(14)全日本直前インタビュー 三浦佳生

 国内最高峰の大会である全日本選手権(全日本)がいよいよ12月20日に開幕する。多くのスケーターがこの舞台に照準を合わせ、日々練習に励んできた。本インタビューでは、選手それぞれが今シーズンの大一番に懸ける思いをお届けする。

(この取材は12月12日に行われたものです)

第1回は三浦佳生(政経1=目黒日大)のインタビューです。

――GPシリーズNHK杯(NHK杯)から1カ月たちました。現在の心境を教えてください。
 「やはりアメリカ大会(GPシリーズアメリカ大会)、日本大会(NHK杯)ともにケガがある中での出場だったので、なかなか練習から追い込むことができずに、それ(の影響)が出ちゃったかなと。アメリカ大会はその中でも普段ないような回転不足や、ミスが出て、あまり普段は(減点を)取られる方ではないので、それが結構出ちゃったのは仕方ない部分でもあるんですけど、悔いが残るところでもあります。NHK杯で完全に自爆した後からいろいろ考えて、ファイナル(GPファイナル)がなくなった分、逆に調整に充てられました。靴にもちょっと問題があって。靴が軟らかくなっちゃってジャンプがなかなか浮かないという状態だったので、そこも変えるいいきっかけになりました。多分ファイナルに出ていたら全日本までに靴を変えることができなかったですね。どのみち全日本でやらかしていただろうなという感じがしたので、そこは良かったかなと思います」

――NHK杯が終わって、もうすぐに練習という感じですぐに気持ちは切り替えられましたか。
 「気持ちはすぐに切り替えられたので、もうその後すぐ靴を変えて、すぐ滑っていました」

――「スケート靴が軟らかくなっている」というのは具体的にどういう状態なのでしょうか。
 「使って何回も踏んでいくと、やはりどうしてもベロが弱ってきてしまって、そのベロの部分がもう(駄目になってしまいました)。あとサイドの部分の曲がるところに線ができてしまって、靴が折れてしまうんですよね。 その症状が少しずつ出始めてきて、今回はわりともった方なのですが、それでもどうしても駄目になってしまったので、変えるしかなかったです」

――いつもはどのくらい使用するのですか。
 「今回は1年半と少し使いました。今までは1年弱ぐらいで変えていたので、少しもちましたね。だから靴を変えてからジャンプが急に浮き出して、靴のせいもあったんだなと思いました」

――靴は変えてすぐに跳べるものなのですね。新品だと硬さがあったりはしないですか。
 「あるのですが、僕が履いているメーカーがわりと最初からそこまで硬くはない方で、耐久性があるという感じで、靴自体の硬さはなく、長く同じ状態で履き続けられるのが特徴です。その点で結構早い段階からジャンプはやり始められていました」

――今シーズンのイリア・マリニン(アメリカ)選手、鍵山優真(中京大)選手を間近で見て感じることはありますか
  「両選手ともにやっぱり安定感は非常にある選手で、 その中でやっぱりイリアは、やはり昨年のワールドチャンピオンですし、とんでもないですね。練習からとんでもないものをたくさんやっていましたけど、なかなか勝てる気がしないです。それは優真もそうですけど、彼も4回転の質と、その他の質も全てがそろっているので、またイリアとはまた違うスケートタイプで、両選手ともに良さがあります。競技的にもすごく有利な選手だと思うので、勝つためにはもっと努力が必要だなっていうふうには思っています」

――それぞれ異なるスケートタイプと言うことですが、最近の三浦選手は自身をどういったタイプのスケーターだと感じていますか。
 「最近の自分はわりとジャンプとスケーティングが少しずついい感じに合わさってきて、ようやくオールラウンダーに少しずつ近づいていけているんじゃないかなと思っています。やはりジャンプだけでは勝てない競技なので、イリアもその点では自分自身で『PCS(演技構成点)の部分が課題だ』というふうに言っていて、そこをどんどん努力して上げていっていて、本当にそれが滑っていて分かります。自分のスケートタイプをもっとオールランダーにしていきたいんですけど、スピードとそこから跳ぶジャンプ。今はそこが自分の持ち味なのかなっていうふうに思っています」

――今シーズンはSP(ショートプログラム)、FS(フリースケーティング)の点数をそろえるのに苦労していた印象があります。
 「今シーズンは本当におっしゃる通りで、なかなかそろえられていないです。まず例えばNHK杯SPで初めて100点を超えることができてすごく良かったんですけど、あれも結構ギリギリで、ジャンプがたまたま決まっただけでも出来過ぎだった状態ではありました。本当にケガを抱えながら滑るというところが一番の原因で、かつ滑り込みもできない、練習量が抑えられてしまって練習もできないので、まずはここを治していかないと始まらないなと思いました。NHK杯が終わってからは、そちらの方に重点を置いて、今やっと強度の高い練習をできるようになってきたので、そこはすごくいいかなと感じています」

――佐藤駿選手(政経3=埼玉栄)はGPファイナルに出場されていました。
 「昨シーズンもすごく彼は成長したなというふうに思っていたんですけど、今年さらに進化したようなイメージがあります。とにかくプログラム全体を通して滑り込みがかなりできているなという印象があって。彼がもう本当に優真を抜かしてもおかしくはないんじゃないかと思うぐらい、今いい勝負をしていると思うんですね。だから本当にグランプリの活躍は見ていて、単純に友達としても応援はしていました。結構彼は自分のことを下げるタイプなので、 自信をつけるように何回か話したりはしました。モチベーションが保てたらいいなと思って」

――どのように声を掛けたのですか。
 「もうなんか『あかん』みたいなLINEが来るので『いや、気持ちっしょ。なんとかなるって』と。練習見ていても、彼はいつも跳べないこととかも結構あるんですけど、なんだかんだ本番絶対降りてくるんで大丈夫でしょという話をしました」

――GPファイナルの女子シングルは6人中5人が日本人選手で、男子以上に混戦だったと思いますが、女子シングルはどのように見ていましたか。
 「あれはほとんど全日本でしたよね。大変ですよね。やはり連盟(日本スケート連盟)の方もここから3人選ぶので、ファイナルに出ている5人もそうなのですが、それ以外にもりをんちゃん(住吉・商3=駒場学園)なども点数だけだったらファイナル進出者と同じくらい出ていますし。本当に全日本次第という感じですね。だからあまりファイナルがアドバンテージにならない感じですよね。花織ちゃん(坂本花織・シスメックス)、百音ちゃん(千葉百音・木下アカデミー)は一つ飛び出している感じはありますが、他の選手がどうなるかというとところは、自分も全日本に出場する側ですが、楽しみにしています。個人的には『一緒に世界選手権に行こう』と言っているので、やはりりをんちゃんに頑張ってほしいなと思っていますが、シンプルに全日本が楽しみです。男子はもうファイナルは完全にアドバンテージになるので、あと1枠をかけて草太くん(山本草太・中京大)や一希くん(友野一希・第一住建グループ)などといった選手と争う形になるかなと思います」

――GPシリーズなどをはじめ、同年代の活躍が光っています
 「ファイナルも同世代で言えば千葉百音ちゃん、吉田陽菜(木下アカデミー)ちゃんが出ていて、2人とも昨シーズンは一緒に世界選手権に出場したんですけど、本当にこの3人で引っ張っていけたらいいねというふうに、ここまでは言ってないですけど(笑)、引っ張っていきたいなみたいな話をしました。代表に決まった時に話していたので、自分だけ結果を残せていないのがすごく悔しいですけど、 ただ本当に活躍しているのがすごく自分にとっても刺激になります。次が自分の番だというふうに言い聞かせてやっています」

――今年はアイスショーや海外大会も多くありました。最近の海外選手との交流はいかがですか。
 「アイスショーにもたくさん出させていただいて、海外選手との交流もすごく多かったです。イリアやチャ・ジュンファン(韓国)選手など、すごく仲がいいですね」

――オフではいかがですか。
 「やはりどうしても会えるのが競技かショーなので、まずはそこが一番かなと思っているんですけど、日本に来てアイスショーをやっている時は遊びに行ったりしたりもしています」

――今年2月にインタビューに伺った際にも、マリニン選手とはよくお話をされるとおっしゃっていましたね。
 「結構彼も面白い人なので、いろいろな話をしますけど、その中でも彼は真面目でもあるので『スケート界を今後どうやったらもっと人気にしていけるか』という話もこの前しました。でもそこからアニメの話とかいろいろな話をします(笑)。(どんなアニメを見られるのですか。)進撃の巨人とか見るみたいですよ」

――マリニン選手とこれからのスケート界を盛り上げていくためにはということを話されているのは、やはり羽生結弦さんや宇野昌磨さん、ネイサン・チェン(アメリカ)さんなど、スケート界の大きな存在を意識して、お二人で考えている感じですか。
 「2人でではなくてみんなで話していたのですが、やはり現状イリアがチャンピオンなので、彼があの年にしてそれだけの責任を感じているというのは、それだけでもすごいことです。ただ彼だけに背負わせてしまったら彼がすごく大変になってしまうので、僕たちも考えていかないといけないところではあります」

――マリニン選手はGPファイナルで4回転を7本入れられていましたが、どのように思われますか。
 「考えられないです。アクセルを入れないと7本入れられないですから」

――ルールの解禁の話ではバックフリップが解禁になりましたが、どう見ておられますか。
 「僕はフリップはそもそも反対派ですね。競技でやるのは、やはりシンプルに体力がなくなってきたところでやるという危なさもありますし、やっている選手はプログラムの最後とかでやっているので、そういうのは少し危ないかなという感じがします。あとやはり競技はスケートで見せてほしいです。もちろんバックフリップが似合う曲であればまだいいですが、プログラムの雰囲気がある中でいきなりバックフリップとかやっていくと少し『雰囲気が大事なのにな』とも思います。もっと他に見せられることはあるから。やはり競技でやっている以上、見ている方もひやひやするし、僕はあまり賛成派ではないです」

――今年競技を引退された宇野昌磨さんとはお話されますか
 「この前も取材でリンクに来ていたので、その時に話はしましたが、あまり変わっていなかったです。いつも通りの面白い昌磨くんという感じでした」

――今改めて海外の選手も含めて、憧れの演技の選手はいらっしゃいますか。
 「度々見ていて、やはりうまいなと思うのは羽生選手です。やはりうまいです。シンプルだけど一番すごいことをやっています。昔の演技もこの前たまたま見ていて、やはりうまいなと」

――具体的にはどういう部分ですか。
 「スケートも一歩がすごく伸びるし、羽生選手がシニアに上がりたての頃と終盤の頃では、スケートのやり方というのが違ったのですが、シニアに上がり立ての時は、出だしが結構スピードを出して跳んでいましたが、後半はスピードを抑えて、勢いと丁寧さと分けていたので、そこもまた面白いなと思いました。見ていてやはりうまいです。あと演技にオーラがありますね。本人自体もありますが、演技にやはり華があるので、それはスケートが人気になるわなという感じです。スタイルも良いですし、常に背筋がピーンとなっているから、歩いているだけでもすごく姿勢が良くて、特にそう見えるんじゃないですかね」

――SPの振付師さんであるブノワ・リショーさんからは、シーズン中にどのような言葉を掛けられましたか。
 「リショーさんは、アメリカ大会も日本大会にもいらっしゃっていたので、大会ごとにアドバイスを毎回いただいてます。ステップシークエンスの注意点だったり、プログラム途中のつなぎの仕方、めりはりの付け方みたいなことをアドバイスいただいてます」

――NHK杯のエキシビションでは四大陸選手権初優勝を飾った、FS『美女と野獣』を演じました。
 「もともとは全然違うプログラムを進める予定だったんですけど、あまりにも結果が残せなかったのが悔しかったので、もう一回FSを滑りたいなと。(NHK杯と)全く同じFSを全く同じ音源でやったら面白いかなと思ったんですけど、さすがに違う演目を滑らないとダメと言われたので(笑)」

――2年前の衣装を着られましたがサイズ感はいかがでしたか。
 「2枚着ているんですけど、下のシャツみたいな部分は意外とパツパツで、結構動きにくかったですね。 トレーニングも高3から体作りをやり出したので、やはり2年前とは体型が変わっているのもあって、ちょっとパツパツでした(笑)。(動きやすさとかは)そこまでは大丈夫です。結構余裕のある生地なので、そこは大丈夫なんですけど、でも思ったよりパツパツでちょっとびっくりしました」

――マイクパフォーマンスが話題になりました。
 「まさか選ばれると思っていなかったので、午前中にリハーサルをやったとき、ベストパフォーマンス賞を取った人がマイク持って喋りますみたいな話があって。まさか自分になると思っていなかったので、何喋ろうってことを考えていて、昌磨くんのが思い浮かんだんですけど、横にいた優真が『僕はこの日のために頑張ってきましたって言うんだよ』と言ってきて(笑)」

――ファンの方からの期待が大きいからこその受賞だったのではないですか。
 「やはりFSではなかなか力が発揮できなかったので、パフォーマンスというよりは、多分情でみんな入れてくれたと思います(笑)。いやいいのかなという感じでしたけど、ありがたくいただきました」

――NHK杯を終え1カ月です。現在どんな練習をしていますか。
 「そうですね、まずは全日本がもう近いのでとにかく強度を上げて、今はプログラムでジャンプを入れてやっていく練習がメインかな」

――感覚としてはかなり自信がありますか。
 「そうですね。かなり調子が良くて、すごく自分自身に期待をしているので、この調子をキープしながら、あとはこの感情を抑えて、とにかくベストを尽くすというところだけ考えてやってきたら、もしかしたらできるんじゃないかなと思っています」

――ここまで様々な大会で披露してきました今シーズンのプログラムですが、曲の解釈に変化はありますか。
 「ちょっとプログラムが変わったのもあってストーリー編成、演じるものも少し変わってきています。滑り込みは今シーズンを通してすごくできていたので、自分の中でしっくりきているものがあるなというふうに感じています」

――SPはいかがでしょうか。
 「プログラムの解釈もそうですけど、シンプルにこう、自分がやりやすい感じはあります。自分が感情を乗せやすい部分もあって、解釈面でも理解してきましたし、いい感じですね」

――(手を揺らす)この部分も。
 「面白いユニークな振り付けかなと思います」

――足のケガの状態は現在いかがでしょうか。
 「そうですね。わりと気にならないところまで来ているので、練習をしながらというところで完治までは時間が少し掛かってしまうところはあります。ただその中で徐々にいい感じになってきて、練習も取り組めているので、全日本は不安なく臨めるかなと思います」

――最近は明大の選手との交流はいかがですか。
 「りをんちゃんは先生が岡島先生(岡島功治さん)というのもあって結構交流があるので、時々リンクで会ったりします。その時に『一緒に世界選手権に行こう』という話は僕から一回しました。りをんちゃんも自分も、今は結構ギリギリのところにいるので、頑張っていこうという話をしました」

――大島光翔主将(政経4=立教新座)とはお話されましたか。
 「ブロックから会っていないんですけど、 ブロックの時は結構一緒にご飯食べたりしました」

――趣味の野球も観戦されていましたね。中田璃士選手(TOKIOインカラミ)のインスタグラムのプロフィールには『目標三冠王』と書いてありました。
 「彼は調子に乗っていますね(笑)。璃士もホークス(福岡ソフトバンクホークス)が好きなので、一緒に野球を誘って、一回謎メンツでも行きました(笑)。なんか璃士の先生の中庭先生(中庭健介さん)もホークスファンで、中庭先生と僕と璃士と、あと岩本英嗣先生の4人で行きました」

――ポケポケ(ポケモントレーディングカードゲームポケット)などゲームは気分転換にされるそうですね。
 「駿とはポケポケの話をしたんですけど、ポケポケは一応図鑑が埋まっいて、クラウンレアだけまだ取れていないので、そこだけ欲しいなという感じです。(対戦とかはどうですか。)普通にやっていますね。今のイベントは5連勝しないといけないので、そこは苦戦しています」

――いよいよ全日本が目前に迫ってきましたね。
 「もちろん全日本なので緊張もしますし、代表も懸かってくるので、まずはいい演技というのを目指してやっていきたいです。やるからには優勝を目指したいですし、優真や駿がいたり、難しい壁ではあって、日本はやはり上手な選手が多いです。今の自分は過去最高に仕上がってきている自信があるので、あとは本番でできるかどうか。ぶつけるだけかなと思っています」

――具体的な目標を教えてください。
 「今はもう優勝を目指してやっています。優勝すれば世界選手権一発で内定ですし、今季の成績からしても周りからいろいろ言われることはありますけど、僕はできないことはないと思っています」

――SPの予定構成はどのような予定でしょうか。
 「SPはもう同じ構成でいきます」

――シーズンを通してここまでの演技を振り返っていかがですか。
 「結構勢いのあるプログラムなので、4回転は勢いでもっていけるんですけど、アクセルが不安要素です。一番の不安要素ですけど、そこだけしっかりマークして、きっちり抑えれば跳べるはずのジャンプです。なるべくミスのないようにクリーンプログラムをSPは心懸けていきたいかなと思っています」

――点数に関してはやはり100点が一つ基準になってくるでしょうか。
 「100点いきたいですね。取れればアドバンテージにはなるかなと思っていて。そこは一つ目標にしていて、仮に取れなくてももうやるだけです。後半の4回転トーループが少しリスキーになってくるので、まずは4回転サルコーにしっかりコンビネーションを付ける。アクセルと、本当全ジャンプですね。全部、とにかくクリーンプログラムを心掛けていければいいかなと思います」

――今シーズン初戦のプリンスアイスカップは会心の演技を見せました。FSの理想構成はこのようになりますか。(4回転3種類を4本の構成)
 「そうですね。少し曲の変更もあって、順番も変わってくるんですけど、要素で言えば大体一緒ですかね。ループにサルコーにトー(ループ)2回。アクセルにオイラー、フリップをつけて、ラストジャンプは今ルッツでやっていますけど、なるべく少しでも高い点取るためにはルッツかなと思います」

――NHK杯は構成が他大会とやや異なりましたが、当時の意図を教えてください。
 「ループを抜いて、アクセルをしっかり1本目に決めて昨シーズンでやっていたような構成でいこうかなと思っていました。 やはりファイナルにいくためには安全策でという判断だったので、前の選手とかの演技で決めました。(直前に変える感じなのですね。)毎回わりとそうですね。ただ一応両方の練習はしているので、急に変えても大丈夫という形ではあるんですけど、シンプルにこの時は崩れました」

――4回転ループはまだ少し安定感は足りないでしょうか。
 「やはりサルコーに比べればそうですね。ですけど、ここ最近の練習はループも良くなって、そこが自信になっている一番の要因でもあります。ループが入ってくると4回転が4回跳べるので、それが全部決まってくると200点の大台が出てくるはずですし、全日本は出るはずと思います。あとは仮に失敗があっても動揺しないことですね」

――PCSの点数の付き方はどう捉えていますか。
 「NHK杯はさすがにひどすぎたので置いておいて、他の大会はPCSの面でもかなりいい評価をもらっていて、ここは結構うれしいところではあります」

――FSに関してはブラッシュアップなどいかがでしょうか。
 「やはりシェイリーンさん(シェイリーン・ボーンさん)には、ショーの期間中もやってもらったり、あとはリモートで少し見てもらいましたし、ところどころ構成の順番が今回から変わるので、ループの後の2本目がトー(ループ)になって。昨年までやっていた形ですね」

――衣装の変化もありました。
 「本チャンの衣装がなかなか固まらなくて、カナダで送り返したり着てみて駄目というのを繰り返していて、今回伊藤(聡美)さんにまたお願いして、羽生さんとかいろいろな人の衣装作っておられるだけあって素晴らしい衣装が届いたので、これでノーミスしたらいいなという感じですね。最初は青のジャケットを着ていたんですけど、あれはちょっと厚くて。次はシャツ風味にしたんですけど、なんかちょっと形が気に入らなくて。手を上げた時に脇の部分が結構広がって出てきちゃうのがきれいに見えなくて、そこがすっきりしていた方がきれいに見えるというところで変えました」

――シーズン開始前はアイスショーにも結構出られていて、セルフコレオなどもやってらっしゃったと思うのですが、その時期を振り返ってみていかがですか。
 「面白かったですし、(シーズン前の)ちょうどいい息抜きにもなりました。そこまでシーズンをずっと駆け抜けていっていたので、ようやく息抜きができて、ショーの時期は面白かったですね。プリンスアイスワールドとかは多分初めて優真と駿と3人揃って出られたので、それもまた面白かったです。来年は五輪シーズンなので、今年ほど息抜きできない気がします。早いですね。この前五輪選考会やっていたばかり。本当にやばいです」

――五輪の話題が出ました。来年の全日本がここ数年で一番のビッグイベントになると思いますが、そこまでの過程をどのように見据えていますか。
 「もう僕は考えないようにしています。なるようになるという感じで。もう去年の全日本が終わった時に1年あるわと思っていたのですが、本当に1年が早くて、一瞬でした。周期がすぐに来ました。だから来年もどうせすぐに来ますよ。こんなに早いものかと思って僕はびっくりしました。特にシーズン入ってくると7月あたりから時間が過ぎるのが余計に早くて、ここ最近は本当に早かったです。NHK杯は終わってから秒でしたし。だからもう考えない方がいいかなと思います。まずは今年ですね。今年の全日本でもいいアピールをしていきたいと思います」

――改めて、全日本の意気込みとファンの方に向けて一言お願いします。
 「もう全日本は優勝する気でいます。優勝する気でいたら駄目ですね。優勝しますと言っておかないと駄目ですね。それくらいの気持ちで僕は臨んでいきたいと思っています。ただ、自分はこれを前面に出しちゃうとよくないところが結構あるので、まずは冷静になって、あまり欲を出しすぎず、自分のできることだけにフォーカスして頑張っていきたいと思います。全日本はたくさんの応援をよろしくお願いします」

――ありがとうございました。

[橋本太陽、大島菜央]