(21)全日本後近況インタビュー&「〝佳生〟の目」拡大版/第544号拡大版

 2月の四大陸選手権(四大陸)代表である、三浦佳生(政経1=目黒日大)。全日本選手権(全日本)を総合8位で終え、現在ケガの療養中でもある。そんな彼の近況と、今後の見通しを伺った。また、合わせて明大スポーツ第544号特別企画として『佳生の目』と題し、世界選手権に出場する佐藤駿(政経3=埼玉栄)についても分析していただいた。

(この取材は1月13日に行われたものです)

――ケガの状態はいかがでしょうか。
 「全日本選手権が終わって病院を受診して、左腿の大腿直筋肉離れという診断を受けて、全治2ヶ月。結構思ったより重症だったのでつい最近練習を再開したぐらいです。(練習はできるのでしょうか。)そうですね。ジャンプなどはせず、本当に滑るだけです。スケーティングだけですね」

――全治2カ月ということは四大陸選手権へはやや厳しいということでしょうか。
 「分からないですね。ここから病院に何回か受診する予定なので、その経過を見ながらという感じですかね」

――ケガは全日本までの疲労の蓄積といったところでしょうか。
 「そうですね、やはり治りかけてたというところだったけれど、でも全日本で『やらなきゃいけない』と思ってやっていて。たまっていたものが出ちゃったかなと」

――最近はどう過ごしていますか。
 「一旦スケートからは離れて。ストレスフリーな生活を送ってました」

――佐藤駿選手(政経3=埼玉栄)とは鍋パーティーしたそうですね。
 「遊びに行ったついでに家で夜、鍋パーティーをしました。鍋とはいっても、本当になんか肉だけみたいな(笑)。僕は普通に具材買いたかったんですけど、駿がいらないっていうので(肉だけの)茶色い鍋をやってました。(佐藤さんは野菜は好きじゃないのでしょうか。)どうなんですかね。なんか『いらないんじゃね?』って(笑)」

――インスタライブもされており、かなりリフレッシュしている印象がありました。
 「もう何もスケートのことを一切考えず、ただのんびり。久々に離れる時間ができたからもう本当に何も考えずに過ごしました。だらだらと」

――ここから三浦選手目線での分析を行っていただきたいと思います。佐藤選手は指先の表現力などスケーティングが近年際立っているように感じます。彼の表現面をどう捉えていますか。
 「前から結構課題視されていたみたいですが、元から苦手そうには見えないと感じますね。彼にフィットする振り付けをシゼロン(ギヨーム・シゼロン)さんがここ2シーズンは指導されていますし。彼にフィットする振り付けを徐々にシゼロンさんが見つけて、駿の良さが出てきたのかなと思います。それがようやく見てる人に伝わってきただけなんじゃないかな。別に元々苦手な感じはしないですね」

――具体的に表現面での佐藤選手の『良さ』とは何でしょうか。
 「これがいい意味なんですけど『淡々とこなす』というところですね。難しいことでも淡々とこなせるところが強いかな。加えて『スケートに乗せて表現していくタイプ』というよりかは『スケートをうまく使って表現してる』という感じですよね」

――3月に行われます、世界選手権の展望を教えていただけますか。
 「今シーズンは世界3番手の存在がなかなか確立してないと思います。優真(鍵山・中京大)とイリア(マリニン・アメリカ)はやはり抜けていて、その2人のどちらが勝ってもおかしくない。そこに次いで昨季銅メダルのアダム(シャオイムファ・フランス)が来るのか、駿がくるのか、それとも他の選手がくるのか、というのはすごく見どころかなというふうに思います」

――アダム選手の他にもチャ・ジュンファン選手(韓国)やケヴィン・エイモズ選手(フランス)とも熾烈(しれつ)な争いが予想されますね。
 「ケヴィンはもうスケーターの中ではわりとベテランの域に入ってくるかなと思うんですけど、その2人はすごくスケートの見せる力や、長年やってきた人にしか出せない力強さ、力強い滑りがあるので。そこがあるというアドバンテージの上で、ジャンプをどこまでしっかり決められるかが2人がトップにいくためのポイントかなというふうに思いますし。やはり前評判で言えば昨季あれだけ力を出したアダム。今年も彼はケガがあってシーズン通してうまく出し切れていない印象がありますが、ここで力を出して焦点を合わせてこれるかですよね。あとはそこに駿がどこまで入っていけるか。グランプリファイナル(GPファイナル)で3番手に入ってますから。そういった意味では彼にもチャンスは今年すごく大きくあると思うので、そのチャンスをものにできるかが見どころです」

――三浦選手は昨季は初の世界選手権でしたが、独特の空気感などは感じられましたしたか。  
 「そうですね。やはりシーズンで見てきたスケーターはいっぱいいて、トップスケーター全員がこの大会で力を合わせにきているなと。みんなベストコンディションで臨んできているというのが目に見えて分かったので、これが世界選手権かという感じでした。自分もすごくいい状態で臨みましたけれど本番で力を出しきれなかったので、そういった難しさはあるなと。駿は初めて出場するので、そこでどこまで力を出しきれるかが難しいかなと思います」

――長いシーズンの締めくくりとなる大会ですが、疲労感などは出たりしないですか。
 「いやでも、これが終わったらシーズンオフなので。今年は4月に国別対抗戦がありますが、みんなここに力を合わせるので。なのでどちらかというと元気かなと思います」

――日本人選手3人に期待することはありますか。
 「大体心配はいらないと思うんですけど、まずは優真に先頭に立ってもらって。2人が初めてなので、どこまで自分の力が通用するのかということを、世界選手権が一番大きな大会なので、そこで自分の位置がわかると思いますし。そこでどんどん試してきてほしいなというのと、自分も普通にいち視聴者として、すごくこの3人の結果が楽しみです」

――話を少し戻しますが、改めてご自身の今後についてどう見通しを立てていますか。
 「まずは来季が1番重要になってくるので焦点を合わせられるように体を作り直したいなと思うのと。ただポイント的にも色々あるので。今シーズンのポイントを少しでも取るために、四大陸にも間に合わせたいという意思はあります。四大陸で以前優勝したときのシーズンのポイントが次多分なくなるので。そうしたらランクが落ちてしまうので、そういった意味では無理はしない範囲で状況を見ながら判断ですけど、自分も四大陸に少しでも間に合わせる努力はしたいと思っています」

――最後に改めて、フィギュアスケートを初観戦する人にも向けて、四大陸と世界選手権の注目ポイントを教えてください。
 「まず四大陸はやはり男子も女子も日本勢が強いかなと思います。日本中心にアメリカ、カナダ、韓国の強い選手が出てきます。そういった選手たちの戦いに注目してほしいなと。多分ジュンファンが出てくると思うし、ジュンファンは一度四大陸で優勝しているので、四大陸一度優勝した同士の僕や、初めて出場する壷井達也くん(神戸大)、2022年四大陸2位の一希くん(友野・第一住建グループ)などの表彰台争いに注目です」

――世界選手権はいかがでしょうか。
 「優真とイリアの頂上決戦です。優真も年明けインタビューで4回転ルッツを入れると言っていましたし。そこが決まってくるともしかしたらイリアに勝っちゃうんじゃないかという希望もあります。ルッツを入れることによって崩れるかもしれないという難しさもあるので、そのリスクとの兼ね合いですよね。彼にとってそれがどう影響するかというところがまず一つ注目です。後は3番手争いですね。駿が3番手に入ったらこれはかなりすごいことです。狙いすぎずいってほしいですが、現状おそらく彼が3番手ですし。ここに誰が入ってくるかがすごく楽しみですね」

――ありがとうございました。お大事になさってください。

[橋本太陽]

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