
(19)全日本直前インタビュー 大島光翔
国内最高峰の大会である全日本フィギュアスケート選手権(全日本)がいよいよ12月20日に開幕する。多くのスケーターがこの舞台に照準を合わせ、日々練習に励んできた。本インタビューでは、選手それぞれが今シーズンの大一番に懸ける思いをお届けする。
(この取材は12月12日に行われたものです)
第6回は大島光翔主将(政経4=立教新座)のインタビューです。
――この1カ月で一気に冬らしい気候となりましたが、この時期になると思うのはやはり全日本のことですか。
「そうですね、やはり全日本のことで頭がいっぱいになりますね」
――今の時点で緊張はしていますか。
「緊張は今の時期からやはりしますし、すごく引き締まった状態で練習に臨めているなというふうに感じています」
――現在の調子はいかがですか。
「全日本に向けて間違いなくシーズンで一番いい仕上がりになっていると思いますし、自信を持って大会に臨める状態であると思います」
――今シーズンは昨シーズンと同様、夏のサマーカップからシーズンが始まったと思いますが、ここまでの大会を振り返っていかがですか。
「今までのシーズンと比べて、ブロック(東京選手権)、東(東日本選手権)とだいぶいい点数で終えることができて、今までで一番自信持って臨める全日本だと思うので、そういった意味ではすごく順調にここまでは来れているのかなというふうに思います」
――今シーズンはブロックから100%というふうにおっしゃっていました。昨シーズンやこれまでと比べて練習量を増やしたという形でしょうか。
「そうですね。今年はとにかく氷に乗る時間を増やして、本当に今までのどのシーズンよりもずっと氷と向き合う時間を、そして自分と向き合う時間を増やして過ごしてきたので、すごく練習量は多かったかなと思います」
――東日本選手権(東日本)は2年ぶりとなる優勝で、全日本出場を決めました。
「東日本優勝というのはもちろん目標で。それにプラスして、やはり自分の悔いのないような、東日本優勝者として恥ずかしくないような点数で終えるというのが大きな目標だったので、自分の目標としていたブロックの点数を超えるというところはかなわなかったですが、納得いく点数で終えることができたので、そこは良かったです」
――東日本の試合後には『自分がほぼ最年長で、責任感も感じていた』とおっしゃっていましたが、今シーズンでこれまでと違う部分はありますか。
「やはり責任感というのは、今までよりもより一層強くなってきていますし、そういった部分で大会への臨み方も、多少気持ちの面で変化はあったんじゃないかなと思います」
――SPではフラメンコ調の曲に初めて挑戦しました。難しかった点や苦労した点はございますか。
「やはりフラメンコ特有のキレであったり重厚感という動きを自分のスケートに落とし込むというのが一番苦戦してした部分というか、今もしている部分で。そこにどういう感じで、自分らしさを出す部分と、自分らしさを出さない部分というメリハリを付けるか、フラメンコらしさをどのように取り入れられるか、というのを模索しているプログラムだと思いますね」
――大島選手自身が分析している、自分らしさというのはどのような部分か教えていただきたいです。
「やはり今年のSPに関しては、本当に自分の思うかっこいいだったり、振付師さんから見た自分のかっこいいというのを追求して作ってもらったプログラムなので。自分らしさというのは、やはり自分の動きの特徴だったり、癖だったりといった、滑り一つ一つのふとした瞬間に出る自分の素ということが自分らしさなのではないかなと思います」
――SPの注目ポイントをうかがいたいです。
「SPはどちらかというと自我から外れたっていうか。 完全に振付師さん任せの、ほとんど自分の意思が入っていないような感じで。今まで自分が追い求めてきたかっこよさや滑りというよりかは、今回は本当にまた違った新しい自分のかっこいいを追求していくプログラムになっていると思います。SPは全体の流れを通して曲調も激しく変わるプログラムなので、 最初から最後まで楽しんでいただけるプログラムになると思います」
――久しぶりの赤い衣装ですが、やはり気分は上がりますか。
「そうですね。自分の好きな色ですし、やはり着ると気持ちも引き締まるというか、自分が自信を持って挑めるという感じは少しありますね」
――先日も振付師の村元哉中さんとブラッシュされていましたが、どのような部分を重点的に取り組みましたか。
「本当に全日本まで期間もないですし、最終調整という感じで、細かい部分の動きだったり、本当に細かい調整をしていただいたという感じです。大幅な変更点とかは無かったんですけど、村元先生のイメージと僕のイメージを擦り合わせて、どういった動きを目指して最後頑張るかというふうな時間でした」
――FS(フリースケーティング)は佐藤操さんの振り付けですが、振り付けの際に何かエピソードはございますか。
「そうですね。本当に操先生は大学に入る前ぐらいからずっと振り付けをしていただいていて、今年でもう4年目ぐらいになると思うんですけど、今までは特徴的な音楽だったり、癖のあるプログラムの振り付けばかり頼んでいたので、逆にこういう正統派のプログラムというのは初めて振り付けしてもらったので、そういった意味では4年目でも新鮮な気持ちで振り付けに臨んでいました」
――SPは自我が入っていないプログラムと伺いましたが、FSはいかがですか。
「SPよりかは、自分がどういう思いで滑りたいのか、というのをお伝えさせていただいて、そのイメージに沿って操先生と2人で作り上げたという感じですね」
――FS演技の中でこだわりの部分や、好きな振り付けはございますか。
「後半にかけてのステップからコレオにつながるところは、自分的にも結構エモーショナルな気分になれるような感じで。 それもいい曲と、振り付けをしてもらったので、そこがお気に入りの部分の一つかなと思います」
――お父様が滑っていたプログラムということで、練習や試合などで掛けてもらった言葉で印象的なものはございますか。
「父親に試合の前に『泣かせてみろ』と言われて。その言葉は軽い言葉でしたけど、父親が泣いている姿は全然見たことなないので。そういった意味では、一つ意識するようになりましたね」
――お父様が泣いているところを見たことがないというのは、いつごろからですか。
「ここ最近はもう全く見てなくて。本当に引退公演の時に泣いていた姿というのが、最近改めて見て印象的だったなというぐらいで。本当にそういう印象はない人ですし、想像もつかないような感じなので。そういった意味ではすごく新鮮な感じですね」
――引退公演の動画をインスタグラムで拝見しました。その時の光景はまだ頭の中に残っていますか。
「そうですね。やはりあのプログラム、あの曲で父親が滑っていたということは今でもすごく覚えています。本当に見ていた当時は父親のすごさだったり、この曲に対してもあまり感情や特別な思いはなかったんですけど、年々父親への尊敬だったり、父親のすごみというのを自分が理解してきて。今また改めて見るとやはりすごいスケーターだったなと思いますね」
――今シーズンが始まる前には、アイスショーに出演していました。アイスショーでの経験が競技に生きていると感じる瞬間はございますか。
「やはり直接的に、どこが生きているということは多分ないと思っていて。試合とアイスショーの緊張感というのはまた別物なので。直接的にはないと思うんですけど、やはりアイスショーでいろいろな演技だったり演目だったり、表現の形だったりで、自分のプログラムではなかなかやったことのないような演技、演目をやらせていただいてたので、自分のプログラムの表現の幅も広がったと思うので、そういう点は試合にも生きてきているのではないかなと思います」
――3月には滑走屋の再演が決まりましたがいかがですか。
「今年も選んでいただいて、本当にうれしい気持ちですね」
――ともに練習に励んでいる佐藤駿(政経3=埼玉栄)選手が先月行われたGPシリーズ中国大会で優勝しました。
「毎回彼の試合はすごく自分も気になっているというか、本当に応援しているので、楽しみにさせてもらっていますし、僕たちのモチベーションを彼はいつも与えてくれるので、本当に感謝しかないですね」
――他の選手の演技を見るのもお好きですか。
「あまり興味はないですね(笑)」
――バナータオルが発売されましたが、デザインはご自身でされましたか。
「デザイナーさんにこういうフォントで犬を入れてほしいということをお伝えしていて。そのデザインでいくつか出してもらった中で、自分が一番かわいくて気に入ったものを選んだって感じですね」
――全日本の話に戻ります。今大会12位以内で強化選手に戻るという目標は変わりませんか。
「そうですね。本当に順位や得点に具体的な目標を定めて、そこをなんとか達成できるように頑張りたいなと思っています」
――得点の具体的な目標を教えてください。
「やはり自己ベストを出すということが一番だと思っていますし、SPとFS合わせて220点を超えられるような演技で終えられたらいいなと思います」
――全日本が開催される大阪の東和薬品RACTABドームでの思い出はありますか。
「一度全日本で滑らさせていただいたんですけど、その時もあまりいい演技はできなかったですし、そういった意味ではすごく苦い思い出が残る悔しい試合だったので、リベンジという意味も込めて『やってやるぞ』という気持ちが今は一番強いですね」
――全日本は普段の試合とはまた違った緊張感のある舞台となると思います。毎年どのような気持ちで挑んでいますか。
「やはり特別な舞台ではあることは事実ですし、身構えてしまう自分もいるんですけど、今までそれでうまくいっていないからこそ、今年は本当に平常心というか、今までの試合とも変わらず、落ち着いて自分の演技ができればいいなというふうに思っているので、特別に全日本だからという意気込みだとか、気合が入っているとかいうことはなく、本当にシーズン中の一つの試合だと思って、いつも通りの気持ちで臨めたらいいなと思っています」
――普段フィギュアスケートを見ない人にも演技を見ていただける機会だと思います。どのような部分を見てほしいですか。
「やはり今までのシーズンほどプログラムに自我が出ていないというか、正当派なプログラムでの勝負になると思うので。そういった意味では、今までとまた違って、自分の滑りやスケート力という部分で勝負できたらいいなというふうに思うので、初めて見てもらう方にも目に留まるような、そういうスケートができればいいなと思います」
――全日本が終わった後にも、日本学生氷上選手権をはじめ、忙しい日々が続いていくと思います。長い目で見ての意気込みをお願いします。
「まずは健康に今年1年を走り切るというのが一番で。やはり忙しいですけど、その中でも自分がレベルアップできたらいいなというふう思います。あとは一戦一戦、本当に大事というか、一つ一つのイベントや行事、大会をこれまで以上に重きを置いてこなしていければいいなと思います」
――最後に、応援してくださるファンの方にメッセージをお願いします。
「全日本では毎回なかなか苦しめられてきましたが、今年の全日本では自分の成長した姿をお見せできるように準備してきましたし、今年は本当に自信もあるので、楽しみにしていただければなと思います」
――ありがとうございました。
[髙橋未羽]
(写真は本人提供)
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