明治大学博物館学生広報アンバサダーインタビュー(後編)/オープンキャンパス号特別企画

2025.08.02

 明大スポーツ第548号(オープンキャンパス号)にて、明治大学博物館を特集しました。今回は、明治大学博物館学生広報アンバサダー(以下、アンバサダー)の木下奈映さん(文3)、上村菜摘さん(国際2)、長屋佳奈さん(文2)、津島聖也さん(情コミ2)にお話を伺いました。

(このインタビューは6月24日に行われました)

――『虎に翼』に関連して、実際に取材を受けたと伺ったのですが、どのような内容でしたか
木下 「NHKの朝の連続テレビ小説『虎に翼』の放送に合わせて、千代田区マップというのを作りました。千代田区の神田神保町や御茶ノ水エリアにあるカレー、本、楽器、スポーツなどの専門店を紹介する冊子を作成しました。モデルとなった三淵嘉子さんは、この地域にある明大の卒業生なので、彼女が在学していた1930年代から続いているお店を中心に、大学周辺の老舗をまとめた内容になっています。実際にこれがテレビや新聞の取材につながりました。この冊子は、明治大学博物館だけでなく、取材にご協力いただいた各所にも配布していたのですが、とても好評をいただき、何度も増刷しました。放送から1年近く経った今でも、博物館に訪れた方が手に取ってくださることが多くて、さすがNHKの朝ドラの影響力だなと感じました。それと同時に、私たちが本当にいいものを作れたという自信にもつながっています」

――『虎に翼』を実際にテレビで見てみて、どのような印象でしたか
木下 「我が家では、放送開始前から朝ドラを見るのが日課だったので、自然な流れで『虎に翼』も見始めました。やはり、自分が在学中に母校の卒業生がモデルになったドラマをリアルタイムで見られたことは特別な経験でした。作品としても本当に素晴らしくて、完成度の高さを改めて感じています。テーマが“女性の社会進出”ということもあって、自分自身の悩みや問題意識とも重なる部分が多くて、毎朝このドラマから元気をもらっていました。背中を押されるような、そんな半年間でした」

――アンバサダーとして、マップ以外に『虎に翼』関連で行ったことがあれば教えてください。
津島 「明治大学博物館としては特別展を開催していましたが、アンバサダーとしてのメインは先ほどのマップです。マップの制作を兼ねて、いくつかの取材も受けました」

木下 「小田原にある“甘柑荘”という建物にも関わりました。ここは三淵さんが過ごした別荘で、一般公開されるようになったのをきっかけに、そのPRにも協力しました。博物館と甘柑荘の両方を訪れると景品がもらえるキャンペーンも実施したのですが、それも大好評で景品はすぐになくなってしまいました。私たちアンバサダーは、その景品を空きコマに手作業でせっせと作っていました。在庫が減ってきたからまたお願い!と職員さんからLINEが来て、みんなで作っていたのもいい思い出です。あと、伊藤沙莉さんや仲野太賀さんが実際に明大を訪れて、収録が行われたときには、私たちもお手伝いをさせていただきました。収録の現場を見学できて、とても貴重な経験でした。沙莉さんのことがさらに大好きになって、思わずインスタグラムもフォローしてしまいました(笑)」

津島 「他にも、明大法学部の村上一博先生と一緒に、小田原の中学校で『虎に翼』に関する講演会にも参加しました」

――続いて山の上ホテルについてもお聞きしたいのですが、そもそもどのような施設なのでしょうか。
津島 「山の上ホテルは1937年に『佐藤新興生活館』として建設されたのが始まりです。その設立者が、1890年に明治法律学校(現:明大)を卒業したのち、炭鉱経営者として大成功された佐藤慶太郎さんでした。その後、“自分が築いた財産は社会の預かりものである”という理念のもと、生活館を建てて自らの財産を社会に還元されたんです。そして、1954年に本格的にホテルとして営業が始まりました。川端康成、三島由紀夫、池波正太郎など、多くの文豪に愛された場所としても知られています」

――明大とのつながりという点では、どのような関係があるのでしょうか。
津島 「まずは先ほどの佐藤慶太郎さんの存在ですね。彼は明大の卒業生であり三淵嘉子さんとも関わりがあって、明大女子部の設立にも寄付という形で支援をしていました。また、東京都美術館の建設にも尽力されるなど、多方面で文化支援をなさってきました。そうした活動の一環として山の上ホテルが建てられた方というのが明大との大きな関わりになります。そして、2024年11月15日に、明大が山の上ホテルの土地と建物を“継承”という形で取得しました。2031年に迎える創立150周年の記念事業として再整備が進められていて、ホテルとしての機能を保ちつつ、学生支援や地域連携、社会貢献といった面でも活用される予定です」

――山の上ホテルと博物館、そしてアンバサダーの活動とはどのようなつながりがありますか。
木下 「現在、アンバサダーとして関わっている企画の一つが重ね捺しスタンプラリーです」

津島 「大学全体では文化継承をテーマにした企画展が複数行われています。たとえば、リバティタワーの23階では、大学史資料センターが主催する“文化の香りの継承展”が開催中です。また、図書館主催で、川端康成や三島由紀夫の展示が図書館入口のギャラリーでも行われており、これらを全て巡ると一つの絵が完成する仕組みになっています」

――重ね捺しスタンプラリーとはどのようなものでしょうか。
木下 「この企画は、明大と山の上ホテルの関係性を広く周知することが目的です。学生にも知ってもらいたいという思いから、キャンパス内のさまざまな場所にスタンプポイントを設置しました。あえて場所をばらばらにしているのも、キャンパス内を巡ってもらうためです。スタンプの台紙は5色のかわいい箱で配布していて、完成後のお楽しみもあるような素敵なデザインになっています。スタンプ設置場所は、めいじろうショップや、博物館内の阿久悠記念館の常設展示室、 リバティータワー1階にある中央図書館入口の中央図書館ギャラリー、そしてリバティタワー23階の岸本辰雄ホールなどです。岸本辰雄ホールからの眺めもすごく綺麗なので、ぜひ立ち寄ってみてほしいです。このスタンプラリーを通してキャンパスを巡ってもらいながら、山の上ホテルとのつながりも自然に感じてもらえたらと思っています」

――今後アンバサダーとして押し出していきたいイベントがあれば、ぜひ宣伝をお願いします。
長屋 「『子どもれきしアカデミー』という企画があって、これは千代田区の小学生を対象とした体験イベントです。明治大学博物館に若い世代の来館者が少ないという課題を踏まえて、“子どもたちに博物館をもっと身近に感じてもらいたい”という目的で昨年の夏から始まりました。授業ではなかなか体験できないような活動、例えば実際に手を動かして何かを作ったり、それを家に持ち帰って家族や友達と感想を共有したり、記憶に残るような学びを届けたいと考えています。昨年度は縄文土器をつくってみようというワークショップを実施しました。アンバサダーが事前に色をつけた紙粘土を使って、小学生が自由に土器を作ったのですが、なぜか『土器を作っていたら埴輪になっちゃった!』というハプニングもありました。アンバサダーと参加者の会話も弾み、良い雰囲気の中で体験ができていたと思います。事後アンケートでも『楽しかった』『また別のものを作りたい』という声が多く寄せられたので、今年度も夏に開催予定です」

津島 「もう一つ、広報系の取り組みで“大学博物館をアンバサダーが巡る”というnote記事企画があります。この企画のポイントは、“大学生の視点”で書かれていることです。学術的な解説以上に『いま大学生の自分がどんなことを感じたか』というリアルな目線を大切にしています。読んでくれる人、特に同世代の学生が『博物館に行ってみようかな』と思えるようなきっかけになればと思って取り組んでいます。実際にそれがきっかけで、共立女子大学博物館とのつながりが生まれたりもしました。これからも記事を順次公開していく予定で、これから投稿が増えていくと思います。ぜひご注目いただければうれしいです」

木下 「子どもれきしアカデミーは、私が昨年度立ち上げた企画です。今年は後輩がリーダーを引き継いでくれて、アンバサダーの目玉行事として、もっと大きく育てていけたらと思っています」

――高校生や受験生に向けて、メッセージを一言ずつお願いします。
津島 「一番は、明治大学博物館のことを知って、ぜひ一度足を運んでいただきたいということです。駿河台キャンパスや御茶ノ水・神保町に来たときに、ちょっとだけ時間があったら、ふらっと立ち寄ってみるくらいの気持ちで構いません。無料ですし、気軽に来ていただけたらそれが入口になると思うので、高校生の皆さん、お待ちしています!」

長屋 「初めて明治大学博物館を訪れたとき、展示が3部門に分かれていて、それぞれ見応えがありました。これだけの展示を一度に見られる大学博物館は、なかなかないと思いますので、ぜひ多くの高校生に行ってみて良かったと感じてもらえたらうれしいです。今後もアンバサダーとして情報発信を続けていくので、良かったらチェックしてみてください!」

上村 「オープンキャンパスに来た高校生にとって、仮に明大に入学したとしても、駿河台キャンパスに来る機会が最初はあまりないと思います。でも、今回の訪問をきっかけに、博物館だけでなく山の上ホテルや御茶ノ水の街そのものにも触れて、“この街、いいな”と感じてもらえたらうれしいです。実際に来て、体験してもらいたいですね」

木下 「たぶん今この新聞を読んでいる高校生たちは、明治に来るかは分からないけれど、きっと毎日、家で教科書や参考書を開いて一生懸命勉強していると思います。そんな中で、博物館も“学びの場”なんだということを知ってほしいです。もちろん、遊びに来るのでもいいのですが、教科書で見た“本物”に出会える場所でもあります。明治大学博物館には、教科書に載っているような展示品もたくさんあります。ぜひ一度、肩の力を抜いて、目線を少し変えて、“本物を見に行く”という体験をしてみてください。もしそれで明大に興味を持ってもらえたら、私たちとしてもうれしいです」

津島 「もし、博物館を通じて企画に関わってみたいとか何か面白いことをやってみたいと思ってもらえたなら、気軽に来てください。息抜きにふらっと行ってみるくらいの気持ちでも大丈夫なので、ぜひ!」

長屋 「普段の活動もnoteなどにまとめて発信しています。明治大学博物館アンバサダーでぜひ検索してみてください!」

津島 「最後に、アンバサダーは学芸員課程を履修している人しか入れないと思われがちなのですが、実は全然そんなことはなくて。博物館にがっつり興味がある人もいれば、趣味として好きという人もいます。本当にいろいろな人がいるので、ぜひ気軽に関わってもらえたらうれしいです」

――ありがとうございました。

[聞き手:安田賢司]