
(16)全日本直前インタビュー 江川マリア
国内最高峰の大会である全日本フィギュアスケート選手権(全日本)がいよいよ12月20日に開幕する。多くのスケーターがこの舞台に照準を合わせ、日々練習に励んできた。本インタビューでは、選手それぞれが今シーズンの大一番に懸ける思いをお届けする。
(この取材は12月6日に行われたものです)
第3回は江川マリア(政経3=香椎)のインタビューです。
――最近はどのような練習をしていますか。
「東日本フィギュアスケート選手権(東日本)まではかなりしっかりとジャンプやスピンといったエレメンツの強化を中心にやってきたんですけど、今は結構それ以外の部分、表現の部分や、ジャンプとジャンプの間のつなぎの振りの部分などを重点的に練習しているかなと思います」
――全日本出場が決まった東日本を改めて振り返ってみていかがですか。
「SP(ショートプログラム)はまずまずまとめられたかなと思っているんですけど、FS(フリースケーティング)で一つミスが出てしまったというのと、あとスピンでもレベルの取りこぼしが結構あったりしたので、本当にまだ伸びしろがたくさんだなと思えた大会でした」
――今年で3回目の出場となりますが、全日本はどんな大会ですか。
「毎年と言っても3回目なんですけど、なんだか毎年感情が違う感じがしていて。私はすごく自分の演技に自信は持てているんですけど、その分他の日本勢がすごく活躍しているのも見て、とてもレベルの高い大会になるんじゃないかなと、オリンピックプレシーズンというのもあって、すごくそれを感じているので、その中で一緒に戦えるのはすごくわくわくしています」
――GPファイナル(グランプリファイナル)に日本勢が5人出場するなど、世界で大活躍している日本勢を見てどんな思いがありますか。
「すごく刺激にはなりますし、自分もずっと海外の舞台に立ちたいと思って、特に大学生になって、ずっとそれは思っていることなので。それを実現させるためには、まずは目の前の全日本を頑張ろうという感じです」
――今シーズンここまで滑ってきて、調子の波はありましたか。
「自分の体感としては、練習では昨年よりいいものができていることが多いのに、本番でそれがうまくいかないというのが今シーズン前半、本当に東日本学生フィギュアスケート選手権ぐらいまであって、東日本でそれを少し抜け出したかなという感じはしているので、このまま自信を持って挑みたいなと思います」
――東京に拠点を移して3年目となりますが、変わったところや成長したところなどはありますか。
「この直近3年間を振り返って、明らかに結果という意味でも自信がついてきたというのもありますし、福岡にいた時よりも海外で活躍する選手たちと一緒に練習する機会にも恵まれているので、その中で自分ももっとできるんじゃないかとか、そういう刺激もたくさんもらって、それがいい自信にもなっているのではないかと思います」
――現在滑っている中で感じている課題はありますか。
「今の時点で、ジャンプとかは上のエースの方たちと基礎点などの意味ではそれほど差があるわけでないというふうに感じていて。やはりそれ以外の部分、表現とかそういった部分が、まだ伸びしろがあるというか、うまく点数に表れきれていない部分だと思っています。自分自身、表現することはすごく好きなことなんですけど、それを点数として評価してもらえるかとなった時に、やはり正確なスケーティングだとか、そういった基礎的なことが本当に求められると思うので、すごくそれを意識して今は練習をしています」
――プログラムの内容に関して、東日本から変更はありますか。
「変更はないです。構成は変わらず、その質を高めるというのを今は重点的にやっています」
――本番が近づき12月に入った今、どんな心境ですか。
「SPもブラッシュアップしたり、FSも東日本よりももっといいものを見せることができるという自信はすごくあるので、しっかり最後まで自分に集中できるように頑張りたいなという気持ちです」
――今シーズン初めから掲げていた目標の世界大会は、それぞれの試合の中でも意識していましたか。
「頭の片隅にはあるんですけど、試合をやるときはやはり結果とかそういうこと考えるとあまりうまく集中できないので、演技の時は自分の演技に、その時に集中という感じです。でも練習中というか、普段過ごしている時は、いろんな選手の結果を見ても、自分もその舞台に立ちたいなというのはすごく思っていました」
――全国の舞台の緊張感に打ち勝つために考えていることはありますか。
「やはりこれは何度経験しても慣れないと思うので、自分の中ではもう本当に、自分を信じること、今までやってきたことを信じるというのが楽かなと思います」
――たくさんの人に見てもらえる機会ですが、どんな演技をしたいですか。
「自分の演技は結構個性がある方だと思っているので、自分にしかできない滑りだったり、世界観というのが、しっかりたくさんの観客の人に伝わればいいなと思っています」
――プログラムの今の完成度としては、100パーセントに持ってこられましたか。
「そうですね。はい、持ってこられそうな感じがしています」
――試合のヘアメイクなどにこだわりはありますか。
「自分はあまりメイクなどか得意な方ではないので、よく『普段のメイクとあまり変わらなくない?』と言われたりするんですけど、SPとFSでもちろん全然曲調が違うので、FSでは濃いリップを塗ったりとかそういうのは少し意識しているかなという感じです」
――緊張することも多い全日本で、楽しみなことはありますか。
「毎回なんですけど、やはり大阪も食べ物がおいしいので、大会が終わったらお好み焼きは絶対食べますし、他にもおいしいものを食べ歩きたいなと思います」
――今年の遠征中に食べたものの中で、何が一番おいしかったですか。
「最近だと青森に行った時に、八食センターに大会の次の日に寄って帰ったんですけど、その市場にすぐに焼いて食べられる小屋みたいな場所があって、そこで食べたアジとか、あと鮭のハラスとかがすごくおいしかったです」
――今シーズンいろんな選手のプログラムを見てきて、江川選手の推しプログラムはありますか。
「自分的にすごく好きなだなって思うのが、MFアカデミーで一緒に練習しているジュニアの謠ちゃん(髙木謠・東京女子学院)のFSのプログラムなんですけど、本当に謠ちゃんにしかできない振りだったり、コレオ(シークエンス)だったりで、惜しくも全日本には行くことができなかったんですけど、まだまだ試合があると思うので。もうこのプログラムはいろんな人に見てもらいたいなって思うぐらい、好きなプログラムです」
――大学生活は最近いかがですか。
「2年生までよりも大学生活は楽になって、1限はあるんですけど、必修とか語学の1限がなくなったので、少し気持ち的には楽になったかなという感じです。でも、来年はゼミでこの時期ぐらいまでに卒論を書かないといけないみたいなので。はい、ひとごとなんですけど(笑)。なので、早くからちゃんと進められればいいなと思います」
――最近のマイブームはありますか。
「最近まつエクに行くのにはまっていて。月1回行ければいいけど、2か月に1回ぐらいまつエクに行くのがすごく楽しみです。まつ毛が上がっているだけで気持ち的にもだいぶ変わってくるので、鏡見て『今日も頑張るか』みたいな、本当に自己満でやっています(笑)」
――最近は趣味の料理をする時間はありますか。
「料理はしているんですけど、もう年々時短で簡単にできるものを極めています。よくインスタ(グラム)でいろいろ流れてくるじゃないですか。それを見て、レンジで作れる料理というのにすごくはまっていて、レンジで作るスープとか、簡単でおいしいみたいな料理にはまっています。お腹が空きすぎて待てないんですよ(笑)。できるだけ早く食べたいというのもあって、時短になっちゃっていますね」
――年明けには明法オンアイスなども控えていますが、準備をする大変さはすでに感じていますか。
「そうですね、前回も手を挙げて委員になって少し関わったりはしたんですけど、今年は法政の吉野汐香ちゃんが中心になってやってくれて、私はあまりたくさん業務ができていないんですけど、みんなとしっかり作り上げて、少しでも手助けになればいいなと思います」
――来年3月の滑走屋への出演が発表されましたが、どんなオファーがありましたか。
「今年もよろしくお願いしますという連絡が来ました。今年もやるかもしれないというのは少し小耳に挟んでいたので、また今年も選んでいただけて光栄だなという気持ちでした」
――2度目の滑走屋でどんなことに挑戦したいですか。
「全てのナンバーが自分がやったことのない曲調だったりするので、全部が挑戦という感じではあるんですけど、詳しいことはまだ伝えられていなくて、どういった感じの演目をやるのかっていうのは決まっていないんですけど、新しい自分をまたお見せできる機会になればいいなと思っています」
――フィギュアのシーズンはまだ続きますが、ここまで2024年を振り返ってみていかがですか。
「今シーズンはすごく大会をしていくごとに、なんで良かったのかとか、悪かったのかをちゃんと分析するようになったというか、前よりも少し頭を使うようになったシーズンだったなというのはすごく感じています」
――世界大会に向けての思いを改めて聞かせてください。
「自分はもう一歩一歩進んでいくしかその目標に届く方法はないと思っているので、まずは全日本で自分の力を出すことが本当に大事になってくるかなと思っています」
――全日本での具体的な目標を教えてください。
「8位以内に入りたいです。その順位だったらまずはチャレンジャーカップなどにシーズン最後の方で派遣されるかなと思うので。昨年より上を目指して頑張りたいなと思います」
――応援してくださる方々に向けてメッセージをお願いします。
「いつも応援ありがとうございます。今年の全日本は昨年とはまた違った立場、違った心境で挑む全日本なんですけど、自信を忘れずに、思いっ切りやるぞという気持ちで滑れればいいなと思っているので、応援よろしくお願いします」
――ありがとうございました。
[増田杏]
(写真は本人提供)
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