(141)【第543号特別企画】園原健弘監督インタビュー 前編

2024.12.15

 今年度、17年ぶりに三大駅伝全ての出場を逃した長距離ブロック。〝次元を超えた惨敗〟を経験した部の監督は今、何を思うのか。短距離ブロックや競歩ブロックを含めた明大競走部の現状と今後について、関東学生連合チームに選出された溝上稜斗選手(商4=九州学院)についてお話を伺った。

――短距離ブロックの今年度の成績について、どのように捉えていますか。
 「短距離は昨年度より少し成績は下がりましたが(今年度で見れば)右肩上がりで想定通りです。大きな大会ではリレーは入賞できませんでしたが、エース2人の卒業後も選手が順調に育っているので、明大短距離の力は維持されていると思います」

――新入生の成長についてはどのようにご覧になっていますか。
 「明大が短距離にも力を入れていることを高校生も理解してくれていて、いい選手が入ってきてしっかり実力を出してくれています。ただ、元々持っている本人の力だけで戦っているので、大学に入ってわれわれが育てたり、力をさらに引き上げたり、チームとして一緒に成長していければと思います」

――冬季練習ではどのような成長を期待されていますか。
 「来年度は個人で言えば神戸毅裕(営2=明星)や原田真聡(文2=東農大二)が、ワールドユニバーシティゲームという大会で日の丸を背負うチャンスがあります。明大の陸上競技部として、国内の対抗戦で頑張るだけなく日本代表を輩出したいという思いがあるので、彼らの個人的な成長をしっかりバックアップしたいと思います。それから、明大のスローガンが『個を強くする』のように、一人一人のレベルアップがチーム全体の強さにつながると思います。つらい冬季練習を乗り越えるためにも、チーム力は必要です。そういう意味で非常に短距離ブロックは、いい雰囲気の中でやってくれていると思います」

――競歩ブロックについて、ロードシーズンへ向けての仕上がりはいかがですか。
 「競歩は関東学生対校選手権で近藤岬(理3=十日町)が優勝してくれて、非常にいいスタートが切れました。ですが、その後は全体的にフォームが安定せずに力はあるけれど失格になるというようなレースがいくつもありました。近藤だけではなく全体的に言えることですから、技術力をベースに置くトレーニングにしっかり時間をかけたいです。もちろんロードで活躍はしてもらいたいですが、この冬季トレーニングも含めて将来的には世界で通用する技術を磨いてもらいたいです。(来年度)近藤は最終学年になりますし、競技を続ける意向はないようなので、神戸や原田と同じようにワールドユニバーシティゲームを狙います。日本代表になるためには、来年2月の日本陸上競技選手権・20キロ競歩が非常に大事になりますから、そこでしっかり力を発揮できるような練習を今からやってもらいたいですし、サポートしたいと思います」

――長距離ブロックの新入生にはどのような成長が見られましたか。
 「新入生はよく走ってくれました。箱根駅伝予選会(予選会)でも土田隼司(商1=城西大城西)や成合洸琉(情コミ1=宮崎日大)がしっかり(チーム)10番以内に入ってくれましたし、それから全日本大学駅伝予選会でも成合が出走しました。ただ1年生が頑張ったと言っても、他大と比べればレベルはまだ高くありませんから、ここで満足している場合ではないと思います」

――2年生は中距離選手もそろっていると思いますが、今年度の2年生の走りはいかがでしたか。
 「2年生はエース格の綾一輝(理工2=八千代松陰)と大湊柊翔(情コミ2=学法石川)がシーズンを通してなかなか活躍できなかったことが、長距離ブロックの全体的な成績低下の要因になっていました。そこの部分は本人だけのせいでなく、いつもの状態で実力を出せるマネジメントができなかったことが非常に問題だと思っています。中距離のメンバーも頑張っていましたが、対抗戦で入賞に絡めるレベルには到達していません。自分たちの中では頑張ったつもりでも、やはり客観的に見たらまだまだ満足できるような成績ではないというところです」

――今年度チームをけん引してきた4年生の姿は、どう映っていましたか。
 「今年度の総括の中で学生やスタッフ陣から出てくる声を聞くと、やはり4年生のけん引力がなかったという話が出てきました。ですが根本をたどると、やはり彼らにそのようなモチベーションを持ってもらうチームづくりができなかったわれわれにも責任があると思います。それから4年間故障に苦しんでいた選手が多く、回復する過程で自分を見失う選手が多くいました。どこが悪いのだろうとか、原因はなんだろうとか、そういうところをきちんと体系立ててアプローチをしてこなかったので、本当に彼らには申し訳なかったという気持ちが強いです。選手たちも原因が分からなくて不調だとメンタルもやられてしまって、こちらから見た時にはやる気がないとか、元気がないという風に映ってしまうので、原因を迷宮入りにさせてしまいました。原因をしっかり究明して、対策をきちんとアプローチするシステムができていなかったことは大きな反省点です。だから、4年生の彼らにどうのこうのという気持ちは全くなくて、われわれの方に非常に大きな問題がありました」

――来年度チームを率いていく3年生にはどのような印象を抱いていますか。
 「3年生は力のある選手が多いので、彼らの来年度の頑張りが明大の駅伝の将来を左右するくらい大事になると思っています。主将は室田安寿(情コミ3=宮崎日大)がやってくれるのですが、その主将を選ぶ段階で多くの3年生が主将に立候補してくれました。最終的には話し合いで室田に決まりましたが、みんなが立候補したという話を聞いた時は非常にうれしかったです。彼らもやりたいんだ、チームをまとめようと思っているんだという意気込みを感じて、非常に頼もしく思っています。競技成績だけ見ると、まだまだ彼らの持っているポテンシャルを引き出せていないので、明大の中で見る評価だけではなく、やはり駒大や青学大、中大の選手たちと比べた評価で、彼らの強化を図っていかないといけないと思います。また、彼ら自身もそのような気持ちを持っていると思いますし、もう一度今のステージを見直して強化したいと思います」

――今の短距離部門の強みはどのようにお考えですか。
 「短距離は非常に自主性があります。渡邉高博コーチの後任で早稲田の選手だった田野淳コーチが来てくれました。人間的な部分で成長させることをベースに置きながら、選手自身にしっかり現状を把握して計画と実行をさせ、自分たちで妥協せずにやるという仕組みづくりが、4年生を中心にここ2、3年ででき上がってきました。ただ、そこに大人の目が時々はしっかり入らないともう一段高いレベルにはいけませんから、その部分は田野コーチやわれわれがしっかり見て、より高いレベルでやりたいと思っています」

――競歩部門についてはいかがですか。
 「競歩は三浦康二コーチが日本トップレベルの選手で、毎日の選手へのフィードバックは私もつぶさに見ているのですが、学生は非常に鍛えられていると思います。自分で考えさせて、どうしてそのような結論で、そのような行動になったかをしっかり毎回チェックしてくれています。そして、結果に行動がどのような作用を及ぼしているかを毎日のようにLINEの中でやり取りしています。毎日長い文章でのフィードバックを、ほぼ365日続けているので、非常に成長できる環境にあります。そんな環境の中で本当にのびのびやっているので、理想的な状況だと思います。結果も付いてきているし、非常に頑張ってくれています」

――長距離部門はいかがですか。
 「長距離はポテンシャルが高い選手が今も入ってきてくれています。彼らの元々持っている才能はすごくいいものですから、そこをもっと信じて日々のトレーニングをやってほしいです。大所帯ではありますが、コミュニケーションをしっかり取らないといけない部分をマネジャーがサポートしてくれて、非常にうまく毎日を回してくれています。長距離のメンバーは非常に規律正しく育てられた選手が多いです。高校時代の癖がまだまだ抜けていないところがあってしっかりやるべき部分はやっていますが、短距離のように自分で意欲的に何かを組み立ててやっていく能力は弱いので、そのような力を付けていってもらいたいと思います」

[島田五貴、春田麻衣]

監督インタビューの記事は12月19日発行の明大スポーツ第543号にも掲載します。ご購入フォームはこちらから!