(28)シーズン後インタビュー 佐藤駿

 各選手がさまざまな思いを抱え駆け抜けた今シーズン。全日本フィギュアスケート選手権(全日本)に6人が出場、日本学生氷上競技選手権(インカレ)では男子が団体部門で優勝を果たすなど活躍した1年となった。本インタビューではシーズン後の選手たちの声をお届けする。

(この取材は7月2日に行われたものです)

第6回は佐藤駿(政経4=埼玉栄)のインタビューです。

――ドリームオンアイスお疲れ様でした。仲のいい鍵山優真選手(中京大)と共演しましたが、何かお話をしましたか。
 「久しぶりに会ったので、夜ご飯を一緒に食べに行ったりとか。まあ、深い会話はしていないんですけど、久しぶりに会えたのでうれしかったかなと思います」

――昨シーズンのお話に移ります。とても忙しいシーズンだったと思いますが、振り返っていかがですか。
 「昨シーズンは本当に試合数も多かったですし、後半とかは特に連戦で、きつい部分もあったんですけど、シーズン通してケガなくやりきることができたというのは、すごく大きかったですし、自分の中でいい試合も悪い試合もあったんですけど、成長できたシーズンになったかなと思っています」

――「楽しく滑る」ことを目標に掲げていたシーズンだったと思います。そちらの方の理由があれば教えてください。
 「やはり試合で楽しむっていうことが、これまではできていなかったなというふうに思ったので、昨シーズンは本当に楽しく、最後まで滑り切るというような目標を掲げてやってきました」

――実際にシーズンを終えて、その目標はご自身の中で達成できたと思いますか。
 「全日本からの数試合はあまり楽しく滑り切れていなかったのかなとは思うんですけど、最後の世界選手権は本当に楽しく、最後まで滑り切れたなというふうに思います。本当に練習から、そういった練習をしてきたので、練習の成果がしっかりそして楽しんで進めることができてよかったなと思っています」

――8月からたくさんの試合を重ねてきましたが、特に印象に残っている試合はありますか。
 「特に世界選手権が一番印象に残っている試合かなと思います」

――今回は全日本以降のお話をお聞きできればと思います。全日本は特有の緊張感があったとおっしゃっていましたが、今実際に振り返るといかがですか。
 「全日本は他の試合と全然違った緊張感で、コンディション的にも試合の持って行き方だったりとか、すごく良くなかったなと自分でも思っています。何試合出ても、全日本には慣れていかないのかなというふうに思ったんですけど、本当に今シーズンはオリンピックの懸かった大事な全日本になってくるので、そういった意味は、昨シーズンの失敗を繰り返さないような全日本にできたらなと思っています」

――全日本の後に代表発表があり、世界選手権出場が決定しました。当時の心境はいかがでしたか。
 「内容が本当に良くなかったので、選ばれるかどうか心配はあったんですけど、選んでいただけて本当にうれしかったですし、初めて世界選手権の切符をつかむことができたので、ここから上がっていくだけだなと思っていました」

――全日本の後には三浦佳生選手(政経2=目黒日大)と鎌倉に行ったそうですね。
 「そうですね。2人でいろいろ反省会じゃないですけど、話をして気持ちもすごく楽になりました。もちろん彼もすごく緊張したというような話をしていたので、やはりみんな同じ気持ちだったなというふうに思いながら、自分も気持ちが少し楽になりましたね」

――その後の名古屋フィギュアスケートフェスティバルでは、イリア・マリニン選手(米国)のパーカーを着ていたそうですが、本人からいただいたのですか。
 「そうですね、ファイナル(グランプリファイナル)の後に優真と俺が呼ばれて(笑)。『これあげるよ』って言われてパーカーをいただいて。着心地とかもすごく良かったですし、結構気に入っています(笑)」

――マリニン選手とは結構お話をしますか。
 「そうですね。向こうから結構話しかけてくれることが多くて。日本の選手とは誰とでも仲がいいですし、フレンドリーです」

――日本語もかなりできるようですね。
 「なんか佳生が結構マリニンに教えているみたいで(笑)。日本語しゃべっていますね」

――その後の日本学生氷上競技選手権(インカレ)は、個人も団体も優勝という結果でした。
 「そうですね。インカレは全日本からあまり期間がなかったんですけど、構成を落としてやって、調子的には上がり切れていなかったんですけど、その中でも明大の団体の優勝に貢献することできて、良かったなと思っていますし、その前の年はインフルエンザで出場できなかったので、その分も頑張れたかなと思っています」

――今年度は、明大のスケート部総合主将を務めるということで、どのようなインカレにしたいですか。
 「スケート部はどの部門もすごく強いので、フィギュア、アイスホッケー、スピードと全カテゴリーで優勝しての総合優勝を目指していけるように頑張っていきたいとは思っています」

――インカレの後には国民スポーツ大会冬季大会(国スポ)がありました。こちらも優勝を果たしました。
 「国体は光翔(大島・令7政経卒)と二人でずっと優勝したいというふうに思っていたので、二人ともいい演技をすることができて、優勝することができて、本当にうれしく思っています」

――団体戦ならではの応援の力は感じましたか
 「これまでの試合があまり良くない中で迎えた国スポだったので、いつもと違った緊張もあったんですけど、埼玉のチームの応援のおかげですごい気持ちが、軽くなったというのもありましたし。すごく落ち着いてできていたなと思っています」

――ワールドユニバーシティゲームズ、国スポ、冬季アジア大会と連戦が続きましたが、短期間で多くの試合に臨んだことはいい経験になったと思いますか。
 「はい。かなりハードなスケジュールではあったんですけど、まあ、その中でもどのようにコンディションを持っていくかというところをすごくいろいろ考えて、食事にだったりとか、そういうのも考えながらやっていたので、すごくいい経験になったなと思っています」

――世界選手権の前に宇野昌磨さんとお話をされていましたが、いただいた言葉で印象に残っていることはございますか。
 「僕はすごく練習から緊張していたので、もっと気楽にじゃないですけど『練習ではできているんだから、試合では失敗してもいいぐらいの気持ちでいくといいよ』というふうに言ってくださって。それがすごく自分の中で気持ちが楽になって、本番も練習でやってきているんだから、あとはやるだけだと思って臨みました」

――宇野さんが競技を引退したことで、大会などの雰囲気の違いを感じることはありましたか。
 「本当に全日本とかも、みんな優勝を狙いにいっているなという、そんな雰囲気が練習からすごく漂っていると感じましたし、昌磨くんが引退したというのは、みんなにとっても『もっと頑張らなきゃいけないな』と思うきっかけになったのかなと思います」

――世界選手権はミラノ・コルティナ五輪の枠取りもあって、プレッシャーの懸かる中での戦いだったと思いますが、振り返っていかがですか。
 「練習からすごく緊張していたので、その分本番では意外と緊張せずにできていたのかなと思っていて。本番は本当に緊張がゼロに近いぐらいで。特にFS(フリースケーティング)は全然緊張せずに練習通りの演技で臨めていたので、すごく良かったなと思っています」

――緊張しなかった理由や要因があれば教えてください。
 「さっき話した宇野昌磨さんからの言葉もそうですけど、自分の中で冬季アジア大会が終わってからの1カ月ぐらいの練習ではすごい状態も良くて。もうこれ以上ないというぐらいの練習とコンディションで臨んでいたので、不安な要素はあまりなかったです。練習からすごく緊張していた分、本番では緊張しなかったかなと思います。それが本番良かった要因かなと思います」

――FSの最後のコレオシークエンスの感情の乗せ方が印象的でした。どのような気持ちで滑っていましたか。
 「やっと最後まで楽しんで滑り切ることができたなというふうに思った試合でしたし、本当にここまでたくさん練習してきて良かったなというふうに思っていました」

――演技終了後には力強いガッツポーズも出ました。
 「そうですね。なかなか(4回転)ルッツと(4回転)フリップを両方決めるというのがなかったので、本当に決められたのがすごくうれしかったですし、全日本から世界選手権まではなかなかいい試合ができなかったので、ようやくいい試合ができたのかないうふうに思って、思わずガッツポーズが出たのかなと思います」

――ボストンのリンクは日本と比べて狭いそうですが、滑りにくさを感じる場面はありましたか。
 「ちょっと小さいかなと思ったんですけど、1回カナダで滑っていたので、そんなに気にせずできました」

――会場はすり鉢状で、すごく上段の席までお客さんが入っている大会でした。
 「最初会場の雰囲気を見た時はすごく圧倒されたというか、一気に何か緊張が押し寄せてきたんですけど、でも日本の応援してくださっている方も結構たくさん来ていたので、その応援をより一層感じました。またファンの皆さんというか、現地のお客さんもジャンプを一本一本入れるたびにすごく盛り上がってくれたので、会場の元気に助けられたなと思っています」

――他の選手の演技は見ましたか。
 「演技が終わった後に優真とかマリニンの演技を見ました。インタビューとかいろいろあったので、優真から後の演技しか見られませんでした。(その中で印象に残った演技はありますか)マリニン選手の演技はすごいなって改めて思いましたし、本当に自分もこれくらい軽く4回転ジャンプが跳べたらいいなというのは見ながら思っていました」

――同じ競技者として、マリニン選手の4回転ジャンプはどのように見えていますか。
 「ちょっとレベルが違いすぎるなって思っているんですけど、同じジャンプにしても明らかに軽さや質が全然違うので、本当にどうやって跳ぶんだろうって(笑)。すごい。本当にすごいです」

――オフシーズンのお話に移ります。先月までカナダに行かれていたと思いますが、何か思い出やエピソードはありますか。
 「カナダに行くのは3回目、振り付けは3回目なんですけど、昨シーズンやこれまでのシーズンよりもすごくいいプログラムに仕上がるなと思っていますし、振付師のギヨーム先生(ギヨーム・シゼロン)とのコミュニケーションも、すごく増えたなと思っています。現地にはアイスダンスの選手が何人かいるので、一緒にご飯を食べに行ったりとか、ホテルでゲームをしたりして結構楽しんでいました」

――アイスダンスの選手ともスケートの話はされますか。
 「意外としますね。やはりシングルとアイスダンスでは、競技が全然違うので、やっていることも全然違うんですけど、いろいろ気になることは聞いたりしています」

――振付師のギヨーム先生もアイスダンスの選手ですが、教わって自分が成長したなと感じる面はありますか。
 「表現面をすごく意識するように注意を受けていて。あとは基本的なスケーティングの部分であったりとか、体の使い方だったりとか、手の指先の使い方とか、本当に全身をもう洗いざらい直されたという感じです(笑)」

――タッグを組むのは3シーズン目になると思います。1シーズン目と比べると関係性の変化はありますか。
 「アイスダンスの選手なので、最初はシングルのルールとかも全然分からなくて、抜けていた部分とか、いろいろあったりして、コミュニケーションもなかなか取れていなかったんですけど、次のシーズンからはそういうのもすごく分かってくださって。僕の跳びやすいコースとか、最初に『どうやって跳んだらいい』とか『どうやって跳びたいか』とか聞いてくださって、すごく自分のやりやすい跳び方で作ってくださいました(今シーズンの新プログラムも話し合って作り上げたという感じですか)そうですね」

――ドリームオンアイスで演技を拝見しました。お気に入りのポイントやここは見てほしいという部分があれば、教えていただきたいです。
 「曲自体がすごく盛り上がりのある曲なので、特に一番盛り上がるのは後半の部分かなというふうに思うので、後半のステップとコレオの音ハメだったり、そういった部分を特に見てほしいかなと思っています」

――町田樹さんの演技を参考にしているんですよね。
 「そうです。『火の鳥』なので、鳥の表現の仕方とかを参考にしています。特に表現面を見ていますね」

――先日は黒い衣装を着られていたと思いますが、今シーズンはその衣装でという予定でしょうか。
 「一応もう少し赤を出したいなというふうに思っているので、とりあえず今はこれでやって、また変えていきたいなと思っています」

――最後にここから始まるシーズンに向けての意気込みをお願いします。
 「ようやく今シーズンというか、大事なシーズンが始まっていくので、シーズンの初戦はまだちょっとどこになるか分からないですけど、最初の試合から大事にしていって、常に自分のベストを更新していけるようなシーズンにしていけるように、頑張りたいと思っています」

――ありがとうございました。

[髙橋未羽]

(写真は本人提供)