じで何でも話せる関係性になればいいなというふうに考えて接していて。できるだけ自分から声をかけるようにとかも、少し意識はしていたかなと思います」
――仲が深まったという実感はありましたか。
「普段、大会と部練くらいしか関わる機会がないかなと思うのですが、部練もやはり平日にあるので、みんな学校の都合があったりしてなかなか来れなかったりするので、多くそろったというのが自分自身すごくうれしかったですね」
――改めてSPについて説明をお願いします。
「そうですね、このSPは本当に今までずっと自分がいつか滑りたいと思って温めていた曲で、皆さんも多分お気づきだと思うのですが、自分のマリアという名前がこの『アヴェマリア』から取られた名前なので、そういう思い入れもあって。お母さんがこの曲が好きで自分の名前をマリアと名付けてくれたのですが、お母さんへの感謝の気持ちというのも込めて滑りたいなというのもあって、今年この曲を選曲しました」
――『アヴェマリア』はいろいろな方がカバーされていると思いますが、バージョンについてはどうやって選ばれましたか。
「本当にこの曲は有名な曲なので、たくさんのアレンジされている曲があったのですが、自分のイメージとして、見てる人が自分の演技を見終わった後にすごく、本当に穏やかな気持ちになるような、そんなプログラムにしたいなという気持ちがありました。優しいボーカルと、あと少しクラシカルな雰囲気をイメージして選びました」
――衣装についてはいかがですか。
「衣装は前にFSで『レ・ミゼラブル』を滑っていた時に着ていた衣装で、仮の衣装です。ブロック大会に完成はできていないかもしれないですが、新しい衣装で滑るかなと思います」
――SPの中でこだわりのポイントなどはありますか。
「そうですね。SPはもう全ての三つのジャンプが滑りに溶け込む振り付けになっているので、あまりジャンプに関してもそんなに跳ぶぞ跳ぶぞ感を出して飛ばないように、ちゃんと曲に馴染むようにというのを全体的に意識しています。全体的に優しい曲調ではあるのですが、アクセルを着氷したところから盛り上がりのパートに入るので、そのパートからステップをやって、最後二つのスピンまで、駆け抜けるように滑っていければいいなと思っています」
――振付師のキャシー・リードさんから言われたことはありますか。
「振りの形というよりも、目線とか音の取り方というのを中心的に多くアドバイスしていただいたかなと思っています」
――FSは『トゥーランドット』ですが、継続を決められた理由についてお伺いしてもいいですか。
「やはり全日本選手権(全日本)でいい演技ができたらもう新しく変えていいかなという気分にいつもなるのですが、去年やはりFSがすごく悔しい演技で、ちゃんと完成系の『トゥーランドット』を全日本でやりたいというのが継続することに決めた理由かなと思います」
――昨年度に比べて踊りこなせている部分というのは増えてきましたか。
「やはり2シーズン目というのもあって、もう体には染み込んでいます。去年は力強い動きいうのが難しくて、上半身の動きが意識する場所のメインになってしまって、まだ足元が少し不安定だったかなという感じはしていて。今年は余裕も出てきているので、ちゃんと足元から『トゥーランドット』の重厚感というものを出していけるように練習しています」
――足元からということで、練習では具体的にどういうものを練習されていますか。
「特に普通の基礎的なスケーティングの練習でも、ただするするするではなく、ちゃんと乗る位置を感じながら、一番力が入る位置にしっかり乗って滑るというのを練習しています。プログラムで力強い滑りをしたいとなった時に、そうすることでうまく出せるんじゃないかなと思っています。振り付けよりも、今は滑りを気をつけて練習しているかなという感じです」
――スケーティング面の技術について成長を感じるものはありますか。
「そうですね。やはり22歳ってスケーターで言ったらだいぶベテランかなとは思うのですが、毎年滑る歴が長くなるごとにスケートが本当にうまくなるんだなというのは自分でも実感していて。一番はさっきも言ったのですが、結構乗る位置を気をつけて練習しているので、自分の100の力を出さなくても、しっかりとスピードを出していけるようになりました。特にFSだとジャンプの後半までそのスピードを保てるという意味で、後半のジャンプが最近安定してきているのにつながっているのかなと感じてます」
――今シーズンすでに試合をいくつかこなしてきての感触はいかがですか。
「毎年今の時期は、自分の中で試合のルーティーンを探っているところで、特にブロックまでは探っている時期です。自分のフィジカルも毎年変わるので、ルーティーンとかもその時によって変えていく必要があると思っていて。それが定まってきているので、練習でやってきたことを試合でちゃんと出せる機会が多くなってきたなというのは感じてます」
――今シーズンはブロック大会をはじめ新しくできた辰巳アイスアリーナで滑ることが多く、いつもと違う感触になるかなと思うのですが、その点はどのように思われますか。
「氷に関しては、もう滑ってみないとわからないので、そこまで心配する必要もないというか、心配してもどうしようもないかなという感じです。まだリンク自体には行ったことがなくて、聞く話には客席がたくさんあって広いリンクというふうに聞いているので、すごく楽しみだなと思います」
――今シーズンの意気込みはいかがでしょうか。
「今シーズンは大学4年生ということで、節目の年と思って1シーズンを過ごします。一試合一試合悔いのない演技をしていけば、全日本でどういう演技だったとしても、あまり後悔が残らないんじゃないかなというふうにも感じています。これはずっと言ってるのですが、一番は今シーズンを楽しむ気持ちを忘れないでやりたいなと思っています」
――最後にファンの皆さんに向けたメッセージをお願いします。
「いつも本当にたくさんの応援やメッセージをいただき、大会で声をかけてくださって本当に感謝しています。毎試合毎試合楽しむという気持ちも、ファンの方々や観客の方々が声援をくださるからこそできることだと思うので、ファンの方々のその声援に感謝しながら今シーズン滑っていければいいなと思っています」
――ありがとうございました。
[橋本太陽、大島菜央]
※写真は本人提供
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