
(27)シーズン後インタビュー 住吉りをん
各選手がさまざまな思いを抱え駆け抜けた今シーズン。全日本フィギュアスケート選手権(全日本)に6人が出場、日本学生氷上競技選手権(インカレ)では男子が団体部門で優勝を果たすなど活躍した1年となった。本インタビューではシーズン後の選手たちの声をお届けする。
(この取材は5月27日に行われたものです)
第5回は住吉りをん(商4=駒場学園)のインタビューです。
――今シーズン全体を振り返っていかがですか。
「そうですね。今までよりもすごく自分の中で成長したことを感じられるシーズンになりました。200点をコンスタントにほとんどの試合で超えられたというのが、すごく自分の中で良かった点なのかなと思います」
――今シーズンを点数で表すなら何点ですか。
「60点ぐらいですかね。前に比べたらすごく成長はあったのですが、やはり悔しいと感じる試合が本当に多くて。まだまだこういうところ改善したいと納得いくことはあっても、満足した試合はかなり少なかったなと思います」
――2月には明治×法政on Iceがありました。いかがでしたか。
「明法はすごく楽しめました。卒業生たちがすごくたくさんいたので、その方々に感謝しつつ、楽しい場を作るということに専念してできたかなと思います」
――今年度は明大の主将となりました。就任の経緯があれば教えてください。
「全く自分自身は何かをしたわけではなくて。監督や関係者、卒業生、前主将の方々からの指名という形でした」
――FISU冬季ワールドユニバーシティゲームでは見事優勝を果たしました。
「ミスがあったので、自分の中で出しきれた演技ではなかったです。でも僅差で割りつつも優勝できたというのは、今シーズンエレメンツの加点を増やすことを意識してステップ、スピンで点数を稼ぐようにできていた部分もあるし、今までの積み重ねで下の点がすごく伸びるようになってきた部分で、一位になるための手助けをしてくれたのかなというふうに思います」
――今シーズン一番印象に残った大会を教えてください。
「一番はやはりユニバーシティゲームズだと思っています。自分自身楽しんで試合をすることができましたし、大きい試合で優勝するというのは自分自身初めてだったのでコーチの喜んでいた顔がすごく印象的で、自分的にそうやって喜んでもらうことができて頑張ってよかったなというふうに感じました」
――今シーズン成長を感じたところはありますか。
「200点をコンスタントに超えられるようになったところだと思います。その理由として、しっかり一試合一試合、一か八かでやっているのではなくて、しっかり自分のイメージ通りに体を動かせられるようになったというのが、今シーズンの成長なのかなと思います」
――シーズン終盤につれてスコアが上がっていった印象があります。
「そうですね。プログラム自体を自分自身どんどん滑りこなせるようになっていったというのもあると思います。やはりイメージができるようになったとは言いつつも、プログラムの中でのイメージというのは、シーズン後半になればなるほど、プログラム内のイメージがすごくつきやすくなって、より一層鮮明にイメージできるからそのまま試合に発揮できるというところはあったかなと思います」
――何度も自己ベストを更新するシーズンとなりました。その要因についてご自身ではどのように考えていますか。
「一番の要因はやはりイメージすることだと思います。そうすることによって前の試合よりもこの部分良くしようというふうに、むやみに試合に出るのではなく、ピンポイントの目標にもしっかりとフォーカスできていたのかなと思います」
――今年がラストイヤーとなりますが、大学生活は楽しめていますか。
「そうですね。すごく楽しいです。大学に行く機会は前よりも少なくなっているのですが、大学には主にゼミで行っているので、ゼミの友達は他の授業と違ってやはり深い仲で。みんな私のことをすごく理解してくれて、私もみんなのことをよくわかっている友達として付き合えているので、行く機会は少ないにしても、すごく充実しているのかなと思います。あとやはりスケート以外の友達がいるというのが、自分の心の支えにもなっているかなと思います」
――1月のインカレでは、個人として優勝を果たしました。
「インカレは駿くん(佐藤駿・政経4=埼玉栄)とのアベック優勝は嬉しかったのですが、自分が優勝してもやはり明治の男女優勝という目標にあと一歩届かなかったので、そこを来年達成できたらすごく嬉しいなと思います」
――インカレでの思い出はありますか。
「インカレは試合が終わってから東京に帰る前に駅の近くで、明大の選手たち全員でほうとうを食べに行きました。毎年メンバーが変わっていくので、今年のメンバーとしてみんなでご飯に行けたのは印象に残っています」
――けがの影響で4回転を封印することが多かったと思います。それでも高得点を出せた秘訣としてご自身が思うところはありますか。
「他の部分の質を高めるために、イメージトレーニングを体につなげるということをやっていたので、それが効果として現れたのが一つかなと。自分がイメージできているままに出すから自信を持ってエレメンツをやることができて、その余裕で加点をもらえたと思います。それでもシーズン途中から4回転入れた方が自分にとって勢いがつくなと感じて入れていました。でも来シーズンはただ入れるだけじゃなくて、決めきるのも必要になってくるなと改めて感じもしました」
――今後国内、国際大会で上位を目指す上で、プログラムの構成を上げることは考えていますか。
「そうですね。今シーズンはさらに新しく入れるということは考えていなくて、4回転トーループ1本をきちんと決め切って、4回転も含めてノーミスで高いクオリティにすることが今年の目標です」
――今はどんなジャンプを練習していますか。
「シーズンが終わってからしばらく休んで、腰のけがをしっかり治す期間を取っていました。そこからトリプルはすぐに戻ったのですが、やはり4回転を戻すのに少し時間がかかっています。でも今やっと立てるようになってきているので、来シーズン4回転をしっかり安定させるために今はとにかく4回転をクリーンでコンスタントに降りるための練習にすごく力を注いでいます」
――ジャンプの調子の波を抑えるうえで何か意識していることはありますか。
「そうですね。私の場合は波を作らないためにタイミングを毎回同じように取るというのを意識しています。しっかり自分の中でこのジャンプのタイミングはこれというのを数字で1、2、3、4だったり、1、2、3、4、5、6で飛ぶのを決めているというのが一つ大きいかなと思います」
――今年のGPファイナルでは日本人選手の出場が多かったですが、それについてどう感じていますか。
「そうですね。悔しい気持ちも少しありつつ、純粋にリスペクトを持って見れていた自分もいて。去年のファイナルは日本人女子やはり強いなというというのと、そこに1人アウェー状態で入ったのにもかかわらず優勝してくるアンバー・エレイン・グレン(アメリカ)の強さというところもすごく感じました。でもそれを見ていたからこそ、来年のグランプリファイナルは自国開催なのもあって絶対出たいなという気持ちも高まりました」
――女子フィギュア界は今まさに戦国時代を迎えていますが、その中で改めてご自身の強みとして考えるものを教えてください。
「私の強みで言うと、やはりプログラム全体の作品としての完成度の高さかなと。所作の綺麗さとか、『一歩の伸びがあるよね』とよく言っていただけます。やはりそういうところのおかげでプログラム自体の良さを私自身は出せていると思っていて、だからより全体の完成度だけではなく、一つ一つのエレメンツの完成度で加点をもっと取っていくというところが自分に今から必要なところなのかなと思います」
――住吉選手は表現力が強みだと思いますが、今シーズン滑ってみて何か収穫できたものはありましたか。
「今年ものすごくステップを評価していただけたのを感じています。ステップシークエンスでレベル4を落とすことも少なかったですし、加点の面でも今までより高い加点をいただけたなと感じているので、そこを自分の武器として今年もしっかりステップで点を稼ぐというところは自分のこだわりにしていきたいかなと思います」
――来シーズンのプログラムは今シーズンのものと変えられますか。
「元々はショート(SP)だけ変えるつもりでした。でも結局ショートとフリー(FS)どちらも変えることにしました。振り付けが終わって今滑り込んでいるところです」
――来シーズンのビジョンを教えてください。
「来シーズンは本当に大切なシーズンになっていくので、シーズン通してしっかり体を維持して、どの試合も怪我なく全力で臨むことはもちろん、その中で一つ一つのエレメンツの完成度をしっかり高めて、坂本花織ちゃん(シスメックス)みたいにしっかり加点で稼いでいくというところを今年のオフの間にしっかり仕上げて戦っていけたらなと思います」
――五輪出場の3枠に入るために必要なものは何だと考えていますか。
「必要なものというか、全部ないと取れないくらい今は戦国時代なので。全てを揃えないといけないなというのはすごく感じています。でも自分にとって基盤はしっかりあると自信を持っているので、そこにエレメンツ一つ一つを成功させるだけじゃなくて、プラスでいい質で成功させる。さらに加点を取れるもので成功させていくというものにプラスで4回転をどの試合でも成功させる。4回転をプラスアルファとして勝ちきるために土台として、全てのジャンプの加点の高さというところが必要になってくるかなと思います」
――SP、FSでそれぞれ何点を目指しますか。
「75点と145点で合計が220点になるので、まずそこに到達することが来シーズンの目標かなと思います。全日本に関しては、みんな仕上げてくると思うのでそこにプラスして全日本は230点を目標にしたいなと思っています」
――オフシーズンでやりたいことはありますか。
「そうですね。割ともうオフシーズンの休憩期間みたいなものはほぼ終えたという感じです。なので今はもう次のシーズンに向けてしっかりと準備をし始めている段階なので、休みはもうないかなという感じです」
――最近のマイブームはありますか。
「最近ラテアートというか、家用のエスプレッソマシーンを導入して、それがミルクを泡立てられるようなやつがついているので、まだ全然アートはできていないのですが、母と二人でカフェラテ作りを頑張っています。すごく楽しいです」
――改めて来シーズンへの意気込みをお願いします。
「とにかく来シーズンはオリンピックがあるので、自分の中の全てをしっかりスケートに向けて一つ一つ着実に進めていきたいという気持ちが強いです。毎日一歩ずつしっかりオリンピックに向けて前進していけるようにしたいです。とにかくオリンピックに出て、普段支えてくれている周りの方々に恩返しするということが自分の中での一番の目標になっているのでそれが達成できるように頑張りたいなと思います」
――最後にファンの皆さんへメッセージをお願いします。
「いつも応援ありがとうございます。本当に皆さんの応援してくださる声、プレゼント、お手紙など本当にそういうものに力をもらって頑張れているので今シーズンはオリンピックに向けてとにかく一歩一歩自分のできること全てを注いで進んでいきたいと思うのでより一層応援していただけたら嬉しいです。よろしくお願いします」
――ありがとうございました。
[杉山瑞希]
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